表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

最後の旅(3)

 一方、(りょう)鷲山(じゅせん)ではヴァッサカーラ・バラモンが去った後、世尊はアーナンダに云ってラージャグリハ近辺で修行している弟子たちを講堂に集めさせた。

 彼らの師は前に坐って云った。

弟子(おしえご)等よ、私はいま(おんみ)等のために、七つの(みち)を説くであろう。(おんみ)等、あきらかに聴いて善くこれを心にかけるがよい。

 弟子(おしえご)等よ、しばしば相集まって(のり)を語らえ、されば道は久しく(とど)まるであろう。上下相和(やわ)らぎ互いに敬い合うて(たが)うことなく、法を(あが)(いましめ)(かしこみ)れ、みだりにこれを()えてはならぬ。(たけ)たると幼きと、また先なると後なると、相交わるには礼をもってし、心を護って(なお)きと(うやまい)とを(むね)とし、(しずか)(ところ)にあって行いを清め、人を先にし、(おのれ)(のち)にして道に従い、人々を(いつく)しんで(きた)るものには厚く施し、病めるものには(ねんご)ろに看護(みとり)するならば、道は久しく(とど)まるであろう。

 弟子(おしえご)等よ、また七つの法があって道を栄えしめる。すなわち清浄を守って事の多きを(ねが)わず、欲無きを守って(むさぼ)らず、忍辱(しのび)を守って争わず、静黙を守って戯れず、法を守って(おご)ることなく、一心を守って(ほか)(つとめ)に従わず、倹素(つましさ)を守って衣食に(つづまや)かであるならば、道は末長く(とど)まることであろう。

 弟子(おしえご)等よ、一切(すべて)のいきものに(いつくしみ)を加えよ。人の死んだときにはこれを哀れめ、死にゆく人は(みち)を知らず、嘆き悲しむ人々もまた、その()く所を知らない。道を得たものだけが、知るのみである。仏はこのために教えを()べる。教えは学び、道は行わねばならぬ。天下(あまがした)には道は多い、その中においても、王法は大きなものである。しかし仏道はさらに高いものである。

 弟子(おしえご)等よ、仏の教法を修めるものは、(ひと)が道を得たのを見ても、(おのれ)のいまだ得ていない事を悲しんではならぬ。たとえば、数多の人々が共に弓を習うのに、(さき)(あた)るものもあり、(のち)(あた)るものもあって、そのときは同じではないけれど、射てやまないならば、いつかはしまいに(あた)るようなものであり、また小さな谷を流れる水も、やがては流れ流れて大きな谷に()り、またも流れて大きな河に入り、はては終いにみな海に入るように、修めて()むことがなければ、(のち)には必ず(さとり)()るようになるものである」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ