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清修と夏海


 その頃。渚の世話は完全に柚季に任せて、清修は渚の妹である夏海と共に2階にある彼女の部屋にあがりこんでいたのだった。


「ねえ、清修くんはゲーム、なにをしたいー?」


「この前のレースゲームの続きしようぜ」


「うん。わかった~」


 そう言いながら、夏海は据え置き型のハードをテレビに繋ぐのであった。


「今回は絶対に夏海をひれ伏せさてやる」


「へへ~。残念だけど、清修くんの実力じゃ、それはまだまだ遠いかな~」


 ませた表情で清修をからかい、夏海はご機嫌に笑う。そして、ふたりはコントローラーを握り、ゲームをプレイする。


 そして、意気込む清修だったが、やはり持ち主である夏海にはかなわないのか、大差をつけられてしまう。


「へへ~。わたしの勝ち~。まずは1勝目っと」


「ちくしょう! もう1回。もう1回。同じコースで勝負だ」


 そして、ふたりの対戦は2回戦に突入する。


「んっ?」


 しかし、清修が異変に気づく。


「夏海、今コースをショートカットしてなかったか?」


「そうだよ。このコースはね、あるアイテムを使うとショートカットができるんだよ」


「もしかして、さっきのレースもそのショートカット使ってた?」


「うん❤」


 笑顔で答える夏海。


「ずりー。ずりー。夏海だけ、そんな裏技を使うなんて、ずりーよ」


 すると、清修は小学生相手に本気の不平不満を述べるのだった。


「何もズルくないよーだ。わたしが自分でやりかたをみつけたんだもん」


「自分でみつけたなんて言ってるけど、どうせネットを見ただけなんだろ? だったら、俺にも教えてくれよ」


「もう清修くんはわがままなんだから~。しょうがないな~。あのね、この羽のアイテムを取ったあとに、ここのところで……」


 そして、なんだかんだも、清修は夏海と楽しくゲームで遊ぶのだった。


 だが、30分ほど経った頃だろうか。


「ねー、お姉ちゃんに料理を教えてくれてる柚季ちゃんってお姉さん、清修くんの彼女なんだよねー?」


 今までゲームの話しかしていなかった夏海が、とつぜん柚季の話題をふるのであった。


「ああ、そうだよ」


「あんな綺麗な人を彼女にしたなんて、いったいどんな弱みを握って脅迫したのー?」


「なんか、夏海、だんだん口の悪さがねーちゃんに似てきてないか?」


「あははは。冗談だよ。冗談。でも、お姉ちゃんから聞いたんだけど、ものすごく料理が上手なんでしょ?」


「ああ。柚季はイタリアンの料理人である父親に子供の頃から教わっていたから、料理がものすごくうまいんだ。だから、その柚季に教わったら、いくら不器用な武藤でも何とか形になるだろ。夏海は何も心配しなくていいぞ」


 ちなみに渚の不器用さは折り紙付きで、家庭科で裁縫をやれば自分の指をぶっ刺すし、トランプをきらせると、カードがあさっての方向に飛んで行ってしまうという具合だ。


「うん。たしかにお姉ちゃんは不器用だけど、わたしが心配しているのはそんな事じゃないんだ」


 今までゲームをやりながら清修と楽しくおしゃべりしていた夏海の声と表情が曇りだす。


「お姉ちゃんだってバイトや勉強しなきゃいけないのに、お父さんとお母さんが仕事で忙しいからって、お姉ちゃんは洗濯やお掃除もしてるの。、それなのに、今度はわたしのために苦手な料理もするなんて、このままじゃお姉ちゃんのほうが頑張りすぎて倒れちゃうよ……」


 視線はテレビの画面を向いたまま、しかし、沈鬱にそう呟く夏海の瞳は確実に憂いを帯びていたのであった。


 そのときだ。

()ったー!」


 階下の台所から渚の叫び声が聞こえてきて、夏海と清修は大慌てで部屋を出る。


 ふたりが台所に駆けつけると、そこには渚が指を押さえているのだった。どうやら、夏海と心配していた事が現実になってしまったようだ。


「おいおい。武藤、大丈夫かよ」


 清修は渚に声をかけ、夏海に指示をくだす。


「悪い、夏海。絆創膏と消毒液を貸してくれ」


「うん。えーと、絆創膏と消毒液はたしか戸棚の中にしまっておいたはず……」


 夏海から消毒液と絆創膏を受け取った清修は、渚に手当を施す。


「ううぅ。すまねえ清修」


 すっかり意気消沈してしまっている渚。しかし、それは怪我による肉体的な痛みだけではない事が明白だった。


 そして、そんな渚の様子をせつなげな瞳でみつめ、立ち尽くす夏海。


 やがて、唇を噛みしめ、意を決したように柚季のもとに駆け寄るのであった。


「あのね、柚季ちゃん……」


 そして、柚季に耳打ちをするのであった。


「ごめん。清修」


 すると、柚季が清修に声をかける。


「じつは、ちょっと食材が足らなくなったから買ってきてほしいの」


「ああ、いいぞ」


「でも、清修はこの辺のスーパーのことはよく分かってないでしょ。だから、武藤さんと一緒に行って来てほしいの」


 数秒の()


「わかった」


 承諾する清修。


「武藤、それじゃあ俺と一緒に買い物に付き合ってくれないか」


 そして、清修と渚はふたりで買い物に出かけるのであった



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