武藤姉妹
そして、土曜日。
清修と柚季は、渚の家へと向かうことにしたのだった。
渚の自宅は最寄り駅から徒歩15分くらいの住宅地に存在している。この辺りは、市内でも比較的新しく建てられた住宅が多く、良く言えば小綺麗な、悪く言えば無個性な家屋が並んでいる。そして、その中の2階建ての建物のひとつが渚の自宅だった。
「清修は、武藤さんの家に行った事があるの?」
「ああ、平日の放課後に2回ほど来たことがある」
「そうなんだ」
「武藤さんって、妹さんがいたんだね」
「ああ、あいつ、見た目はヤンキーで柄は悪いけど、すっげー妹想いで面倒見がいいからなぁ。以前に学校で夏海が怪我したって連絡を受けた時なんて、顔面蒼白で慌てて早退していたからな」
そして、清修がチャイムを鳴らすと、中から渚が現れる。
「おう。水原に清修、今日はすまないな。今日はうちの親はふたりともいないから、まあ、遠慮せずにあがってくれよ」
休日ということもあり、渚はホットパンツ、それにタンクトップの上からロゴ入りのトレーナーを重ねて着ているというラフな服装だった。
「あれ? 武藤の事だから、てっきり休日は上下ともスウェットかと思ったけど、そうじゃないんだな」
「テメェ、あたしはヤンキーじゃねえって言ってんだろうがッ!」
そして、清修はいつもの憎まれ口を叩くのであった。
柚季と共に家の中に入る清修。
「あー清修くん。いらっしゃーい」
すると、扉の影からひとりの小さな女の子が出迎えてくれる。
渚の妹である夏海である。
「おう、夏海、ひさしぶりだな」
「今日は何しに来たの~?」
そして、夏海は人なつっこい笑顔を振りまきながら、清修のみぞおち辺りに顔を埋めて抱きついてくるのであった。
ちなみに、姉の渚はガリガリのつり目の三白眼。妹の夏海は仔犬のような大きな垂れ目で、ハッキリ言って似ていない。
「ねー、清修くん。隣の女の人は誰?」
「ああ、俺の彼女で柚季っていうんだ」
「えー。清修くん、彼女ができたんだ。しかも、こんな綺麗な人。すごーい」
口に手を当てて、大袈裟に驚く夏海。そして、柚季のほうを向き、軽く頭を下げるのであった。
「はじめまして、わたし、武藤夏海っていいます」
「ええ。よろしくね。夏海ちゃん」
穏やかな笑みを浮かべる柚季。
「ねえねえ、なんで柚季ちゃんは清修くんと付き合おうと思ったのー?」
人懐っこい夏海は、さっそく柚季に質問するのであった。
すると、渚がそんな2人のあいだに割って入る。
「夏海。今日はな、この水原に料理を教えてもらうために来てもらったんだ」
「えー、そうなの?」
「ああ、水原はとっても料理がうまいからな」
夏海にそう説明すると、渚は清修を呼び寄せる。
「それじゃあ、あたしは水原に料理を教えてもらうから、清修は夏海と遊んでてくれないか」
「わかった」
「すまねえな」
渚は柚季と共にキッチンへ向かう。
「ねえねえ、清修くん、ゲームしようよ。ゲーム!」
「おっ、いいな」
「それじゃあ、わたしの部屋に行こう」
そして、清修は夏海と共にゲームの置いてある彼女の自室に向かうのであった。




