俺は、目覚めたら、大豪邸の寝室で眠っていた。自分が誰かわからない。ただ、他に誰もいないデカイ屋敷の中で寝ており、スマートフォンの着信音が鳴ったので、返答したところ、「君は記憶喪失だ。一日の記憶しか保つことができない。そんな君がしているのは、我々CIAが秘密裏にしている特殊要人警護だ。FAXを送るから、言うとおりにしたまえ。」と電子音声がそう教えた。
「本日9:00に、ポールアベニュー3丁目306のカフェ『アランドロン』に入り、中にいる20代の女性に声をかけて連れ出せ。5分以内に連れ出さないと女は死ぬ。女の素性は君には関係ないが、いずれわかる。」とFAXには書いてあった。それを見ると、もう時間は9時の30分前になっていた。今から通常速度で現場入りすると、30分はかかる。俺は大急ぎで用意した。
指定の店についたのは、9:00ちょうどだった。危なかった。店の奥には、若い女が一人いる。眼鏡をかけて、陰鬱そうな表情をしているが、俺は声をかけた。「FBIだ、君は世界中から指名手配されている。ちょっと来てもらおうか。」俺は口から出まかせを言って、女の脇の下に手を入れて連行しようとしたが、「やめてよ。私、ゆっくりしてたいの!」と言って俺の頬を叩くではないか。
おまけに、となりの男が「君はそう言って彼女のことをこっそりストーキングしているんだろう。」なんてイチャモンを付けて俺の肩を小突いてくる。俺は彼に肩を押され続け、「外に出ろ!迷惑だ!」としまいに見せに追い出された。未練がましく僕が店に入ろうとしたら腕を振りかぶり、彼は牽制する。そして、僕を蹴飛ばしたので、僕は逃げるように彼から距離を置いた。すると、彼は僕を追ってきた。
「やめろ!悪かったから!」と俺が言って、背を向けて走り去ると、「もう来るな!」と言って追いかけてきて、背を不意に押されたので俺が倒れた。そして、男は馬乗りになり、俺を殴打しようとした。すると。
「ドカーン!」と音がして、先ほど入った喫茶店が爆発した。音に気を取られて振り向いて呆気に取られている彼の下から身体を抜いて見に行くと、土煙を上げて、白煙まみれになった店内は、炎をめらめらと上げ、中の人間は全員が死んでいた。
そこでスマートフォンが震えた。画面を見ると、時間は9:05分となっており、「君の事だから、女を連れてこれないと思っていた。用のあるのはその男だ。そいつを連れてこい。お前は、そんなヤワなじゃない。訓練を忘れたか?」とメールが入っていた。
「おいこれ…。どうなっているんだよ!お前がやったのか!」男は叫び、俺に殴りつけてかかってきた。すると、男の動きが停まって見えたので、俺は横をスローモーションのように通り過ぎた拳を好き勝手に関節を捩じり、男の体制を崩させると、気付けば組み伏せていた。
と、そこにBMWの黒塗りの車がやってきた。運転手が「乗れ」と言うので、よく見ると気を失っている男を二人で抱えて乗せた。車が走り出したころには、警察のサイレンが鳴っていた。
俺が着いたのは、港湾にある廃工場だった。男は、椅子にしばりつけられ、尋問を受けていた。「なぜおまえがあそこにいた?」そう質問する顎鬚を蓄えた老人の顔には大きな切り傷の古傷と、顔の高さに持ったナイフがあった。俺は、やばいところに来たと思った。
固唾を呑んだと同時に、俺は気を失った。
っと。こんな感じか。おいおい、元気か?
男は、救護室で目覚めると、「俺は誰だ!ここはどこだ!」とつぶやいた。「昨日まで、大学に通っていたんだ!」と言う彼の年頃は30代中ごろだ。おそらく彼は大学時代に事故に遭って記憶喪失になったのだろう。気の毒なことだ。説明してやろう。「俺は、『エドモンド』だ。昨日も言ったはずだぞ。それに、お前は立派なオッサンだ。大学生のわけがない。昨日は、デートだったと言ってたじゃないか。」




