シキ サイ(初稿)
初投稿です。
お手柔らかにお願いします。
序
ぼくのなまえのゆらいは、むげんのかのうせい。いろどりゆたかなみらいをむかえられますように。だって。
「……ふふ、懐かしい。パパ、すごくカッコつけてたよね?」
「そりゃ、親にとっての大事な見せ場だもの。ママはあの時もそうやって、生暖かく見守ってくれてたよね……」
「えー、見とれてただけよー。彩、くすぐったそうに、嬉しそうにしてたよね」
「そうだねぇ、昨日のことみたいによく覚えてる」
「まま、ぱぱ、なにみてうの?」
「うふふ、ないしょー」
「ずうい!あたしも、あたしもみうー!」
うん、覚えてる。
あの時はよく分からなかったけど、なんか照れくさくて、でも、すっごく嬉しかった。
だって、パパもママもとびきり嬉しそうだったから。
2人の子供でよかったって、今でもそう思ってるよ。
ありがとう。
ちいのにっきちょう 6ちい
11がつ20ひ
きょう、ピーちゃんをみおくった
かなしいけどちゃんとちよならした
えらいねってほめてくれた
ママもかなしそうだった
彩の日記ちょう 10歳
4/18
噂のナナイロストーン
青!!!
パパ、珍しく早めの帰宅。
「彩、アレ見つけたぞ。ほら」
「パパ、マジ?やった!……またニセモノとか言わないよね?」
「パパ信じろよー……今度は大丈夫、ちゃんと試したから!」
「うっそ、ズルしやがった!信じらんねー。何色?」
「何色だと思う?」
「うざっ。パパなんてどーせネズミ色だろ」
「惜しい、しーろーいーろー」
「聞いてないし。お、青!ママ、早く早く!」
「えー、ちょっと待ってよ彩〜」
「いや聞いたやん。聞けよ〜、聞いてよ彩〜」
ちなみにママ、赤。
ばぁば、水色。
じぃじ、青。お揃いだって大喜び。
『今日の街角インタビュー!
あなたは何色?聞いてみました』
『あ〜、あれね。やったやった。オレンジ色だったよ』
『私は黄色だったわ、旦那は白。色気ないわよね!』
『聞いて聞いて、あたしアツシくんとオソロの青!運命感じちゃうっしょコレ』
『もーこの子アツシの動画観てからずっとこの自慢ばっか。え、あーし?赤』
『知ってるけどやったことない』
『あ、じゃあ!今番組で特別に用意したナナイロストーンがありますので、是非チャレンジしませんか?』
『へー、それなら……ってうわデッカ!?触ればいいの?うっすら青』
10/5
僕の寿命、あと10年?
夕飯後、VRでいつものルームへ。
「サイ、知ってるか!?」
「知らんし。うっさいラグピー。何?」
いつも通りアバターなのに暑苦しい。近い近い。ゼロ距離やめれ。
「ラグピー言うな。あの石のウワサ。まだ知らん?」
「寿命が分かるんだと。あれで」
「うわ言いやがった!リーひでぇ。言うなって」
「うっさいラグピー。何度も聞かされてたまるか」
「あー、リーは犠牲になったのか」
「××すな××すな。でもウザかったのは認める。それよりサイ」
「ん?」
「お前、青って言ってたよな」
無表情のリーに見つめられると、なんでか悪いことしたみたいな気になる。してないけど。うん、してないはず。
「あー、七彩石?うん、確か青。なんで今頃?」
「青は10年以内。色が濃いほど短い。だって」
「ラグピー黙れ。サイ、気にすんな」
「10年?寿命?…………ふーん」
「ふーん……ってお前」
「リアクションうっす!」
「ラグピー、黙らないと通報」
「ちょ、リー、通報ナシ。黙る黙る。ロイ、いい子。OK?」
ラグピーもといロイのアバターが見る見る小さくなってく。余裕あるなコイツ。
「サイ、ホント大丈夫か?」
「大丈夫かって言われても、別になんもなんだけど」
「だってお前、えー、マジかー。××ホント訳分からん」
日本人訳分からん言われたー。リーがマジトーンでフィルター引っかかるの珍しい。
まぁ確かに言われてみれば、もうちょっとショック受けそうな気もする、フツー。
「だってあと10年って言われましても。俺10歳だし?」
「いやまぁそうだけどさぁ。あー、凹まれても困るからいいや、もう」
「あ、投げた」
あとはいつものだらだらダベりタイム。
「落ちるー」
「ラグピーおねむ」
「おねむちゃうわー、違わんけど。時差時差」
「はいはい。じゃまたー」
「じゃーなー」
「また」
ログアウト後、ママにウワサの話。
「バカなこと言ってないで早く寝なさい」
そんな冷たくあしらわなくてもー。
『続いてのニュースです。
海外の複数の研究チームが合同声明を発表。七彩石と寿命の関連性について、直ちに否定することは出来ない。検証を継続する必要を認める、とのことです。
さて、コマーシャルの後はお待ちかね――』
12/1
ママ、バグる
「俺、あと78年!」
ロイのアバター、ダブルピース。うざい、暑苦しい。
「やっとアプリ使わせてもらえたんだぜ、いいだろー」
「ラグピー、お前いい加減……」
「いいってリー、ラグピーのデリカシーはもうゼロだから」
「サイはもう少し気にしてくれよ……」
ウワサの元になったアプリ、シキ◇サイはテイキョウモト不明?なせいでオトナじゃないと落とせない。使いたければオトナに頼むしかない訳なんだけど。
じぃじ▶なんだそれ訳分からん。知らん。
ばぁば▶にっこり拒否。危険。退散。
パパ▶怒られた。なんで。ソースよこせや。
ママ▶聞こえないフリ。ひど。
「や、サイ……お前は聞いちゃダメだろ」
『え、なんで?』
「ハモるなウザい。せめてサイは分かれよ」
「え、だって知りたいじゃん」
「短いって分かってる子供の寿命なんて、知りたい親がいるかよ」
「あ、そっか」
「気付けよそこは……」
「うちは喜んでたけど」
「80年もありゃあな」
「いや78年」
「うっさい黙れ××」
「××って言うやつが××」
「ラグピー?」
「マナーモードはじめました」
ロイが黙ると静かに…………ならん。なんで?
「サイ、なんかそっちうるさくね?」
「えうわちょ?――――ブツッ!
「彩、ごめんね!?」
「痛苦しママちょ待酒臭ママ痛い苦しい!?」
「ええいみっともない!離れんかバカ娘!」
解放。呼吸大事、空気美味しい。
えっと、じぃじ、なんでママ取り押さえてるん?
「彩、大丈夫かい?怪我してない?」
ばぁば、ほっぺなでなで。手ぇひんやり気持ちいい。てかいつの間に横に?
「彩ごめんね?ごめんね、ごめん、ごめんなさい、ごめん……」
じぃじに組み敷かれたまんま、ごめんね連呼マシーンなママ。バグった?
「びっくりしたよねぇ、彩。酔っ払いはこれだから」
「な、ばあさん、なんでワシを見る!?ワシ素面じゃぞ?」
「さ、今日は久しぶりにばぁばと寝ましょうかね」
「ばあさん、ズルいぞ!?」
「じいさん、後よろしくね」
「承った!」
ばぁば強。
12/2
ごめんね 15回
「つっても、15回はないわー」
「いやそりゃお前」
「すげぇなサイのママ」
「ラグピー?」
「スリープモードON」
「寝るなや」
「気に病んで当然だろ、そりゃ。優しくしてやれよ」
「俺だってそう思うけどさー」
「何言っても聞かない?」
「そうそう、それ。リー見てたん?」
「んな訳ないわ。分かるわ」
「すげぇなリー」
「すごくねぇよ。むしろお前が怖いわ、サイ」
「俺?」
「なんでそんなあっけらかんとしてんだよ。俺が親でもめっちゃ怖いわ」
「そー言われましてもー」
「××んだよ、もうすぐ。普通オロオロするんだよ。泣けよ。怖がれよ」
「やだ。意味わからん」
「お前が意味不明だわ」
「まぁまぁ二人とも」
「ラグピー」
「すん」
「漫画読みすぎ。それは口には出さんのじゃよ」
「話逸らすな」
「リーが怖い」
「あぁもう。落ちる」
「じゃあ俺もー」
「お、おう。んじゃ」
12/3
ごめんね たくさん
12/4
ごめんね たくさん
12/5
ごめんねがこちらをみている
12/6
ごめんね たくさん。つら。
12/7
ごめんね 強制終了
「ただいまー」
「あ、彩。……ごめんなさい……」
「……ママ」
「……っ!ごめんなさいっ!」
「ママ待って、逃げないで」
「……彩?」
「ねぇ、あのさママ、ピーちゃんのこと覚えてる?」
「…………うん、もちろん」
「ピーちゃん見送った時、とっても悲しかった。でも、ピーちゃんに出会えて良かったって思ってる。ママは?」
「……ママも、ピーちゃんうちに来てくれてありがとう、って、…………思、う」
「僕の時もそう思ってくれる?」
「っ……彩」
「ママの思い出がごめんねばっかりじゃヤだよ」
「ごめ――」
「ごめんね禁止」
「あ、う」
「禁止。分かった?」
「………………、分かっ、た」
「うん。ママ、玄関寒いから中入ろー」
「あ、ごめ――あ、違、えう……」
「……彩、ママ泣かしたん?」
「じぃじ、いつから!?」
「今。彩、女の子泣かしちゃいかん。悪い孫は鉄拳制さ――」
ガチャ
「あ、ばぁば」
「じいさん、正座」
「ばあさん、これは違」
「正座」
「承知!」
晩ご飯の後、シキ◇サイを使わせてもらった。ぶっちゃけ、ママの負い目に付け込んだけど、ちゃんと皆の同意の上。
彩が知りたいと思うならいいよ、って。
7年。
うん、成人は出来ないっぽい。
ちなみに
ママ▶53年
パパ▶28年
ばぁば▶19年
じぃじ▶6年
「どうじゃ彩、わしの方が早いぞ、すごいじゃろ」
「いやじぃじ、意味分かってる?」
12/8
28年?
「てな訳で、すっきりしました」
「お前××か。××か。鬼か。……あ、セーフワード見っけ」
「リー、俺何言われたん?」
「あ」
「く」
「ま。なるほど待ってヒドい」
「ヒドくない。ヒドいのはサイ」
「知りたいのは分かるけどさー。ママいじめんなよー」
「ロイ、何まともなこと言ってんの?普通の人みたい」
「俺普通のいい子だよ?なんで?なんで?」
「ロイ」
「いい子黙る。知ってる」
「んで、7年かぁ」
「またママ泣いちゃってごめんって。ちゃんと目ぇ瞑ったよ?慰めたし」
「気にしないでって?そんなん出来るか××」
「息子に動揺見せたくなくて感情抑え込んで、抑えきれなくなって弾けちゃったんだねぇ。まぁ仕方ないかー」
「だ・か・ら。それをお前が言うなって。絶対こんな息子やだよ俺」
「ひどいやパパ、そんなこと言わないでー」
「やめれ。そりゃごめんね地獄もキツかっただろうけどさ」
「それなー。無事解決して一安心、これで元通り……とはいかないかなぁ、やっぱり」
「いく訳ないだろ。これからどうするつもりなんだお前?」
「普通に大人になって、普通にパパみたいに働いてくんだろなぁ、ってなんとなく思ってたけど」
「大人になれないんだもんなー」
「ロイ、デリカシー……って、本人が一番気にしてないしもーいーかめんどくさい。サイ、将来の夢とかやりたいこととかないのか?××は兵役もないんだろ?」
「兵役?なにそれ」
「や、知らんならそれはいいや」
「将来の夢……ないなぁ。偉くなったり有名になったりしてもめんどそうだし」
「えー、宇宙飛行士とかNBAの選手とか、いくらでもあるじゃん」
「ロイ、ブレないなぁ。リーは?」
「え」
「何、言えない仕事?」
「んな訳。……医者」
「え、マジ?」
「ロイ、何か言いたいことでも?」
「いや、患者さんかわいそう……」
「仕事の時くらいちゃんとやるし」
「大丈夫かなぁ……?」
「や、サイまで乗っかるなよ」
「だって、リーって自分の印象自覚してなさそうだし」
「や、俺の話はいいから。サイの話だろ」
「だってなんも浮かばないしー。んー…………あ、ママが悲しいばっかりにならないように楽しい思い出残したいかな」
「それいいじゃん、採用!」
「勝手に採用すんな。でもまぁ、いいんじゃん?」
「パパも忘れてやるなよー?」
「あー、うーん、まーしゃーない、パパにもちょっとは思い出作ってあげるかー」
「パパ泣くぞ、サイ」
「だってさー。ナナイロ買ってきた時も勝手に自分だけ先に試してたしさー」
「しーろーいーろー、だっけ」
「そうそう。あんにゃろ」
「白?…………え、何年?」
「28年」
「パパだけ?」
「パパだけ。どしたん?」
「いや、俺の周り、28年のやつ多いんだよ。ていうかその年ばっか」
「へー、なんか面白。リーは?」
「面白いもんかよ……28年、俺も」
「なんかあんのかな、28年後?」
「考えたくないけど、そうもいかないかも」
「リーがマジだ」
「そりゃあ、え?………………あ、ごめん落ちる」
「リー?あ、うん。じゃあまた」
「またなー」
「さよなら」
『海外のニュースです。
華国で余命情報秘匿法案が即日承認されました。これにより、寿命の情報は日本で言うところの重要な個人情報として扱われ、不正な取り扱いには罰則が課される見通しです。
日本ではまだ寿命の情報への取り扱い方針が定められていませんが、解説の田中さん――』
彩の日記帳 11歳
1/1
リー、やっぱ来ない。
「はっぴにゅーいやー」
「あけおめー」
「リー来てないかー」
「まぁ、冬休みだからカリキュラム的には来なくていいんだけどな。俺もロイも」
「そーなんだけどー。このルーム好きだからいーじゃん」
「うん、まぁ俺も来てるから人のこと言えないけどさ」
「リーも絶対好きだと思うんだけどなー」
「嫌いじゃない、とか言いそう」
「それそれ。絶対それ」
「親NGとかでもないらしいしなぁ。ロイ、何したん」
「なんで!?何が!?」
「いやそれくらいしか理由が浮かばないし」
「サイかもしれないじゃんー。呆れられてたしー!」
「それはない」
「うわ、言い切った」
「でも、このまま来ないならルーム替えかも?」
「えー、ヤだ」
「でもどっちにしたって、俺いなくなるし」
「それなー。でもまだ7年あるからいいじゃん」
「ホントに?今のうちに変えといた方がいいんじゃね?」
「やーだー。またラグピーラグピー言われんのヤだし」
「いや俺らも言ってるけど」
「お前らのはいいのー。パパママもOK出してくれてるし。またあっちこっちルームたらい回される身にもなれよー」
「それは自分のせいじゃんか」
「そーだけどー。そーだけどさー」
「まぁロイがいーならいーや」
「よっしゃー」
「それはいいんだけどさ」
「何?なになに?何か気になる?」
「何その全身鎧」
「課金。誕プレ」
「××過ぎだろお前」
「やったー!ウケたー!」
「くっそ……絶対ツッコむもんかと思ったのに……近いわ××」
1/3
おめでとう俺。で、なんで家族会議?
『ハッピバースデー、トゥーユー』
全力一吹き。いや11本ムリ、あっつ!
「惜しい、スプリット!」
「何それ。くっそ、消しきれなかったー。フッ」
「それだけ歳を重ねたってことだよ。おめでとう、彩」
「いや、だからスプリット?って何さパパ」
「スプリットって言うのはな、彩――」
「そんなことよりパパ、ねぇ、あの……」
「あ、そうだなママ。ごめんな彩、実はプレゼント用意出来てないんだ」
「ふーん」
「そうだよな彩、自分の誕生日にプレゼントがないなんてショックじゃない?普通。ねえ彩さんなんで?」
「想定内だったし」
「想定内!?」
「ご、ごめんね彩。ママ、お母さんなのに彩が欲しいもの分からなくて」
「ママ、泣かないで。ホント、落ち着いて。僕が欲しいもの浮かばなかったからなんだし」
「でも、だって、ロイちゃんは鎧貰ってすっごく喜んでたって」
「なんでそれ知ってるの」
「ロイちゃんママから」
「仲良いんだ」
「彩がすっごく羨ましがってたって」
「それデマだから。信じないでね」
「そうなの?パパ大変、違うんだって」
「え?あ」
「ねぇパパなんでスマホガン見して固まってるの?」
「大丈夫。うん、大丈夫だから」
「じぃじもこっそりリサーチしたんじゃが。彩は手強いのぅ」
「いやじぃじストレートに聞いてきたよね。しかもゲーム縛りで」
「だだだだって今時の子供はゲーム一択じゃろ?」
「そーなんだけどさー。なんかゲームって気分じゃないって言うか」
「彩は大人じゃのう」
「いや大人にはなれないし。……あ」
『………………………』
「彩、今のは良くないよ。じいさんが悪いのは当然として」
「ごめんなさい、ばぁば」
「悪気はなくても気をつけなさい。ね?」
「……はい」
「いいのよ、彩。気にしなくて」
「あなたがたしなめなくてどうするの。母親でしょう?優鷹さんも」
『………………はい』
「ばぁば、ばぁば。ママも僕も気をつけるから」
「偉いねぇ、彩は。10歳でもちゃんと大人だね」
「だから……むぐ」
「いいかい、彩。歳を取ればいずれ大人になるものだけど、そんなもんは見た目だけさね。ママを庇ってあげられる彩は心根がちゃんと立派に育ってる、ってことだよ」
「そうそう、じぃじもそれが言いたかった」
「じいさん?」
「それよりばあさん、彩はもう11歳じゃ」
「あらまぁそうでした、私ったら。ごめんなさいね、彩。改めてお誕生日おめでとう」
「うん、ばぁばありがとう」
「ばぁばはこんなものしか用意出来なかったけど。貰ってくれるかい?」
オシャレにラッピングされた風呂敷包みを開けると、淡い虹色マフラー。
「あ、ばあさんズルい自分だけ」
「気を回しすぎてたあんたらが悪いんだ、知ったことかね。思いついたら楽しくなってこんな柄にしちゃったけど、派手すぎたりしないかい?」
「んー、ちょっとカワイイ系かな?でも全然。あったかい、嬉しい、ありがとう」
「あらまぁ、どういたしまして」
「彩ぃ……」
「ママストップ。ごめんね禁止、待って泣かないで。ばぁばどうしよう」
「ほっときゃそのうち止まるさね。全くこの子はちっとも大人になってない。彩の方がよっぽど大人じゃないか」
「そうじゃそうじゃ。全く、誰に似たのかのぅ」
「あんたにだよ、じいさん」
じぃじが正座で説教されてたり、ママがまだぐずってたり、パパがどこかのカスタマーセンターに電話してたりしながら賑やかにご馳走とケーキを堪能。
「それでな、彩。彩はこれからどうしたい?」
「これから?」
「そう、これから。パパたち、彩がやりたいことはなんでもさせてやりたい。もちろん、本当になんでも、って訳にはいかないかもしれないけどさ」
「うん、ママ、彩が1番だからね。これからはもっとずっと一緒にいるからね」
「……ママ、ちゃんとお仕事しないと皆困るよ」
「ヤだ、皆より彩のほうが大事だもん」
「いやそんなワガママ…………。あー、うん、トクベツはいらない、かな」
「彩?」
「いつも通りがいい。朝は学校行って、夜はルームでダベって。パパママは外の仕事の時は間に合わない時もあるだろうけど、間に合う時は一緒にご飯食べて。悪いことしたら叱ってくれて、いいことしたら褒めてくれて。いつも通り。うん、それがいい。大人になれないから特別扱いとかはいやだ」
「やだ、彩ってばホント大人……」
「優鷹くん、ここはちゃんとお父さんするところ」
「あ、はいお義父さん。……そうだよな、彩。いつも通りが1番だよな」
「や、お菓子に囲まれて時間無制限でゲーム三昧とか、ルームのレーティング外してもらうとか、それも悪くはないと思うんだけど」
「おや?彩くん?」
「リーやロイのレーティングまで外せる訳じゃないし、ずーっとゲームばっかは飽きるだろうし。かといってやりたいことも浮かばないからさー」
「消去法かい」
「やりたいこと見つかったら相談するから。ちゃんと特別扱いなしで聞いてくれる?」
「もちろんだ。なぁママ」
「うん。なんでも聞かせて」
「なんでもはちょっと」
「えー。でもママ、彩のログ見れるからね?」
「ちょ、ママ?」
「ちなみにパパとじぃじの端末の『不自然なログ』も見れるようにしてあるから」
「沙織さん!?」
「なんでバレとるんじゃ!?」
「だって彩にパスワード教えちゃって、レーティングの意味ないんだもの」
「それはそうなんだけど、ほら、思春期の男の子は色々……ていうか、僕沙織さんにパスワード教えてないよね?」
「ママそーゆーの得意だから」
「ちょ、お義父さんお宅の教育一体どうなって」
「くっ、日頃の英才教育が裏目に出たか……」
「あ、じぃじの端末は解除検知でトぶようにしたから」
「く、ついにワシを越えよったか」
……ママ、ばぁば似……?
「あ、そうだ。やりたいこと」
「お、なんだ?言ってみなさい」
「そんな大したことじゃないけど。とりあえず七彩石とかシキ◇サイのこととか、ちゃんと知りたいかなって」
「あー、なるほど。結局オカルトだもんなぁ」
「オカルトって何?」
「科学的根拠がない、みたいなことかな?結果としてそうなることは分かってるんだけど、どうしてそうなるのかは分からない」
「そうなんだ。じゃあ色々調べてみる」
「彩、彩、ママも手伝うね」
「いや、ママはお仕事ちゃんとして……?」
1/4
やむなくお披露目
「サイ、何その武者鎧」
「お前がデマ流したせいだからな」
「てか、近過ぎ。照れる」
「おーまーえーがーいーうーなー!」
1/8
めちゃくちゃ発表会した
調査報告
七彩石
聞いたこともない国の聞いたこともない奥地で見つかった鉱石。曇りガラスみたいな半透明だけど、生き物が触ると変色する。赤、オレンジ色、黄色、白、青。よく見ると色がユラユラ煙みたいに揺らいでる。ナナイロって言ってるけど緑とかにはならないっぽい。
研究用に輸出されてたのをどっかの学生がバズらせて大流行。採りすぎて廃坑したみたいだけど、もう充分世界中に出回ってる。ゲームのアイテムみたいに使い減りしないし、大きさも関係ないから、足りないなんてことにはまずならないっぽい。
あ、名前は発見した日本人探検家が命名だって。発見したのはすごいけど、もうちょっとこう、センス……
シキ◇サイの信ぴょう性が高まって、日本では販売停止になりかけたけど、逆にそれで買いたいってなった人もいたみたいで、結局今でも普通に売られてる。
所持を禁止するべき、なんて話も真面目にしてたみたい。でも、ただの石だから金属探知機も効かないし、隠そうと思えばその辺の砂利道でお手軽OK。お手上げ、ってことで棚の上に上げっぱなしっぽい。
でも。国によっては所持は厳罰、とか、密告しょーれい、とか。怖。
シキ◇サイ
制作者不明。名前からして日本人だ、とか日本かぶれだとか色々。
みんな死期◇歳って漢字当ててる。わざわざカタカナでオシャレのつもりなんだか。でも、死期とか寿命って、年齢で表すみたい。だったら、ヨメイ◇サイじゃないとおかしいような。まぁそれは置いといて。
提供元不明のアプリなので、子供はインストール出来ません。残念。
七彩石の色をカメラで読み込むと、シンプルに数字だけ表示。難しいこと一切ナシで誰でも使える親切設計。てゆかマニュアルもなし。
数字は余命の年数。何月何日とかまでは分からない。人によっては数字がブレることもあるらしい。ただの年跨ぎ説とか、『寿命は完全に確定してる訳じゃない』説とか色々。
でも、ズレても1多いか少ないかだけ。何年もブレるってことはないみたい。
シキ◇サイの数字と実際のタイミングはほぼ一致。絶対ではないらしいんだけど、そこは、ええと、調べたけどよく分かんなかった、です。
以上、発表終わり!
拍手。
「おぉ、すごいな。彩、よく調べたじゃないか」
「ほんとだねぇじいさん。偉いよ、彩。学者さんみたい」
「ばぁば、それは褒めすぎ」
「彩」
あれ、パパなんで真顔?
「発表会なんだから、調べたことを隠すのは良くない」
「えー」
「調べたことはちゃんと発表しなさい。な、ママ」
あ、パパ、ママの手ぎゅってしてる。
「うん、ママちゃんと聞くから。聞かせて?彩」
あー、バレバレかぁ。
まぁ、ママならいくらでもログ見れるし、分かっちゃうよね。
「ええと」
「ゆっくりでいいからな。落ち着いて」
「うん、大丈夫」
シキ◇サイの数字と実際のタイミングはほぼ一致。絶対じゃなくて例外もある。
事故とか、……自殺、とか。
でも、シキ◇サイの数字よりずっと早くなることもあれば、変わらなかったってケースもあるみたい。
だから、シキ◇サイというか、七彩石が映し出してるのは、無事に生きれたら何年、ていう健康寿命?じゃなくて、運命みたいなものを読み取ってるんじゃないか、って説もあるみたい。
早くなったりはするけど、逆に遅くなった、ってケースは見つかんなかった。
シキ◇サイの数字ではまだ先でも、油断しちゃダメ、ってことかな。
今度こそ、以上です!
「はい、質問です」
パパ、挙手。
「………………どうぞ」
「自殺について、どう思う?」
「あ゛ー……」
パパとママの手が、ギュッと。
「うん。したいとは思わない、かな」
「そっか、うん。良かった。どうしてそう思った?」
「せっかくまだ6年もあるのにもったいない、かな、って。やりたいこと何か見つかるかもだし。それに」
ママ、ガン見し過ぎ。怖い怖い。真っ直ぐ見すぎ。パパの手青くなってるから。
「ママ泣かしたくないし。っても、結局泣かしちゃうんだろうけど。遅かれ早かれかもだけどさ」
「――ダメ!違う、自分で死んじゃうのと最後までちゃんと生きるのは全然別!全然違うの!死んじゃダメなの!」
「沙織さん大丈夫。大丈夫だよ、落ち着こう?彩はちゃんと分かってるから」
「うん。ママ、安心して。ちゃんと全部生きるから」
ぎゅっ。
「約束、だから、ね。破ったら、許さない、から、ね」
ぎゅーーーーーーっ。
「大丈夫。だから。痛い。痛い痛い強い痛い死んじゃう死んじゃう」
「死んじゃダメーっ!!」
「だーかーらーっ!!」
「こんのバカ娘ーっ!!」
「沙織さん、約束したのにー」
「ごめんなさい優鷹さん、やっぱり我慢ムリ」
「仕方ないけどね。でも、出来るだけ笑顔で一緒にいてあげられるといいよね」
「いーじーわーるー」
『大手保険会社エイシャが生命保険に続き、全ての保険商品の新規販売を停止すると発表しました。先日、別の会社では寿命情報の提出を求めたことを不適切な行為と認め謝罪、しかし会見での発言が更に炎上する騒ぎに発展するなど、業界全体に混乱が広がっている模様です』
『昨年の国内の離職率が過去最高水準に。今年も水準を維持する可能性が高いと見られ――』
『人気カリスマ俳優アキラさんの突然の訃報から三日、熱狂的なファンと思われる方々が相次いで――』
彩の日記帳 14歳
6/8
ママ、逮捕?
学校、やっぱめんどい……
敷地内の駐車場にスクールバスが止まると、小学組が飛び出していく。中学組、高校組とみんなも続いてく。
「ほら、久谷も降りなさい」
「はーい」
嫌われ観察員の大沢に促されて、のんびり最後に下車。
昔は中学生だけで使っていたらしい校舎に、今は小学生、中学生、高校生が通ってる。
どうせ勉強はVRなんだから家でも出来るんだけど。決まった時間に通ってみんなで運動したり給食食べたり。そういう経験?が大事らしい。
あと、親が働きやすくするためとかなんとか。エトセトラエトセトラ。
「彩、おそーい」
「早く行かないと、大沢に怒られるよー」
「はいはい、そーだねー」
目ざとい小学組に捕まって、校舎内に強制連行。
大沢は怒ることはないけどね、認定指導員じゃなくて観察員だから。
いっつもジト目でムスッとしていて、口を開けばイヤミっぽく小言を言う。そりゃ、小学組からすれば怒られてるって感じるよね。俺も昔はそう思ってたし。
でも、今のご時世、好き勝手に叱るのはNG。怒るのなんて論外。じぃじの拳骨なんて、訴えたら身内でもなんでも確実に逮捕案件だし。
子供を叱るのにも資格がいるってんだから、大人ってホントめんどくさい。
「彩も前行こーよ」
「やーだ。俺は後ろ」
基本的に、席順は自由。落ち着きのない小学組と、同じように要注意認定されてる何人かだけは強制的に前の席に座らされるから、行きたくても前には行けない。いや、絶対行きたくないけど。
席に着くと、しばらく独りタイム。
みんな歳の近い同士で集まってたりしてるけど、寿命のことはとっくに知られてるから、気まずさからかみんな自然と疎遠に。彩は1人でかわいそうだからー、ってよく分かってない小学組は仲良くしてくれている。あ、そっか、あれ同情だったのか。
ロイがいたら絶対最前列だよなー、とかぼんやり考えてたら、ホームルームのチャイム。
「みんないるなー。忘れ物してないなー」
『はーい』
仏頂面の大沢が入ってきて、タブレット見ながら朝の伝達。いつも通り聞き流しながら手袋とVRゴーグルを用意。
「はい、じゃあ支度してー」
朝礼を締めて教室の隅に下がる大沢を横目に、みんなそれぞれゴーグル装着。
1、2、3、4限と進んで、時々誰かが大沢に小言を言われてたりはしてたみたいだけど、今日は指導室行きはゼロ。
給食。おかわり争奪戦、小学組の頃は参加してたなぁ。こらこらー、こっそりニンジン俺の皿に移そうとするなよ小学組ー。
「バレた!?」
「そりゃバレバレだろ、目の前でやってりゃ」
犯人、なぜか爆笑。周りの小学組も一斉に連鎖で大爆笑。
「静かに食べなさーい」
「うわ、大沢怒ったー」
注意されて爆笑レベル上昇。大沢も分かっているから、それ以上は注意しない。
給食、昼休みが終わって体育の時間。
今日のメンバーは6歳から16歳まででドッジボール。小学組もいるから手加減は必要だけど、油断してると思わぬダメージを受けるので要注意。
と、思っていたら。
敷地内に1台のタクシー。
降りてきたのは見覚えのあるおばあさん。っていうか。
「ばぁば?」
「彩?あなた授業中でしょう。何してるの」
「何って、ばぁばこそどうして学校に?」
「私は沙織のことで呼ばれて、いえ、いいから彩は戻りなさい。そら」
「お母さん来てるの?ばぁば呼ばれてって、何で」
「久谷のお祖母様ですね。お待ちしてました、ご案内します。久谷は授業に戻りなさい」
「大沢?やだ、俺も行く」
「彩、わがまま言わないの」
「俺も行くってば。お母さん来てるんでしょ?俺のことで何かあったに決まってるじゃん」
「……お祖母様、久谷も連れていきます。こちらへ」
「ああもう、こんなところばっかり沙織に似て。先生、お願いします」
「あ、いや、私は先生では……」
「ていうか大沢、授業見なくていいの?」
「高梨と瀬良に頼んである」
先生を呼び捨てにしないの、とか、観察員なので先生ではないんですが、とかそんな話をしながら校内を進む。お母さんに何が、と聞いても2人揃って華麗にスルー。
そうして到着したのは校長室。
「入ります」
大沢がノックをすると、中から扉を開けたのは指導員の櫛田。
「お母さん!?」
まず目に入ったのは、警備員に腕を掴まれたお母さん。ぐったり項垂れてはいるけど、怪我したりはしてなさそう。俺の声はそりゃ想定外だよね、まん丸になったお母さんの目とばっちり視線が合う。
「大沢さん、どうして生徒が?」
「ちょうど居合わせたもので。私が同行を許可しました」
「いや、そういうことを聞いているんじゃなくてだね。勝手なことをされるのは困るよ、君」
奥の豪華な机の前に立っているのは時々見かけるおじいさん。あー、校長だ。
「さ、彩?あのね」
バチン!
何か言おうとするお母さんに歩み寄ったばぁばが、手加減ゼロの全力平手打ち。
聞くだに痛い重い打撃音でみんな一斉に身をすくめる中、振り返るなり深く深くばぁばが頭を下げる。
「この度は家の者が大変な失礼を致しました。申し訳ございません」
ばぁばが向かい合ったのは、誰ママだっけ、見たことあるげなおばさんが1人。ばぁばじゃなくて、気まずそうにちらちら見るのは俺の方。
ははーん。
「事の次第はお電話でもお伝えしましたが――」
認定指導員の櫛田の説明は、おおよそ予想通り。
うちのお母さんが俺に内緒で進路相談の約束をしていて櫛田を尋ねたところ、先約の誰かママと話しているのが指導室の中から漏れ聞こえてしまった。
で、問答無用で掴みかかって、止めようとした櫛田を跳ね飛ばして、警備員が来てやっと取り押さえた、と。
その話してた内容というのが、卒業出来ないと決まっている生徒をなぜ進学させるのか、他の生徒に悪影響だと思わないのか、と。
あー、お母さんキレるわそれはー。
「ほら、沙織も頭を下げなさい」
「だって、悪いの私じゃないよ……」
「理由がなんであれ、人様に手を上げるのは悪いことだよ。謝りなさい」
「でも……」
「正しいことをしたと彩に言えるのかい!?子供に胸張って言えないことなら、はなっからするんじゃないよ!」
ビクッと震えるお母さん。と、誰かママ。
「申し訳……ありませんでした……」
不承不承、頭を下げるお母さん。
「い、いえ、もう気にしてませんから」
ものすごく居心地悪そうな誰かママ。針のむしろってこーゆーことかー。
でも、こっちだけ謝ってそれで終わりっていうのは、正直納得いかない。
「おばさん、あの、お母さんが酷いことしてごめんなさい」
「いえ、その、あなたが謝らなくてもいいのよ?お願い。頭を上げて?」
「だって、僕が進学したいって言ったのがいけないんですよね?僕が途中で死んじゃって、みんなショック受けちゃうから、やめた方がいいって言ってくれたんですよね」
「いえ、そんな、その、ね、違うのよ、違うの。そんなつもりは――」
「僕、進学しちゃいけないんですよね?」
『……………………』
誰かママ、真っ青。校長も櫛田もお母さんも、みんなロイ顔負けのマナーモード。ばぁば、なんで1人だけ目ぇ笑ってるの?
「そんな訳、ないだろう!」
予想外の声。…………え、大沢?
「国民はみんな幸福を追求する権利を持っている。憲法がそう定めている。だから、久谷が進学を望むのなら、我々が万難を排する。そうですよね、校長?」
どうしたの大沢、急になんでそんなかっこいいの。
「え?あ、ああもちろん。当然。その通りですとも、もちろん。うん。ねえ、櫛田くん」
「は、はい。そうですね、その、他の生徒や保護者に配慮して、同意を得て、1番いい形を模索していければと……」
「大沢先生」
あ、ばぁば動いた。歯切れの悪いのが聞くに耐えなくなったんだろなー。
「大沢先生のような方がいて下さって、孫のように難しい事情のある子でも信じて託せると安堵いたしました。これからも彩のことをどうぞよろしくお願いいたします」
「あ、いえ、ですから私は先生では……」
にっこり。くるり。
「杉原さま、私どもも精一杯配慮し、皆様には叶う限りご迷惑のかからないよう努めてまいります。ですのでどうか、彩の進学のこと、心穏やかにどうぞご寛恕いただけないでしょうか」
「ひっ……はい、はい、そ、そこまで仰っていただけるなら、わたくしも安心、いたしました。その、校長先生?わたくし、この後がございますので、これで。では」
そそくさと部屋を出ようと、あ、扉重そう、頑張れー。体当たりみたいにして押しても開かないよね、そりゃ。あ、やっと引くんだって気付いた。泣きそうなほっとしたような気まずそうな、感情ごちゃまぜの顔で脱出していく誰かママ。なるほど、これが脱兎。
「あ、あのー、これから警察の方が……」
「え、お母さん捕まっちゃうの?」
「被害者の杉原さまがもういいと仰って下さったのだから、大丈夫。でも、手を上げたのは確かなのだから、沙織はきちんと事情聴取を済ませてから帰ってらっしゃい。皆さまももう少しお付き合いをお願いいたします。さ、私たちがいるとやりづらいでしょうから行きますよ、彩」
櫛田が慌てて扉を開け、ばぁばと退出。
みんな深々と頭を下げてばぁばをお見送り。
「彩」
扉が閉まるなり、ばぁばが肩を叩く。
あ、叱られる。
「よくやった!やるじゃないか、見直したよ」
にっこり笑ってサムズアップ。ばぁば、なんでそんなかっけぇの。
「ってことがあったのさ」
「ばぁばかっけぇ。オオサワもー」
「うん、正直ビックリした。あんなデカい声出せると思わなかったわ」
「惚れちゃう?」
「おっさん相手にそれはない」
「そっかー」
6/9
大沢先生、爆誕!
「おはようございます、大沢先生!」
「ちょ、久谷、何言って、先生じゃないと言っているだろ、やめなさい」
さすがに怒られるかなー、と思ったら、オロオロし出す大沢。あ、耳まで真っ赤。めっちゃ照れてる。
あれ、大沢かわいい?
面白がった小学組が先生コールの大合唱。
「久谷、来なさい」
ツカツカツカ。首根っこ。あーれー。
問答無用で逃げるように指導室に連行されたものの、出迎えた櫛田も昨日の今日で体面が悪いのか、どう指導したものか困り果ててまさかの初手親連絡という暴挙に。
なぜかニコニコばぁばがやって来て、ニコニコ大沢『先生』に謝罪。
結局『先生』呼びはそのまま定着、熱い武勇伝もばぁばネットワークで広まり、大沢の株は爆上がり。
元々すごい子供好きで、好かれたい仲良くしたいって欲求を仕事のためにグッと抑え込んでいたんだって。
もちろん俺の寿命のことも進学のことも知ってたけど、一介の観察員が口を挟んでも迷惑だろうとモヤモヤしていたところにあの事件。
すっかり人気者にされてしまって、どうやっても嫌われ者に戻れなくなってしまったのは、まぁ100%俺とばぁばのせいだよね。
ごめん大沢先生、ホントにごめん(笑)
そんな怯えて限界いっぱい距離取らなくても大丈夫だから。
そんなごめんなさいな日々の中。
「……あのさ、久谷。お前、その、怖いとかないの?」
ずいぶんと疎遠のままだった中学組グループが、何やら意を決したように声をかけてきた。
「え、大沢?全然」
「じゃなくて、さ……」
「あぁ。やー、別に。まだ3年あるし。逆にどう思うん?」
「いや、なんかいつもフツーにしててすげぇな、って。変な意味じゃなくて。俺だったら怖くて泣いてそう」
「ばぁばに言ったら、雨降って地固まる、って言うんだってさ」
「へー。オオサワの犠牲は無駄じゃなかったんだなー」
「そうそう。尊い犠牲だった」
「そっかー。それよりさー、サイ」
「うん?」
「日本だと14歳は厨二病になるんだろ?サイはならんの?」
「ないない。するかそんなん恥ずかしい」
「えー、邪眼が疼いたりしないの?」
「しないわそんなん」
「じゃあじゃあ、反抗期は?意味もなくパパ蹴ったりしないの?」
「ロイ、お前まさか」
「え、挨拶代わり」
「いやそれ、蹴り返されたりしたらどーすんだよ」
「しないよー。庭の池に投げ込まれるだけ」
「……ロイ、もうちょっとだけ大人になろう?」
「やーだー、俺は今を楽しむ!サイももっと楽しまなきゃ」
「そんなんしなくても充分楽しいわ、心配すんな」
「マジか。ま、サイが楽しいならいっかー」
「そうそう。ロイみたいにデリカシーなくて気楽な親友もいるしな」
「ふふん、得がたい才能だろ?」
「まさかの長所」
「もちろん。だってサイ、そんな俺が大好きだもんな?」
「はいはいそーですね。これからもよろしく、親友」
「おう、任せとけ!」
彩の日記帳 16歳
4/1
最期の一撃
病院。
家族全員揃うのは久しぶり、かな。
「彩、どうした?元気ないのう」
「大丈夫だよ元気だよ。孫の心配なんかいいから早く良くなってよじぃじ」
「彩のわがままならなんでも聞いてやりたいんじゃがのー。こればっかりは無理じゃー」
もう起き上がるどころか腕も上げられないってのに、なんでそんなに普通に喋ってるんだよ。
「最後の最後までバカやってるんじゃないよ、じぃさん」
じぃじの傍らに座るばぁばが、いつもの調子でたしなめる。
「そうは言っても、ワシ湿っぽいの苦手じゃし」
「またそんなこと」
じぃじの手を握るばぁばの両手も、肩も、もうずっと震えてる。
「じぃさん、ねぇ、最後にひとつだけ一生のお願い、いいかい?」
「な、なんじゃ?この期に及んであれしろこれしろは無理じゃぞ、ホント」
「駄目元でいいからさぁ、閻魔様に、ね、一日でも、ううん、1分1秒でもいいから、彩を連れてくのを待ってくれって、それだけ、お願いしてくれないかい?」
「ばぁさんよう、そりゃあ――」
「あたしの寿命なんか全部差し出すからさ、それで彩の1分1秒と引き換えられるなら喜んであんたの後追いかけるから」
「よしなさい、ばぁさん」
「あんたを見送るのははなから覚悟してたよ。でも、彩を、可愛い孫を見送る覚悟なんて、無理だよ。あんたがいなくなって、1人で耐えられる訳ないよ」
「……すまんなぁばぁさん、はじめてのわがままも聞いてやれん甲斐性なしで」
「本当だよ。駄目元でいいって言ってるってのに、試しもしないで袖にするなんて」
「だって、そのお願いは閻魔様もとっくに辟易しとるだろうしのぅ。それに、ばぁさんの寿命は担保にする訳にもいかんし」
「なんだい、こんなばぁさんの10年じゃ一文にもならないってのかい」
「そりゃならんじゃろ」
「じぃさん?」
「じょ、冗談じゃよ?さておき、ばぁさんやることあるじゃろ?」
「やること?何させる気だよ、一体」
「ほれ。彩を見送ったあと、沙織がバカなことしないように見張っとかんと」
「そんなもの、優鷹さんの仕事でしょう」
「だって優鷹くん頼りないし」
パパ、流れ弾。
「お義父さん、沙織さんはちゃんと僕が支えますから」
「いやぁ、信じてない訳じゃないんじゃよ?どこぞのバカ娘が尋常じゃないというだけじゃでの」
「……お父さん、実の娘をなんだと思ってるの?」
「なかなかどうして大したものだと」
はぁぁぁぁ、と、ばぁば深く溜め息。
「分かった、分かりましたよ、もう。あの突拍子もないのは、優鷹さん1人じゃ荷が重いでしょうから」
「すまんなぁ、ばぁさん」
「本当ですよ。よりにもよって、最後の最後に寄越すのが貧乏くじだなんて」
「でも、そんなじじいで良かったじゃろ?」
「そうですね、くそおじぃさん!」
パチン!
ずっと握り締めていた手を片手だけ振り上げて、じいじの手の甲を挟むように叩くばぁば。
「彩、見たか?鬼ババが叩いて来よった。これがワシの死因じゃぞ、癌だの老衰だのと誤魔化されんように見張っといてくれよ」
カカカっ、と小気味よさそうに笑う。それから、ふーーーー、っと一息。
始終そんな調子でみんなと言葉を交わして。
眠るように。
じぃじは、旅立った。
10/19
お仕事はじめました。
仕事っていうほどのことじゃないんだけど。ちょっとやりたいことが見つかったので、やってみることに。
何事も挑戦。やりたいことはなんでもさせてやりたい、ってお父さんも言ってたし。
うん。
そんな風に思っていた昨日の自分をそっと優しく全力で張り倒してあげたい。
「やるっていうなら半端はしないよ」
ばぁばの目を見た瞬間、自分の甘さをはっきりと理解しました。
能天気…………げふん、陽気なムードメーカーだったじぃじがいなくなってしんみりしていた我が家に、とっておきの明るいニュースが飛び込んできたのが今月の頭のこと。
これから大変になるお母さんを支えようと、家のことを手伝いたい、と言ったのが昨日。
徹底的にしごかれてヘトヘトになっているのが今。
どうしてこうなったし。
「……ばぁば、お手伝いってこういうことだっけ?」
「ちょっと自分の皿片付けて手伝ったつもり、とか思ってたつもりじゃないだろう?」
「そりゃそうだけど、まさかいきなり大掃除始めるなんて思わないってー……」
「何言ってんだい、大掃除ならこんなもんじゃ済まないよ」
「うっそ、まさかばぁば、これ毎日やってるの……?」
「そんな訳あるもんかね。くたびれちまう」
「はい?」
「今日はここ、って決めて、あとはササッと。家事ってのは要領よくやるもんだよ」
「騙された〜」
「騙したもんかね。何事も初めが肝心。最初に一番大変なとこをこなしときゃ、後が楽だろう?」
「それはまぁ、うん。でもそれだったら、その要領よく、ってのを教えてくれればいいじゃんか」
「物事には順序ってものがあるのさ。肝心なことは教えたろう?はい、復唱」
「はたきは上から。ふきんは四角く。どかせるもんはどかす。面倒なとこほど丁寧に」
「よろしい」
「あれぇ、それで全部?」
スパゲッティをフォークでくるくるしていたお母さんが思わず一言。
「なんだい沙織、藪から棒に」
「横着はGと同じ。明日の自分を敵に回すな。手抜きは基礎の次。でしょ?」
「そりゃあんた用だよ。彩は……まぁ、今んとこ様子見」
なにそれ怖い。
「横着は……って?」
「ええとね、一匹見たら百いると思え、百害あって一利なし、だって」
「うへー。明日の自分、は?」
「彩、夏休みの宿題溜め込んで修羅場ってた時、遊び呆けてた自分を恨んだでしょ?」
「あー、うん、何でその喩え?的確すぎてすっごく痛いんだけど。でも、手抜きは次って?しちゃダメなんじゃないの?」
「そりゃ、素人の間抜けな手抜きの話だよ。結局手間が増えるからね。玄人の手抜きは業っていうのさ」
「そうそう、ちゃんとした手抜きは横着とは違うのよ」
「全くだね。ふきんの代わりにバスタオル持ち出してきた時は本当に目眩がしたもんだ」
「ちょっとお母さん、それ内緒……」
「いいから早く食べ切りなさい。彩が片付けられないじゃないか」
「だって、せっかくの彩の手作りなんだもん。堪能しないともったいないじゃない」
「冷ましちまう方がよっぽどじゃないか、全く」
「言われた通りに茹でただけなんだけど……」
「そんなことないよ彩、ちゃんとアルデンテだし美味しいよ」
「だから、ミートソースも湯煎?しただけだし」
「ま、これで自力で食えるもの作れることは分かったろう?あたしや優鷹さんほどはムリでも、簡単な1品くらいは作れるように仕込んでやるから安心おし」
「わー楽しみー!」
「…………早まった……」
「でも、急にお手伝いなんて、ホントにどうしたの?分かったと思うけど、ばぁばのスパルタ、軽く地獄だよ?」
「あんた、分かってなかったのかい?」
「え?」
「……そりゃ、妹が出来たって聞いたら、ちょっとは役に立たなきゃって思うじゃん」
「え?え?えー!?」
「普通に考えりゃ分かりそうなもんだろうに、全く。そんな様じゃ、彩も頑張った甲斐がないじゃないか。なぁ」
「いや別に喜んで欲しいとかじゃなくて。ただ単に妹のことに専念して欲しいっていうか。その、出産て大変、らしいし」
「まぁ、男にゃこの苦労は分からんだろうね」
「うぅ、ありがと、彩。でも、ごめんね、専念は、ムリ……」
「え、なんで?仕事?何か手伝えることない?」
「はは、彩も存外鈍い子だったねぇ」
「ばぁば、何笑ってるのぉぶっ――!?」
「彩、だぁい好きっ!!妹か弟が欲しいって言われてビックリしたんだよ?頑張ってよかった!お母さん、頑張って急いで産むからね!!」
「そら、この子があんたのこと構わずにいられる訳がないじゃないか。自明だろ?」
「いやばぁば、助け――ぐぇっ!?」
10/22
ボランティア初参加
今日はばぁばが不定期参加しているボランティアに同行することに。強制?ソンナコトナイヨ。
川沿いのゴミ拾い。なんだけど、どう見渡してもキリがない。
「どうせ一日じゃ終わらんよ。さぁみんな休憩休憩」
リーダーのおじいさんが率先して休憩所代わりのレジャーシートに腰掛けると、みんなワラワラと群がっていく。
みんな珍しがって話しかけてくれるけど、年の功か寿命の近さか、なんというかすっごく気楽。
「言ったって、そら、長生きするのもいいことばっかりじゃないしよ」
べし。
「いっつもいっつも、バカなことばっかり言ってんじゃないよ」
「ぽんぽん叩くな、うっかり死んじまったらどうするよ」
「別に誰も驚きゃしないから安心しな」
「あはは、じぃじの最期もばぁばの一撃だったしね」
ザワ。
ん?
「さささ彩ちゃん、それは言っちまってよかったのかい?」
「帰りの夜道、気をつけるんだよ?」
「彩、そろそろ続きにかかるよ…………って、どうしたんだい、あんたら」
『いやいやなんでも。気にしない気にしない』
「おかしな連中だね、相変わらず」
(……まさか……いや、いくらなんでも……)
(……あの人ならやりかねん……)
みんな冗談が好きだなぁ。………………。冗談だよね?真に受けてないよね?
12/20
さよなら、結構気まずい
学校、やめることにした。
自分で進学したいと言っておきながら途中で投げ出すんだから、父さん母さんはともかく、じぃじという高性能オブラートをなくしたばぁばになんて言われるか、めっっっちゃ怖かった。
のに。
「……え、いいの?」
「駄目って言ったら通い続けんのかい?」
「いや、それは」
「そら、もう胆決めてんじゃないか。なに間抜けな顔してるんだい。やりたいこと見つけたんだろう?学校ってのはね、潰しのきく勉強と、人付き合いの練習の場なんだ。なら、自分の道を行く為に巣立ってくのが当然ってもんだろ」
「うん、で、大沢にメッセージ送ろうと思って」
「彩」
「え」
「そういう大事なことは、ちゃんと顔を合わせて伝えるもんだよ」
という訳で、学校。
「…………誰?」
「大沢だ。分かってて聞くな」
そうは言うけど、ボサボサ髪によれよれジャージの猫背な仏頂面のおじさんがこうも豹変するなんて思わなかったし。
イケメンじゃないけどこざっぱりとして背筋のピンと伸びたカジュアルジャケットおじさん。
いや、誰これホントに。
「久谷のお祖母様のせい、んん、おかげで。やや、それはいいから」
あー、やっぱり。
ばぁばが時々学校に行ってたことは知ってたけど、まさかの魔改造。
「やりたいことが見つかったんだってな。嬉しそうに仰ってた」
「って言っても、ただの家の手伝いだよ」
「お母さんと妹を支えるんだろう?立派じゃないか、胸を張りなさい」
「……ホントに大沢?」
「こほん。……お祖母様ならそう言うんじゃないか?」
「ああ、うん。言いそう」
「みんなにちゃんと挨拶するんだよ、とも言いそうだけどな」
「うん、そうなんだけどさー。ほら、すぐどうにかなるって決まった訳じゃないし、どっかでバッタリ会っても気まずいじゃん?」
「はは、気まずい、か。久谷は面白いな」
「そうかなぁ」
「別れの挨拶はするべきだ、とは思うが」
「えー」
「残念ながら、私はしがない観察員であって、教員でも認定指導員でもないからなぁ。というか、なんで私が対応してるんだ。そこがそもそもおかしいだろう」
「えー、分かんなーい」
溜め息。
「白々しい……まぁいい。みんなには伝えておくよ」
「はい、お願いします。ありがとね、大沢先生」
「だから!先生じゃない!」
「そっか、学校やめたんだ」
「うん。手続きとかは分かんないけど、行くのは今日が最後。ってか、ここんとこずっと休んでばっかりだったけど」
「でも、うん、ママ支えるのはいいと思う。サイやさしー」
「うっさい」
「妹ちゃんと会えるといいねー」
「どーかなぁ、会えたら嬉しいけど」
あと1年。とは言っても、実のところ、そんなにはないはず。
暦通り説、これはない。七彩石に人間の暦なんて関係ないし。そもそもみんなタイミングはバラバラな訳で。
誕生日説。暦通り説と大差なし。
ゆらぎ説。何日何時何分までは確定してないって説。だから諦めちゃいけない、って言うけど、どっちにしろ分からないのに諦めるも何も。
確定説。ゆらぎ説の逆で、何日何時何分まで確定してるって説。これを信じて毎日シキ◇サイを使ってる人も結構いるって話。いつ数字が切り替わるか分かれば、もっと日時を絞りこめる、って考え方なんだろうけど。
でも、そんなの時間の無駄だろうし、正直、さすがに滅入りそう。
だからって訳じゃないけど、シキ◇サイを使ったのは最初の1度きり。
18歳になる前日まで生きられるかもしれないし、逆に17歳の誕生日に死んでしまうかもしれない。
だから、妹に会えたら、すごくラッキーだと思う。でも、多分ムリ。期待はしてない。
「分からないなら、いい方に考えなきゃ」
「それな。さすがロイ、天才か」
「ふふん、任せたまえ」
「さてと。あーーーーーっ!!」
「うわ。どした?」
「さよならって、気まずいなー、って」
「だよなー。みんなに言えなかったの、仕方ないって」
「うーん……言われる方もキツいじゃん?知らんけど」
「まーなー」
「……でも、言わないのってズルいよな、やっぱ」
「そりゃまー。でも、いいんだって」
「いや。良くない」
「うん?」
「親友にだけは、ちゃんと言わなきゃ。元々そのつもりだったし」
「サイ?何言ってんの?」
「ロイ、今までありがとう。お前と話してて、いつもホント楽しかった」
「待って。待って、ヤだよ」
「お前にだけは、ちゃんと言いたかったんだ。多分、家族のみんなにも言えないだろうから」
体は健康そのもの。病気どころか怪我ひとつない。ってことは、多分、理由は事故かな、って思う。
「ズルい、バカ、勝手に決めるな!いらないよそんなの。いいじゃんか、最後の最後までバカ言い合ってれば!」
「言うの、お前だけだよ。大谷にも言わなかったんだ」
「………………やだ。そんな特別、いらない」
「わがまま言うなよー」
「わがままはサイだ」
「うん、そうだよな」
「認めんなよ」
「だってホントのことだし」
「死んじゃうからって、なんでもアリかよ。偉いのかよ」
「偉くないって」
「なんて言ったら、やめてくれんだよ」
「やめないって。諦めて聞いてくれよ」
「やだ、聞かない」
ロイのアバターが耳を塞ぐ。
アバター操作してるってことは、塞がってるのは耳じゃなくて手。……めんどくさい奴。
「ホント、ありがとな、ロイ。さようなら」
幕
彩の日記帳
1/3
寝起き誕テロ
「おはよう、彩。お誕生日おめでとう」
「……んー、お母さんー?なんでー?」
「ちゃんと息してるかなー、って。つい」
「勝手に入らないで、って言ってるのにー……」
「今日だけ。いいでしょ?あと、絶対一番にお祝いしたかったから。はい、プレゼント」
「……ありがとー」
カーテンが開けられると、日差しが柔らかく部屋を照らしていく。段々目が覚めてきた。ような。ねむ。
「ね、彩。日記、……まだ続けるの?」
「続けるよ。だって途中で投げ出したら、お母さん怒るでしょ?」
「……そうね。そんなことしたらお母さんツノ生えちゃうかも」
「怒られるのやだし。ちゃんと最後までやるよ」
「えらーい」
「ありがと。じゃあおやすみー」
「また寝ちゃうの?それならお母さんも一緒に寝るー」
「ちょ、起きる!起きます!入ってこないでお母さん、待ってー!」
余話
「ああほら、お出迎えだ。
彩ママと妹がお待ちかね。見える?」
見遙かせば道の向こう、赤ん坊を抱いた女の人が手を振ってくれてる。思ってた通り、優しそうな人。
『うん、すっごい笑顔。ありがとう、彩パパ』
風に遊ばれるショートカットの髪、色彩豊かな花束、白いワンピースの裾。
あぁもう、だからヒラヒラはイヤだって言ったのに。
諦め見上げれば、快晴。
歓迎、してくれたんだよね?
「Sorry, I came. I trust you won't get mad, my dearest friend」




