表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/44

そこに恋愛感情なんて無くても

 アルマン様は気持ちが落ち着いたのか、朝食後に私の横顔を存分に堪能した後仕事に出かけていった。今日は王室とのお取引があるらしい。そんな大物取引の前に落ち着かせることができてよかった、と心から安堵した。




「ジゼル様、昼からはドレスの採寸があるってご存知ですか?」


 ラピエース商会財務部で昨日と同じように硬貨磨きに精を出していら、財務部の紅一点であるアネットに声を掛けられた。

 私が財務部で仕事をすることは事前にアルマン様から通達されていたようで。今朝馬車で商会に着くと、入り口で財務部の人達が待ち構えており、大歓迎されながら出迎えられた。


「え? 初耳だけど」

「私も聞いては無いのですが、そこのボードにそのような予定が」


 アネットが指差した各従業員の予定を記入したボードに、急遽書き加えられたのであろう私の名前。そしてその横には「十四時からドレス採寸」と書かれてある。


「朝アルマン様から伝言があったらしいよ。結婚式のドレス採寸だってさ。ジゼル様はあのアルマン様をどうやって落としたんですか? こんなスピード婚なら恋愛結婚でしょう?」


 他の男性従業員が会話に割って入ってくる。


「ちょっと、ダニエル! そんな事聞いたら失礼でしょ?」

「いいのよアネット。だってアルマン様は私の横顔しか興味無いから」


 顔を見合わせるアネットとダニエル。


「だって出会ってからまだ三日しか経ってないし、私自身は結婚する実感なんて一つもないの。たまたま金貨そっくりな横顔の私をお求めになっただけで……恋に落ちたわけじゃ無いから」


 自分で言っておいて何だか悲しくなる。いつか自分も好きな人と恋に落ちて結婚して、親方に孫を抱かせてあげれたら……なんて妄想していた頃もあった。正直そんな夢物語のような展開への憧れが今でも全く無いわけでは無いけれども。アルマン様と約束した通り、私は彼と結婚する。そこに恋愛感情なんて無くても。

 よく考えれば横顔だけでも、求められているだけマシかもしれない。側から見れば玉の輿だろうし、こうやって趣味を仕事として与えてもらっている。アルマン様がどうしようもない変態趣味な人だという点を除けば、私は幸運なのだろう。


「ねぇダニエル……これは、アルマン様が可哀想よね?」

「うん……ジゼル様鈍いな。昨日アルマン様にあんな顔させておいて、これは……」


 私に聞こえないように、こそこそと内緒話をする二人。素敵な恋愛話じゃなくてがっかりさせちゃったのかな?


「ジゼル様はアルマン様の事好きではないのですか?」


 アネットに問われる。


「え? うん、別に恋愛感情は一切無いわ」

「好き、でなくとも格好いいなーとか素敵だなーとか少しでも思いません?」


 畳みかけるようにしてダニエルにも問われる。


「そりゃイケメンだとは思うけど……」


 女性顔負けなキューティクル艶々の漆黒の長髪。それを清潔感が出るように一つに束ねて、服装も上品。髪と同じ色の瞳はクールで、仕事中は心から格好いいと思った。ジェラルディーヌを想い恍惚な表情を浮かべる姿は……ちょっとどうかと思うけど、それ以外なら。


「……うん、変態な所だけが残念よね」


 私の返事を聞いて、大きなため息をつく二人。


「これはアルマン様苦労するだろうな」

「ええ、ダニエルに心から賛同」


 よく分からないが二人ともアルマン様に同情している。私の返事、そんなにまずかっただろうか? よく考えれば二人ともここの商会の従業員なのだから、アルマン様を変態な部分も含めて尊敬しているのかもしれない。自分の主人が変人扱いされた事で気分を悪くしてしまったのかも。


(しまった、そこまで考えて返事をするべきだった!)


「ごめんなさい。決してアルマン様を悪く言うつもりはなくて、余りにも横顔のみ偏愛してくるから……変な人だなっていう印象がとても強くて」


 私の言い訳じみた返事を聞いて、さらに深いため息をつく二人。


「これはアルマン様も悪いな」

「ええ、ダニエルに心から賛同」


いつも読んでくださる皆様ありがとうございます(*´꒳`*)♡

閲覧数と評価を励みに、糖度高めハッピーエンドを目指し日々執筆頑張ります(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ