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ジェラルディーヌは私の全て

アルマン様視点話になります(*´꒳`*)

明日からは毎日20時更新です♪

 ジェラルディーヌ三世。彼女は私の全てだ。冗談抜きで、金貨の彼女の横顔全てを私のものにしたくて、平民だった私は商売を始めた。

 どうやら私には商人としての才があったようで。立ち上げたラピエース商会はみるみる内に大きくなり、今では王室御用達。勿論平民向けの日用品などの販売にも手を抜かない。そんなこんなで、何故か男爵位を賜った。使える物は全て使う、爵位も利用させてもらってこの先もっとラピエース商会を大きくしてみせる。全ては愛おしい横顔を私の元へ集める為。




 無事商談が終わり応接室を後にする。そういえばジゼルはどこに行ったのだろうか。


 昨日の朝偶然朝市で見つけた、ジェラルディーヌ三世生き写しの横顔を持つ彼女。最近「爵位を賜ったからには奥方を……うちの娘はどうでしょうか」と女を送り込もうとしてくる輩が多くて困っていた所だった。ジェラルディーヌ三世にしか興味のない私にとって他の女なんぞ不要。商売の為に利用できる女性とは関係を持つが、所詮その程度の存在価値しかない。そっくりな横顔を持つ彼女を妻として迎え入れれば、煩わしい事が減る上に彼女というコレクションが増える。良いことづくめだ。これぞまさに運命。そう思い求婚し……まぁ途中で一度逃してしまったが、結果的に私は彼女を手に入れた。


 ジゼルは見れば見るほど横顔がジェラルディーヌそっくりで、愛しい顔が目の前に存在するという安堵感からか昨日は恐ろしくよく眠れた。今日からもジゼルと一緒に寝ようと思いつつ、商会の建物内を移動しジゼルの姿を探す。商談中は横に居られると集中できないから好きにするように伝え置いてきたが、いったい何処へ行ったのだろうか。商談中以外は手元に置いていつでもその横顔を眺められるようにしておきたいのに。


 確か靴磨き職人と言っていたから靴を取り扱っている部屋にでもいるのかと思ったが、居ない。女だからドレスが好きだろうと思って服飾を取り扱う部屋を覗くが、居ない。平民だからと思い日用品を扱う部署も確認するが、居ない。


「まさか逃げたか?」


 初めこそ逃げられたが、親代わりだという老人を人質に取れば大人しくなったし……老人の安全を守る為にも諦めて状況を受け入れているように見えたから、再度逃げられる考えはあまり無かったのだが。

 正直ジゼルの価値は横顔のみ。最悪横顔さえ守られるのであれば鎖で繋いでおいてもよいのだが……どうしようかと考えていると、財務部の部屋から歓声が聞こえてきた。


「素晴らしいですジゼル様、これもお願いします!」

「奥様ー、こっちもお願いします!」


 ああなんだ、逃げたんじゃなかったのか。早とちりして、何製の鎖にするか考えてしまっていた。


 それにしても財務部にいるとは予想外だった。もしや伝票処理や計算が得意なのだろうか? そうなのだとしたら彼女もこの商会を大きくするためにここで働かせても良いのかもしれないと考えつつ、財務部のドアを開ける。


「ジゼル、ここにいたのか……何をしている?」


 部屋中に置かれた硬貨の箱。部屋中に香るレモンの匂い。部屋の中心部にあるソファーに座り、従業員に囲まれ何かをしているジゼル。


「アルマン様、ジゼル様は素晴らしいですよ。見てくださいコレ!」


 従業員の一人が興奮した様子で私に銀貨を渡してくる。金貨じゃないならどうでも良い、と思ったが。


「……やけに綺麗な銀貨だな」


 日常的に見ている少し黒ずんだ銀貨とは全く違う。まるで手入れの行き届いたシルバー製の食器のようだ。


「ジゼル様が磨いたんですよ」

「ジゼルが?」


 彼女の手元を見ると、シルバーを手入れするための布で銀貨を磨いていた。


「アルマン様、こっちの銅貨もすごいから見て!?」


 別の従業員が今度は何か液体の入った瓶を手渡してくる。汚い水の中に銅貨と思われる物が浸かっており、なんとなくレモンの匂いがする。


「何なんだこれは……」

「なんでもレモン水に銅貨を浸けてから磨くと、こーんなに綺麗になるんだって! これが銅貨だって信じられる?」


 ずいっと目の前に出された銅貨は、確かに一瞬金貨かと思う程の輝きを放っている。


「ジゼル? コレは一体どういうことだ?」 


 従業員に囲まれているジゼルに声を掛ける。どうやら私が部屋に入ってきたのに気がついていなかったようで、驚いた顔をされるが。次の瞬間、ジェラルディーヌ生き写しの横顔を持つジゼルは、私の方を向いたまま女神の微笑みを見せた。平民らしくない、上品で花が綻ぶような笑み。淡いピンクの薔薇が徐々に色を変えながら開花していく様子に似ていて、目を奪われる。


「私、硬貨を磨くのが大好きなんです!」


 パリーンッと激しい音を立てて割れる瓶。どうやら私の手から滑り落ちていったようだ。

 強くなるレモンの匂い、慌てふためく従業員達、目線を手元に落として再び銀貨を磨き始めるジゼル、そして――横顔がそっくりとは言え、ジェラルディーヌ以外の女性に興味を持ってしまった私。


「そうか、好きならば磨けばいい」


 熱が集まってしまった自分の顔を隠しながら、そう呟くのがやっとだった。

いつも読んでくださる皆様ありがとうございます(*´꒳`*)♡

閲覧数と評価を励みに、糖度高めハッピーエンドを目指し日々執筆頑張ります(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

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