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運も才能の内、顔も天賦の才(3)

 アルマン様が手配してくれたパンを私が勧めるのもどうかと思うのだけど。本当に美味しいので、パンが入ったバスケットをアルマン様の方に寄せる。


「私の健康まで気遣ってくれるのか、ありがとう。そういえばマーガレットが、ジゼルの背に古傷があると言っていたが……もしかしてジゼルも孤児院で?」

「いいえ、私はよく覚えていなくて……。親方が拾ってくれた時には既に傷があったそうです」


 鏡で頑張って見ないと自分では見えないため普段は忘れているが、私の腰から背中にはいくつかの古傷がある。鞭、というよりは刃物で裂かれたような傷跡だが、記憶が無い為何の傷なのかはわからない。


「そうか。私のジゼルに手を上げた過去のある孤児院など抹殺しようかと思ったのだけど……」


 え、ちょっとやめてください! 顔と背中は関係ありませんから、どうか横顔以外の部分についてはスルーしてください!!


「そんな野蛮な事をする前に、今日はアルマン様を知るためにデートしに来たのですから……アルマン様の好きな食べ物でも教えてください」


 とにかく孤児院の話題を流したくて、今日の本来の目的を提示する。


「腹が満たされれば食事は何でもいい」


 はい、折角の話題転換が無に返されそうな返事来ました。


「嘘……成金でお金に困っていないのに、美味しい食事に興味が無いとか勿体無い」

「美味しい物の方がいいとは思うが、特にこれといった物は無くてね。敢えて言うなら美味しそうに食事する人を見るのが好きかな。ジゼルはパンが好きだよね?」

「はい! 小麦粉は人を魅了する魔法の粉ですからね!」


 日本にいた時から小麦製品は大好きだ。パンにお好み焼き、パスタにうどん。小麦粉は魔法の粉だと思う。……ん? 私重曹といい小麦粉といい、粉好きアピールばっかりしてない?


「ふふっ、そんな言い方すると中毒みたいだよ。他の好き嫌いは?」

「えっと、あまり好き嫌いは無いですけど、お魚料理よりはお肉料理の方が好きです」


 魚料理も好きだけど、日本にあったような刺身は無い。ムニエルや煮込み料理など、いかにも洋食な魚料理より、照り焼きなど和食の魚料理の方が好きだったので、どうしても魚より無難な肉料理を選びがちになってしまう。


「……照り焼き食べたい」


 つい口に出てしまった。ブリの照り焼き、鶏モモの照り焼き、照り焼きハンバーガー……こちらにはないあの味が恋しい!


「テリヤキ?」

「甘辛というか甘しょっぱいというか、そういう味付けの料理です。日本ではメジャーな味付けだったんですけど、こちらには無くて……。醤油とみりんと砂糖で作るんですけど、醤油ってご存知ですか?」

「いや、聞いたことがないな」


 アルマン様が知らないということは、この近辺の国では手に入らないのであろう。無いだろうと思ってはいたけど、少し残念。


「そこまでジゼルが好きなのであれば、ショウユとミリンは見つけ次第早急に取り寄せるよ。後で品物の詳細を教えてくれる?」

「はい! わぁ、こっちでも照り焼きを食べれる日が来るかもしれないなんて……嬉しい!」


 何でも言ってみるものだ。もしやアルマン様を使えば日本の食卓を再現することも出来るのではないだろうか、と期待してしまう。


「そんなにテリヤキとやらが好きなんだね。じゃぁ野菜は? 近年入ってきたトマトとかじゃが芋とか」

「大好きです! 日本にも同じ野菜があったのですが、じゃが芋とトマトは奇跡の野菜ですよ。何と組み合わせても素晴らしいハーモニーを奏でるし、単体でも美味しくて。こちらの世界にあって良かったと思った野菜の一つです」


 昨日の夕食で食べたトマトグラタンはとても美味しかった。中にホクホクのじゃが芋が入っているし、トマトとチーズは相性抜群だし、この世界で食べたグラタンの中ではダントツの美味しさだった。


「実はうちの商会が輸入して広めたんだよ。好きと言ってもらえて良かった」

「え!? もうアルマン様には足を向けて寝られませんね」


 この調子で是非様々な美味しいものをバンバン取り寄せて欲しい。そして私は奥様特権でそれをバンバン試食したい。……太らないように気をつけなくては。


「ジゼルには是非、私の横で寝て欲しいのだけど。寝相が悪いのなら足が飛んでくる事もあるかもしれないけど、三日間見た感じだと寝相も良いみたいだし、足が私の方に向くことは無さそうだね?」


 冗談めかして言われたけど、その内の一日は窓から覗いていたホラーだったよ!? と突っ込みたくなったがやめておく。そういえば昨晩はアルマン様の方を向いて話しながら寝たので、横顔を堪能出来なかったのではないだろうか? 私の横顔欲しさに結婚を申し込むレベルなのだから、堪能出来ないのは死活問題では?


「昨晩はごめんなさい。上向いて寝なかったから、横顔を眺めることが出来なかったでしょう?今日はちゃんと上向いて寝ますね」

「あのね……いや、私が悪いのか。そうだな、初日からあの態度だった私が悪い。……ジゼル、無理に上を向いて寝なくていいから。どちらを向いて寝ていても、横顔が見たければ勝手に回り込んででも見るから問題ない」


 ん? 妥協したふりして変態度上がっていませんか?

 気が付かなかったふりをしつつカフェオレを飲む。強制上向き寝を免れただけでよしとしよう。

いつも読んでくださる皆様ありがとうございます(*´꒳`*)♡

閲覧数と評価を励みに、糖度高めハッピーエンドを目指し日々執筆頑張ります(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

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