こんなにまともな内面を持った人だったんだ(2)
ノックをしてポールと一緒にアルマン様の部屋に入る。一人で来るのが怖くて、結局ポールにも一緒に来てもらった。
「……ジゼルだけで良かったのに、何故ポールと一緒に来る?」
入室した瞬間から、アルマン様は大変機嫌が悪そうだった。夕食を共にした時は機嫌良さそうだったのに……何があったのだろう?
「何故と言われましても、先程までずっとジゼル様と一緒に広間にいましたので」
ポールが微妙に的外れな回答をし、それを聞いたアルマン様が更にムスッと膨れている。
「そんなに怒らないでください。アルマン様の事で相談を受けていたのですから。」
「私の事で相談?」
「ええ、ですのでただの執事に嫉妬しないでいただけますか?」
ぽんっとポールに背中を押される。うぅ、自信無いけどここからが私の仕事!
「私、もっとアルマン様の事知りたくて……明日一緒にお出かけしたいです」
私はあえて、横顔を使わなかった。ポールにも相談して決めた事なのだけど……必殺技というのは多用するべき物ではない。それに、本当にアルマン様を好きになってしまったら……きっと私は自分の横顔に嫉妬してしまうだろうから。私の横顔を通じてジェラルディーヌを見ている事が、嫌になってしまうだろうから。横顔抜きで、この人と向き合いたいと思った。
「いいよ。なんだ、そういう事ならポールではなくて私に直接言えばいいのに」
あまりにもあっさり認められたので、拍子抜けしてしまう。機嫌が悪そうだったのも直ったようだ。ポールが「ね?大丈夫だったでしょう?」といった視線を送ってくる。
「ポール、明日の仕事の予定ずらしておいて」
「もう先方にも連絡済みです。アルマン様ならデートを優先させると分かっていましたから」
「相変わらず仕事のできる奴だ。それで、ジゼルは何処に行きたい?」
全て丸投げするつもりだったので、考えていませんでした。この世界でデートなんてした事がないから、どこに行くべきなのかよく分からない。
日本なら……公園? いやいや、中学生じゃないんだから! ……カラオケ? いやいや、高校生じゃないんだから! もっと大人が行くような場所は……ホテル? マーガレットさんに妊娠するなよって言われたばっかりだって!!
自分の発想力の無さに驚きました。諦めて白旗を振ることにします。
「デートなんてした事が無いのでよく分からなくて……アルマン様にお任せします。言い出しは私なのに、ごめんなさい。お散歩とかでも大丈夫ですから」
私の回答に少しだけ目を見開いて。すぐにアルマン様は嬉しそうに笑った。
「初めてのデートの相手が私なのは嬉しいね。成金相手にお散歩でいいとか言ってきたのはジゼルだけかもしれない」
チクリと何かが胸に刺さったような気がした。……私は初めてでも、アルマン様は初めてではない。ジェラルディーヌしか見ていないアルマン様でも、他の女性とデートくらいしているという事か。きっとこんな小娘より素敵な女性達と。平民なんかではない、身分もきっちりしたレディー達と。……何をショックを受けているのか。趣味は変態だけれどもイケメンなのだから、それくらい分かっていた事。
胸の痛みを誤魔化すように、にっこりと……作り笑いをアルマン様に向けた。
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