(有)大魔王宅配便
目の前にあるダンボールに手をかけると、ごくり、と喉が鳴った。
伝票の品名の欄には「大魔王」と書かれている。自分で頼んだのだから間違いないはずなのに、何故かびくっとして、伝票を二度見してしまった。
慎重に、ダンボールのテープを剥がしていく。何しろ中身は「大魔王」だ。まかり間違ってここで機嫌を損ねて、世界を一瞬で灰に変えられてしまったらたまったものではない。
剥がしたテープを乱雑にまとめてダンボールの脇に置く。いよいよだ。
箱を開ける。
…何も起こらない。
…え、これって、箱を開けると煙と共に大魔王登場!とかじゃ、ない、の…?
…ひょっとして、大魔王が羽毛布団みたいに真空パックになってるとか!?
恐る恐るダンボールの中を覗き込む。
すると、小さく丸まった生き物らしきものが、すうすうと寝息を立てていた。
…ちっさ!!!
肌の色は紫だし、確かに見た目は「大魔王」な雰囲気がある。でも、小さい。そして何だか、イメージしていたよりも幼い。
ここで俺はようやく、生き物と共に小さな紙が入れられているのを発見した。起こしてしまわぬように、慎重に紙を抜き取る。
ーーー
【納品書】
品目 大魔王
品数 1
詳細 大魔王の赤ちゃんをお届けします。お世話を怠ると言うことを聞かなくなりますので、ちゃんと可愛がってあげてくださいね!
ーーー
その他、食事の頻度、排泄物の片付け方、体調を崩した時の対応の仕方…いわゆる「お世話の仕方」が、事細かに書かれていた。
…え、何これ!「育ゲー」ってことなの!?
でも、ここ、現実世界だよね!?
てか、「大魔王の育ゲー」って、何!?
訳の分からないことが多すぎる。
箱の中身をもう一度覗く。大魔王(仮)は、そんな俺の動揺など何処吹く風といった様子で、気持ち良さそうに眠っていた。
…本当は、「よし、いっちょ大魔王に気に食わないやつでも滅ぼしてもらっちゃうか!」みたいな気持ちで、いたんだけど。
というか、そもそも本当に大魔王が来るとは思ってなかったんだけど。現実にはいないし、大魔王。
更に言えば、それが生まれたての大魔王(仮)だなんて、想像もしてなかったんだけど。
「…買っちゃった以上は、最後まで面倒見なきゃ、ダメだよなあ」
こうして、俺と大魔王(仮)との奇妙な共同生活が始まった。
当初、タイトルは「(株)大魔王宅配便」だったのですが、家族に「そんな会社の株、誰が買うの?」と言われたので、「(有)大魔王宅配便」となりました。




