08:骸の夢
ペラペラと、喋り続ける声が、頭の中で響き続ける。
「っ」
何かから逃げるように飛び起きた。呼吸が荒く、汗も酷い。
何か、とてもじゃないが、許容できないような嫌なものを見た気がするのだが、何も思い出せない。
小さく氷を作って、砕いてを繰り返す。
このまま寝ないでいた方がいい、そんな考えが頭をよぎったが、こんな訳の分からない状況で睡眠不足を起こすのは危険過ぎると考え直す。
荒くなった息も落ち着き、周りを見る余裕が生まれた。
そういえば、テンシという男はどこに行ったのだろうか。本当に私を寝かしつけるだけ寝かしつけてどこかに行ったのか?
魔物に噛まれた傷はどこにもない。あの男は空から降りて来た。空を飛ぶ能力だけならともかくあの治癒能力は何だ。二つの能力を持った人間だとでもいうのだろうか?いや、そもそもあれは人間か?
答えの出ない思考に終わりはなく、考え続けていると眠くもならない。私は思考を放棄し、ただあの男の容姿が良かったことだけを考えた。
まぁ、カッコ良かったのは事実だし。
無表情の女がこちらを見ている。
頬に痛みを感じれば、ガタイのいい男がこちらに向けて拳を振り抜いていた。
足元に痛みを感じれば、ヒョロい男が手の平をこちらに向けて、火の玉を飛ばしてきていた。
無表情の女はただ詰まらなさそうにしている。
ガタイのいい男はただここから出て行くことを強要する。
ヒョロい男はただこちらを痛みつけて笑っている。
気味の悪い三人だ。
どうして自分に構うのだろうか?
また、目が覚めた。どうにも寝付けないらしい。夢を見ていたらしいが、覚えていない。最低の気分なのは同じだ。
ぼんやりと周りが明るくなってきた。今日はもう眠らない方がいいだろう。