71:空は今日も青い。
晴れやかな、しかし派手過ぎない衣をまとった狐たちが静かに歌い、踊る。
その艶やかさに人間は目を奪われ、例え魂を抜かれてしまったとしても気が付かないだろう。
今日の肴は人の子か?まさか、天使の目の前で。
今宵は我らの晴れ姿を彼らに魅せるのみ。飲んで、踊るもそれは生の証。
彼らには我らの『歌』を刻ませてもらおう。
狸たちのものに比べればずいぶん静かな、しかし、心を掴んで離さない祭りが始まる。
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「ほらほら、ネシアー。ちゃんと楽しんでるー?」
テンシがぼんやりと狐たちの姿を見ていると、調子の良さそうなお福に話しかけられた。
彼女は酒瓶片手にふらふらと歩いているらしい。
「あーうん。楽しんでるよ」
「ほんとぉかなー?顔が暗いぞー」
お福はうりうりと、テンシの頬をつつく。テンシは困り顔でそれを受け入れた。
「アマリアはあんなに楽しんでるのにー」
お福の視線の先には、狐たちに混じって歌っているエイメルの姿があった。
「うん、あの適応力の高さは僕も見習いたいね………」
「ネシアとアマリアって、結構な仲良しさんだよねー」
「まぁ、そうかも」
テンシがエイメルを遠い目で見ていると、お福が先ほどよりも小さな声で話し出した。
「付き合いはどれくらいになるのー?」
「えーと…………一週間くらい、かな?」
「えぇー?もっと長いのかと思ったよー」
テンシの言葉に目を丸くするお福。しかし、テンシ自身も、エイメルとの付き合いの短さに驚いていた。
まるで長い間、同じ道のりを共にしたような気がしていたのだ。
「なんか、想像以上に相性良いみたい」
「ん-、そうらしいねぇー」
テンシとお福、二人揃って首を傾げる。
温かな歌声が静かな村の中で響いていた。
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暗く、冷たい森の中。
温かな音が流れ込んでくる。
「ふぅ」
ため息だろうか。
自分でもよく分からなかった。
空は青い。恐らく明日も。
今日も何も見つからなかった。しかし、そこにあることは理解している。
いつか、必ず見つけられるだろう。
「こちら、A10。報告を始めるよ」
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