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新生天使は救えない  作者: yosu
第三章 救いたいもの
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60:


 シャステーレは男へと瞬時に肉薄する。男は多少反応できたようで腕を上げて頭を守った。

 彼女はいつも通り腹部を殴り抜く。


「ぐっ」


 しかし男はそれでも膝をつかず、腕を上げて戦う意思を見せた。


「ほう?悪くない」


 シャステーレは少しだけ笑って、また男へと接近する。男はそんな彼女に向けて拳を振るったようだった。

 その拳はシャステーレに弾いて流され、守りの無くなった男の左下から、彼女の拳が彼の顎を擦った。


 男は彼女の拳を受け、かくんと膝から力が抜けたように倒れ込んだ。


「えっと、無事なんですかね?」

「知らん」


 ふぅ、と満足げに息を吐いたシャステーレへとティルシーは話しかけた。


「この人、どうします?」

「お前が起こせないか?」

「まぁ、そういうならやってみてもいいですけど、普通に待った方がいいと思いますよ?」

「そうか」


 ティルシーは男の体に触れ、とりあえず生きていることを確認した。どうやら気絶しているらしい。

 彼はしばらく放っておけば起き上がることができるだろう。


 その様子を見ていた使用人がパタパタと慌てた様子で走っていった。

 二人がしばらく待っていると、小太りの男が走ってやってきた。


 慌ただしいなぁ。

 ティルシーは荒らした本人であるシャステーレが呑気に整理運動をしているのを見ながらそう思った。


〜〜〜〜



 シャステーレに殴られた男はしばらくしてから意識を取り戻した。


「どうすれば貴女のように強くなれるでしょうか?」

「知らん」


 意識を取り戻した男は、あれだけ大きな態度を取っていたのが嘘のように、シャステーレに教えを乞いていた。


「帰っていいか?」

「ええ、ありがとうございました。こちらをお受け取り下さい」


 シャステーレは小太りの男に一枚の紙を貰って、館を出ていく。

 ティルシーは男たちに一礼してからその場を去った。



「それなんですか?」


 ティルシーはシャステーレが受け取った一枚の紙きれを指した。


「依頼の達成を示している」

「あー、なるほど」


 二人はまた雨具を羽織って、冒険者ギルドへと戻っていった。


 冒険者ギルドへと入ると荒くれ者たちの視線が突き刺さる。

 ティルシーは冒険者ギルドの中に居る人が増えたように感じた。恐らく雨を凌ぐ場所としてここは適しているのだろう。


 ティルシーはシャステーレと一緒に受付カウンターへと向かった。


「お帰りなさい、依頼達成かしら?」

「そうだな」


 シャステーレは受付の女性にその手に持った紙を渡した。受付の女性はそれを受け取ると、彼女の手元にある紙束の中から一枚の紙を取り出し、席を立ってギルドの奥の方へと歩いていった。


「何の時間ですか?報酬をここで貰うんです?」

「多分な。報酬を渡す場所と依頼を受ける場所で分けているギルドもあるが、ここは違うらしい」


 受付の女性が帰ってくると、シャステーレに袋に入った硬貨を差し出した。

 シャステーレはそれを受け取って冒険者ギルドを出ていく。

 ティルシーもそれについて行った。


「それで、次は何するんですか?」

「消耗品を買い揃えたらこの町を出るぞ」

「おー、またしても行くあての無い旅が始まってしまうわけですか」

「いや、少し魔物の様子を見ていこう」

「この辺りの魔物ですか?」

「そうだな」


 ティルシーはシャステーレの表情から真剣であることを感じ取り、茶化すのをやめて真面目に会話することにした。


「シャステーレさんは家族とか居ないんですか?」

「……居るが、どうかしたのか?」

「その人たちのところに行かなくていいんですか?魔物に襲われてしまえば、もう会えなくなるかもしれないですよ」

「………そうだな、帰って、みるか」

「そうと決まれば善は急げです!空を飛んでピューッと行っちゃいましょう!」

「いや、その前に消耗品を買い揃えてこの辺りの魔物の様子を見てからだな」

「この辺りの魔物の様子を見て何か分かるんですか?」

「どの程度奴らが回復するのか見ておく必要がある」

「うーん、まぁ、そういうなら見ておきますかぁ」

「そうだな」


 雨の中、シャステーレはカナリビの町を早足に歩いていく。

 ティルシーには彼女が少しだけ機嫌良さそうに見えた。

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