52:雨降る町
ビルとは、この国の貨幣です。
100ビル=100円くらいの価値の大変分かりやすい貨幣です。
テンシは高額な依頼にあまり良いものが無いことを確認すると、渋々値の低い依頼を眺め始めた。
しかし、どれも低額な割には面倒そうなものが多い。やはり割のいいクエストというのは並んでいないのだろう。
そうテンシが諦めて、何でもいいから依頼を剥がそうとしていたときだった。
『なんか、変な雨降ってません?』
テンシの半身である、ティルシーから念話による連絡が行われたのだ。
「雨?」
テンシがギルドの中から外の様子を伺うと、確かに雨が降っていることが確認できた。
なんだろう、何か、変な感じ。
彼にはその雨はどこか普通とは違うものに感じられた。
「なんだ、外に珍しいものでもあるのか?」
ダッタルも彼に釣られて外を見た。しかし、彼の眼には特に不思議はないようで、ただ首を傾げただけだった。
テンシは自身の中に生まれた疑問を解消するためにギルドの出入り口の方へと歩いていく。彼は雨に近づけば近づくほど、その雨の通常とは異なる部分に気が付いていった。
『ティルシー、雨には打たれた?』
『はい、ちょっとですけど当たりました。何か変だと思ったので今はシャステーレさんと一緒に建物の中に居ますけど』
『そっか、彼女も一緒なら心強いね』
『それ、シャステーレさんの信用度が高いんですよね?半身である私の信頼が無いわけではなくて』
『ははは、もちろンだヨ』
半身と軽口をたたきながらその雨を観察していく。
『体に何か異変とかなさそう?』
『今のところはないですね。ただちょっと気になることがありまして』
『気になること?』
『はい、その雨の成分なんですけど、どう考えてもただの水と埃じゃないんですよね。なんというか、流行り病の抗体作ったじゃないですか。あれに似てる感じがするんですよね』
『病気の抗体?そんなものが雨として降るってどういうこと?』
『どういうことなんでしょうね。コロンセントさんもこれについては何も言ってなかったですし、彼女の仕業ではないような気がします。………まぁ私がそう思うのはもう一つ理由があるんですけど』
『シャステーレさんが何か言ってた?』
『はい、そうなんです。何か、天使がどうのって言ってて』
『それ解読不能なの?』
『うーん、今は考え事してるらしくて、とりあえず天使に関わりがありそうってことくらいしか分からないです』
『そっか。……とりあえず、雨が止むか、僕が我慢できなくなったらコロンセント王のところまで行こうかな。そっちも何か分かったら連絡して』
『はい、分かりました』
テンシは念話の回線を落とし、短くため息を吐いた。
息つく暇もないな。
どうにも、ゆっくりと冒険者デビューをしている場合じゃないらしい。
彼は雨を観察していると、妙な不安に襲われた。その正体を探るために彼は少しだけ目を瞑って考える。
そして、目を開いて念話の回線を開き始めた。今度は半身へではなく、置き去りにしてしまった彼女へと。
依頼が決まらないね!バカなの?迷ってる時間はないよ!
さっさと依頼を決めて早く初仕事に出かけましょう!
と思ったら何か異様な雰囲気、大丈夫なのかこの世界!?
編ですかね。
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