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サブタイは案の浮かんだときだけ書こうと思います。
大柄で顔の怖い男、ダッタルと共に、テンシは冒険者ギルドで初めての依頼を受けようとしていた。
「さっきも説明した通り、割のいいクエストは朝の争奪戦に勝てなきゃ受けられない。この時間からじゃうまいクエストは貼られてねぇ」
「うん、そうみたいだね」
割のいいクエスト、とは、単に報酬が良いというだけでなく、その依頼の難易度に見合った報酬がきちんと払われているクエストを指す。
初心者はその難易度を見誤ってしまうことが多い。
簡単なクエストだと考えていたら実は難しいクエストで、依頼達成だと思って報告したのにまだ達成条件に到達していないので、依頼のやり直しになってしまう。しかし、依頼を受けた冒険者が達成条件を満たすことが不可能な場合がある。そもそものクエストの難易度が本人の実力に見合っていないときだ。
その場合、クエストを受けた冒険者は自分で依頼を取りやめるまで、その依頼を受け続けていることになる。そして、大抵の冒険者はずるずると達成困難な依頼を抱えて生活に窮したり、精神を病んで、冒険者をやめてしまうのだ。
簡単に言うと「クエスト受けたけど全然クリアできない。攻略法も分からんしもう冒険者やめる」という状況になる。
そんなことにならないように、ギルドの職員も冒険者のクエスト受注には最大限気を使っており、達成困難と推察される場合はその冒険者に注意をしたり、場合によってはクエストを受けさせないこともできる。
とはいえ何もかも上手くいくはずもなく、未だ初心者がそのまま順調に冒険者としてやっていける可能性はあまり高くない。
テンシはダッタルから聞いた話を元に自身に受けられそうなクエストを探していく。テンシの目に映るのはどれも高額の依頼ばかりだ。
『
報酬:20万ビル 依頼内容:サンテム(町の名前。ここからすごく遠い)の帽子(その町の特産品。予約待ちで入手が難しい。そもそもどんな帽子か聞く必要がある)を買ってきてほしい。
報酬:10万ビル 依頼内容:村の魔物を倒してほしい(内容がおおざっぱ。どんな魔物かも分からない、魔物の討伐依頼としては安い)
報酬:30万ビル 依頼内容:実験に付き合ってほしい(無事に帰って来た者はいない)
』
しかし、その依頼の内容は大抵報酬に釣り合ったものではなく、テンシは肩を落としていた。そんな彼の目に一つの依頼が映る。
『
報酬:5万ビル 依頼内容:娘の話し相手になってほしい
』
彼はその依頼票を掲示板から丁寧に剥がし、その依頼内容を確認し始めた。
「どうした兄ちゃん。それ受けるのか?」
その様子を見たダッタルはテンシの手元にある依頼を見て眉を顰める。
「うーん、そいつはやめといた方がいいと思うぜ。確かどっかの金持ちのとこの娘さんが冒険者に話を聞きたくて依頼したって話だったと思うが。……確か、今まで向かった冒険者たちは家に入れてもらうことすら難しく、仮に家に入れたとしてもその娘さんを満足させられなきゃ依頼達成にはならなかったって話だ」
「……それ、冒険者じゃなくてもっと話上手な人に頼んだ方が良いよね」
「俺もそう思うよ。こいつに関しちゃ金持ちの道楽以外になんにもねぇ」
「うーん、そっか。じゃあとりあえずやめとこうかな」
テンシは手に持っていた依頼票を元の場所に貼り直し、他の依頼に目を通していった。
「依頼貼り直すやつなんざ初めて見たぜ………」
ダッタルはそんな彼の様子を物珍しそうに眺めていた。
冒険者ギルドに入った新人天使、初任務、初クエスト?どっちでもいいけどお仕事だよ!
編です。サブタイ付けるならそんな感じですね。