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新生天使は救えない  作者: yosu
第二章 そこに住む人々
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50:テンシの懐事情 2


 冒険者ギルドを探すこと数分、案内板や人の流れなどから簡単にその場所は見つけられた。


「おぉー、雰囲気あるなぁ」


 冒険者ギルドという文字の書かれた看板には幾つかの傷が付いている。少なくとも新しいものではないのだろう。

 とはいえ清掃は行き届いているようで汚れている様子はあまりない。

 ドアを開けて、中へと入ると荒くれ者たちの視線が突き刺さる、ということはなく物音がしたのでこちらを見たくらいの温かい(個人差はあると思う)視線があっただけだった。


 温かな視線の中、冒険者ギルドの中を進んでいく。カウンターらしき場所には二人の女性が座っており、一人は対応中のようなのでもう一人のところへ向かった。


「いらっしゃいませ、ご依頼ですか?」

「いや、冒険者として登録したいんだけど、登録料とか掛かるかな?」

「はい、新しく登録される場合は300ビルを頂いております」

「あー、ビルかぁ。こっちのお金じゃないとダメかな?」

「もしやアライエアからですか?イアですと少し高めになってしまいますけど登録は可能ですよ」

「ううん、デレーティから来たんだ」

「デレーティ、ですか?……よく無事にここまで来れましたね」

「えっと、結構平気だったけど………」

「へぇ、そうなんですか。意外と今はデレーティも感染者は少ないんですかね」

「えっと、シマは使えない?」

「そうですね。今はシマですと厳しいですね」

「そっか」


「おいなんだ、新規登録料も払えないやつがいるのか?」


 受付の人と話していると目つきの悪い大柄の男が後ろから話しかけてきた。


「あぁ、ダッタルさん。彼なんですけど、デレーティから来たみたいでビルが足りないそうなんですよ」

「デレーティからぁ?おいおいそんな感染者だらけの国からよくもまぁここに来たもんだよなぁ!」

「えっと、うん」


 大柄の男にバシバシと背中を叩かれる。


「おいおい、元気なくないか?病気には掛かってないんだろうなぁ?この町ならすぐに医者に診てもらえるから倒れる前に早く診てもらえよ?まぁそれにも金がかかるんだけどな!」


 男はガッハッハ、と笑いながらまた僕の背中を叩いた。


「新規登録料って借りれたりしない?」

「んー、そうですねぇ。300ビルくらいでしたら別にいい気はするんですけど、基本的に新規登録料の貸し出しは無しになってるんですよね」

「ガッハッハ、安心しな兄ちゃん!あんたツイてるぜ!なんたって俺がいるときにここに来たんだからよぉ!」

「えっと、何かな?」

「300ビルくらい出してやるって話だよ、なんだよ察しが悪いなぁおい」

「それはありがたい話だけど、えーっと遠慮しておこうかな」

「おいおいおい、そんな連れねぇこと言うなって、貰えるもんは貰っとけよ。なぁカルウィちゃん?」

「そうですね、ダッタルさんは顔も怖いし口調も怖いですけど、悪い人ではありませんよ」

「ガッハッハ、ひでぇ言われようだぜおい」


 受付の人と仲良く喋る大柄の男。信じてもいいものだろうか?


「えっと、じゃあお願いしてもいいかな?ダッタルさん?」

「おう、任しときな!300ビル払えない程度で新人冒険者を見過ごすなんて勿体ねぇ真似はさせねぇ!」

「う、うん。ありがとう」


 男が受付の人にお金を渡すと、彼女は一枚の紙を取り出した。


「はい、ではダッタルさんは彼の登録が終わるまで静かに待っていて下さいね」

「おう!もちろんだぜぇ」


 男は笑いながら去っていった。周りの冒険者は「なんだまたか」と言った反応で特に珍しがっている様子もない。本当にただの良い人なんだろうか。


「ではお名前を聞かせていただけますか?」

「うん、名前はテン……」


 テンシ、と名乗ろうとして少しだけ考える。

 天使について知っている人がいるときに死ぬほど不便な名前じゃないか、と。いや、今更と言ったら今更だが。

 ビレービィやシーラに疑問に思われなかったからあんまり考えてなかったけど、冒険者として名前を登録するなら別のものの方が良さそうだ。


「テンシンって言います」

「はい、テンシンさんですね」


 うん、我ながら見事なネーミングセンスだ。死んだ方がいい。


「テンシンさんは何か得意なことなどございますか?」

「傷の手当とか得意です」

「へぇ、珍しい。…………とりあえずはこれで大丈夫です。あとの詳しいことはダッタルさんに聞くと良いですよ」

「うん、分かった」


 冒険者登録は、受付の人に身分証明書のようなカードを渡されて終了した。

 カードを持って受付から離れると大柄の男がどたどたと走って来る。


「おうおう兄ちゃん。初心者登録おめでとさん!」

「うん、ありがとう。冒険者についてはダッタルさんに聞くといいって言われたんだけど、まずは何をすればいいのかな?」

「ハッハ、相変わらずちょっと適当だなぁカルウィちゃんは」

「そうなの?」

「おう、その隣にいるレジーナちゃんだったらちゃんと説明してくれたと思うぞ。まぁ確かに、どうせ俺が説明するから必要ねぇっちゃ必要ねぇんだがな」

「そうなんだ」

「おう。………まずは依頼の受け方からだな」


 男は粗雑そうな見た目や言動とは反して、依頼を受ける時間帯の注意や依頼を受けるときの他の冒険者との取り合いに関する注意点など、丁寧に説明していく。

 僕はそんな男の様子を見てほっと胸をなでおろした。

タイトルを変えました。

旧題は「無能だと言われて死ぬまで虐げられてきたけど転生したら救世主になったので無双します。」です。

うるさいですね。

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