49:テンシの懐事情
今日の分は無いようなものです。
「シャステーレさーん、ちょっとは私のこと心配してくれましたかー?」
「煩い、寄るな」
ベタベタとシャステーレに引っ付いている半身のことは放っておいて、僕は一人で町を歩くことにした。
フールラのこともあるし、学校について何か情報を集めておきたいのだが、何せお金がない。
今まで通り治療行為で稼ぐのは、感染者の少ないこの町では難しいし、どうしようか。
というか、デレーティの方で使っていたお金をこの国のお金に替える場所とかあるんじゃないか?
「あ、そこの君ちょっといい?」
「……はい?私ですか?えっと、なんでしょうか?」
「デレーティの貨幣が余っててさ、この国の貨幣と替えるような場所知らない?」
「あぁ、あっちから逃げてきた人ですか。こっちにはそういうのはないですね。国境近くにはあったんでしょうけど今はあっちの貨幣価値下がってますもんね、変えずに持ってたんですか」
「あー、うん、そうなんだよね。こっちにもうちょっとマシなのあるかなぁって思ってたんだけど」
「んー、難しいと思いますよ、そういうのは。お金に困ってるなら素直に働いた方がいいかもしれないですね」
「そっか、ありがとね。何かお礼した方がいいよね?」
「別に構いませんよ。今は色々と大変な時期ですし」
「………そっか、ありがとう」
「いえいえ」
通行人に声を掛けてみたが、どうやら難しそうだ。
というか、半身に「金と欲望渦巻く町」くらいに言われてたから一体どんな魔境だと思ってたけど、意外と悪くない町だ。さっきの人も優しい人だったし。
さて、働いた方がいいそうだけど、どうしようか。そういえば冒険者ギルド的なのあったよね。いや、名前もそのまま冒険者ギルドだったかもしれない。
一攫千金ならそういう場所じゃないかな?少し探してみよう。