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新生天使は救えない  作者: yosu
第二章 そこに住む人々
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46:半身の裏話


 結論から言うと、シャステーレから逃げ切ることはできなかった。というか走ってる最中に我に返ったのだ。早くティルシーに話を聞こうと。


 だから彼女の拳を防いだ腕が痛いのは仕方がない。うん、仕方がないんだよ。


「とりあえず何があったのか話を聞かせてもらおうかな」

「はい、分かりました。ところでその腕大丈夫です?」

「大丈夫じゃないからほっといて」

「…………とりあえず、話しますね」




~~~~



「付いてきていただけますか?貴女と話がしたいのです」


 その言葉を額面通り受け取るべきではない。そんな第六感が働いているようだった。


「話、ですか」

「はい、天使と話ができるのなら色々と聞いておきたかったんですよ。…………立ち話もなんですから私の城まで来ませんか?」

「私の、城?」

「はい、お城です。なにせ私この国の王様ですから」

「え……全然見えないですね」

「ふっ、くく」

「あ、気に障りましたか?」

「いえ、少し珍しかったもので。特に気にはなりませんよ」


 目の前でクツクツと笑う女性は高貴な存在なのだとは感じるが、この国の王様とは思えなかった。


「それで、付いて来ていただけますか?」

「はい、いいですよ」


 そうして、私は軽々しくこの怪しい女性に付いて行ってしまったのだった。


~~~~


 私はコロンセントの後を何も考えずに付いて行って、そして城内を「豪華なところだなぁ」くらいに眺めながら歩き、客室に案内されていた。



「まずは、どうしてこの町にいらしたのか聞いてもいいでしょうか?」

「どうして、ですか。特に理由はないのですが、しいて言えば相方の勘ですかね」

「勘、ですか。……中々侮れないものですね」


「では、次に、貴方たちは人間の成長についてどうお考えですか?」

「人間の成長ですか。ん?……あなたたちってなんですか?」

「貴方たち天使の総意ですよ。貴女も個別の思考を獲得したとはいえ、完全に接続がなくなったというわけではないのでしょう?」

「…………」


 個別の思考?接続?何の話をしているのだろうか。


「え、貴女もしかして分からないの?天使なのよね?」

「えぇーっと、私って天使の中でもかなり異質な存在らしくて」

「天使なのに他の天使と繋がってないの?」

「はい」

「………ちょっと冗談を言ってみて?」

「冗談、ですか?えっと、あそこにある絵すごく綺麗ですね。……まあ私は絵の価値なんて分かりませんけど」

「……………そう。もしかして、いえ、もしかしなくてもかなり珍しいわよね、これ」


 彼女は無表情で、なにやら考えごとをしている様子だ。


「あの、期待に応えられない感じだったんですかね、私」

「いえ、そういうわけでもありませんよ。竜退治に出かけたら神に会ってしまったような感じです」

「分かりにくい例えですね、それ」

「ふふふ、そうかもしれませんね。では質問を変えましょう」


 彼女はすぐに笑顔に戻ると話を続けた。


「あなたは一体何者ですか?」

「天使の紛い者、みたいな感じですかね」

「それは貴女の言葉ですか?」

「私の言葉というよりは私に掛けられた言葉ですかね」

「では、貴女の言葉で貴女のことを表していただいてもよろしいですか?」

「えっと、そうですね。自分の言葉で」


 この場合は、救世主というのが正しいんだろうか。


 いや、きっと違うのだろう。確かに私たちは二人で一つだが、救世主は一人でいい。


「私は、そうですね。自由な旅人って感じです」

「………はい?」


 望む言葉からかけ離れていたのか、彼女はきょとんとした顔を浮かべた。

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