41:行方知れずの半身
「おい貴様、根暗そうな女を見なかったか?」
「あぁ?んなもん見てねぇな」
「これ、埒が明かないんじゃないかな?」
「……そうだな」
シャステーレがティルシーを見失った場所の周辺で聞き込みをしているが、そもそも相手がまともに話すとも限らないし、非効率的だ。
「何か案はあるか?」
「案ねぇ……」
聞き込みは良い作戦とは思えないといっても、他に案が浮かばないので聞き込みをしていたのだ。自分の方で収穫がなかったのでシャステーレと合流したのだが、どうやら彼女もダメそうだ。
何か彼女の行方についてヒントがあるといいんだけど。
「そういえば、今の王様には悪魔が憑いてるって話を聞いてたな」
「……何?」
「売り子みたいな格好した女の子に職場まで連れてかれて話を聞いたとか言ってた」
「そいつに話を聞いてみるか」
「ティルシーの行方とは関係ないんじゃない?」
「ここに居ても何も分からないのは変わらないからな」
「行動あるのみってことね」
「そうだ。……場所は分かるんだろうな?」
「それがさっぱりで」
「……派手な格好をした女の働いているどこかの店ということしか分からないのか?」
「静かな男の人が経営してる酒場らしいよ」
「また、聞き込みか……」
「シャステーレさん苦手そうだし休んでれば?」
「そういう訳にもいかん。私はこの辺りで聞き込みをするからお前はまた別の場所へ行け」
「了解、分かったらどうする?」
「さっきと同じだ。この町に居ることは分かっているのだから探せばすぐに見つかるだろう?」
「んー、まぁ、そうかもしれないけど、頭の中に声が響くのが嫌じゃなければ念話っていうやつ試してみない?」
「……なんだ?それは」
「ちょっと頭触るね」
「む……」
シャステーレの頭に触れて念話の回線を通す。なぜか弾かれそうになったけど、どうにか通した。
『もしもし、聞こえる?』
『んぅ、不愉快だな、これは』
「まあまあそう言わずにさ、僕に話しかけるつもりでやってくれれば声届くから」
「仕方がない、付き合ってやろう」
そうして、シャステーレと別れてカナリビの町で再度聞き込みをすることになった。
「やぁ、そこの君、少しいいかな?」
「は、はい。何でしょうか?」
「静かにお酒が飲める場所知らないかな?寡黙な店主がやってるらしいんだけど」
「えぇと、そこは知りませんけど、他にいいお店なら知ってます。良かったら一緒にどうですか?」
「あぁ、ごめんね、今はそのお店を探してるんだ」
町行く人々に声を掛けているが一向に情報が出てこない。
あまり知られていないお店なのだろうか?
「あ、そこの君、少しいい?」
「はーい、何でしょうか、ってこの前の天使さん?」
「え?会ってないと思うけど」
派手な格好の女の子に声を掛ける。肌の露出が多いので男の人によく声を掛けられそうだ。
「あれ?本当に会ってません?私ですよ私、カラプルです」
「んー、もしかして寡黙な店主のいる酒場で働いてる?」
「そうですそうです!いやー、覚えててくれてるじゃないですか」
「ふむふむ、なるほどなるほど」
「えっと、私のことじっと見て、どうかしました?」
『もしもし、シャステーレさん、ティルシーに話をしたと思われる女の子を見つけたよ』
『……了解した、場所を教えろ』
シャステーレに今いる場所を伝えていく。
「もしかしてこの前と姿が違うのは私を襲うためだったり?いやーん、怖いですねぇ」
「ははは、確かに怖いかもなぁ」
「……えーっと、嫌な予感がするんですけど、もしかして本当に何かするつもりですか?」
「いや?僕はただ話を聞きたいだけだよ」
「そう、ですよね?……でも、私の……としての勘…………た方が……………ってるん、です、よ、ね」
恐らく最速でここに向かうためだったのだろう。
家々を飛び越えて、屋根の上を駆けて、僕たちのすぐ真横にシャステーレが飛び降りてきた。
「……貴様、悪魔だな?」
そして、シャステーレはカラプルを見ると静かに口を開いた。