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新生天使は救えない  作者: yosu
第二章 そこに住む人々
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40:金の回る町 3



 時刻は夜、場所はカナリビの町。私はカラプルと別れてシャステーレを探していた。


『今からそっち行くよ』

「えっ、こっちに来るんですか?」


 テンシと名乗っている方の自分から連絡があった。

 今では普通に会話ができてしまうほどに彼との分離が進んでいる。


『何か困ってるみたいだし』

「まぁ、確かに少し困ってますけど、シャステーレさんと会って大丈夫なんですか?」

『うーん、まあ、多分……』

「不安ですね」


 とにかく彼は彼でシャステーレを探すらしい。出会った瞬間に殴られたりしないといいけど。


 ふらふらと歩いていると、煌びやかな服を着た女性を見つけた。薄暗い路地へと入っていくその女性が気になり、後をついて行く。


「わたくしに何か御用ですか?」


 女性が立ち止まり、前を向いたまま声を掛けてくる。


「こんな夜遅くに、女性一人で歩いていたものですから少し心配になりまして」

「なるほど、それでしたら心配は要りませんよ。むしろ貴女の方が心配です」

「私の方が心配?」

「えぇ、だって天使の貴女がふらふらと私の町を歩いているんですよ?」


 夜の冷たい風が頬を撫でる。会う人会う人に天使だと言われるのはいつも通りだが、今回は少し雰囲気が違う。

 敵視されるわけでも、警戒されているのとも違う。

 喜ばれているような、そんな感じがするのだ。


「付いてきていただけますか?貴女と話がしたいのです」


 こちらを振り返ったその女性は、私の顔を見て薄く笑った。




〜〜〜〜



 シャステーレという女性については彼女からある程度共有されている。

 鋭い目つきにその背格好の高さから威圧的な印象を覚えやすいが、中々気の良い人らしい。


「お、あの人がそうじゃないかな?」


 賑やかなカナリビの町を冷めた瞳で見ながら歩いている女性が居た。

 その女性は僕が声を掛けようと近寄る前にこちらに気が付いたようで、僕の方に近付いてくる。


『近付いたときに殴られないといいですね』


 彼女に言われた言葉が頭に浮かんだ。

 いや、まさかね。


 シャステーレは僕に近付いて来て、




 その拳を僕の顔めがけて振るった。


「っぶな!」


 間一髪のところで後ろに跳んで回避する。


「ほう?いい反応をするな」

「い、いや、びっくりしたよ」


 少しだけ予備動作があったので、恐らく本気で当てるつもりはなかったのだろうけれど、かなり驚いた。


「最近はよくおかしな奴に出会う」

「えっと、それはティルシーのこと?」

「……ふむ、やはり知り合いか」

「あー、うん」


 身を分けた半身です。


「天使同士で連絡を取れたりしないか?」

「え?あー、ちょっと待ってね」


 自分の半身を意識する。今までは意識せずとも勝手に理解できていたのでなんとも不思議な感覚だ。


 ………?


「あれ、連絡付かないな」

「………そうか」


 シャステーレはそれだけ聞くとこちらに興味を失ったとばかりに歩き出した。

 どうしてかは分からないがあちらからの反応がない。何故半身である彼女との連絡が取れないのだろう?


 とにかく、シャステーレを見失うとまた探さなくてはいけなくなるので、僕は彼女に付いて歩いた。


「なぜ付いてくる?」

「いや、ティルシーに探しておくように言われてて」

「あいつと会ったのか?」

「いや、連絡だけで実際には会ってないよ」

「……そうか」

「君は、彼女の居る場所が分かるの?」

「いや、分からない。……正確には分からなくなった」

「分からなくなった?」

「そうだ。細い路地に入り込んだ辺りで反応が消えてな。今はどこに居るか分からん」

「それで、君は彼女を探して歩いているんだ」

「あぁ、アイツには色々と聞きたいことがあるからな」

「そっか。僕も彼女と連絡取れないのは困るし、手伝うよ」

「………そう、だな。とりあえず一発殴っていいか?」

「えっ、嫌だけど」

「貴様のことを信用できん」

「う、うーん、じゃあ、殴ってもいいけ、どっ!……う、ぐぅ」

「ふむふむ」


 言い終わるよりも早く彼女は僕の腹を殴った。


「お、重たい拳で……」

「……いいだろう。ひとまず貴様の同行を許可する」

「あ、あり、がと」


 彼女は目を瞑って、こくんと一回頷いた。

 


 う、うーん、気の良い人、かな。

 半身と連絡が取れなくなったり、同行人がおかしな人だったりと、早くも先行き不安である。

 フールラを連れていた頃が懐かしい気さえする。あの頃は平和だったなぁ。

 いや、そうでもないか。



「ほら、行くぞ」

「う、うん」


 上下関係が生まれてしまった、と訴える僕の心の声を意図的に無視してシャステーレの後を追う。

 

 さて、我が半身は一体どこに行ってしまったのだろうか?

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