表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新生天使は救えない  作者: yosu
第二章 そこに住む人々
26/75

24:天使のような悪魔のような



「天使とは、何のことだ?ティルシー」

「私の知り合いにね、居るんですよ、天使」

「ほう?初耳だな」

「そりゃあ言って分かる人も居ないでしょうし」

「……それで、貴様は天使と何の関係がある?」

「私が天使です」

「嘘だな」

「いや、嘘じゃないですけど?!」

「天使と悪魔は私に感知できる」

「シャステーレさんほんとに人間ですか?」

「知らん、人の胎から生まれれば人間だと言うのなら私は人間だな」

「えっと、一応私は自分のことを天使だと思ってます」

「……なるほどな、貴様は天使紛いなのか。得心がいった」

「何の話ですか、それ?」

「貴様は天使ではないが、天使に近い存在だから私の感知に引っかかったという話だ」

「感知って、シャステーレさんの能力ってことですか?」

「似たようなものだ、そこはどうでもいい。それよりこれ以上貴様に付いていく必要がなくなったな」

「………あー、ちょっと馴染んできた分寂しいような気もしますけど、シャステーレさんには仕事もありますしね」

「あぁ、一つ貴様に付いていく理由がなくなった。そして、今貴様に付いていく理由が増えたぞ」

「いや、結構です」

「重要なことでな、拒否権はない」

「二度目ですね、それ聞くの」

「貴様は天使ではないが、天使に使う部品を持って生まれた天使紛いではある。そんな貴様が真っ当にこの世に生まれたわけがない。私は貴様が何を行うのか調べる必要があるだろう」

「あー、そうですか。まぁもう、いいですけどね、別に」


 今更気にしても仕方ないし、一人旅というのもつまらない。


 彼女を連れて歩くというのは非常に先行きが不安ではあるが、今回のシーラの件のように彼女がいることで上手くいくこともある、かもしれない。



 


「あ、あの!」

「む、少年。仕事の依頼は報酬によっては受けなくもないが、あまり乗り気ではないぞ?」

「いや、貴方はお金と食事さえ用意できれば大体仕事しますよね」

「失礼な奴だ」


 この前僕たちにモデルの依頼をしてきた少年のような少女に声をかけられた。


「あ、いえ、今回は違くて。その、傭兵の人って、護衛の仕事もするんですよね?」

「ふむ、私がいつ傭兵だと言った?」

「えっと、少し調べたらすぐに出てくるくらい有名だったので……」

「流石シャステーレさんですね、人の目を引くことに関しては世界一です」

「褒めるな」


 褒めてないよ。


「その、ある女の子の護衛をして欲しいんです!」

「……貴様の護衛ではなく、貴様の守りたい誰かを守ってくれという話か」

「はい、お金ならこの前よりも沢山出せます!ですからお願いします!」


 少女は必死になって頭を下げた。目はギュッと瞑っているし、両手は服の裾を強く握っている。


「話を聞こう」


 シャステーレさんは、静かにそう言って、少女の肩を叩いた。


「何を呆けている、貴様の依頼だろう」

「は、はい、話は私の家で」


 そうして、僕たちはもう一度少女の家へと入ることになった。



「それで、守っていただきたい子なのですが、この町で踊りをやっていて、えっと、水と一緒に踊る綺麗な子なんです。名前はネセトア、自信家で、優しくて、えっと」

「いや、それ以上はいい、相手は理解した。それより何から守る?」

「そ、そうですよね。あの子有名だから、分かりますよね。えっと、最近しつこく男の人たちに絡まれているようで、多分言い寄った奴の中に嫌なのが居たんです。それで、しばらくの間その子を守って欲しくて」

「ふむ。しばらくというのはどれくらいの間だ?」

「あっ、えっと、二週間くらいお願いしたいのですが」

「……そうだな、結論から言うと私がその依頼を受けることは可能だ」

「じゃ、じゃあ」

「しかしな、それは有効な解決策になるのか?私が居なくなった後、例えば一ヶ月後、護衛が居なくなるのを狙って襲う可能性は十分にあり得る」

「あ、でも、そんなにずっと狙ってこないかもと思って……」

「そうだな、そうである可能性はある。しかし、そうでなかったらどうするつもりだ?」

「う、いや、えっと、それは」

「………解決法を教えてやろう」

「は、はい。ぜひ」

「私にこう依頼するといい。…………この町に巣食う薄汚い人間たちを一掃して欲しいとな」

「え、で、でも、そんなの」

「無論私は受ける気にすらならないが、彼女を狙う人間たち、という条件付きならば受けてやろう。……報酬は、まぁ、そこそこでいい」

「え、えっと、その、これくらいじゃダメですか?」


 少女は、元々用意していたのであろう袋に入ったお金をシャステーレに見せた。


「………いや、十分だ。では、貴様の依頼は『この町に巣食う踊り子を狙う人間を掃討』…………………ないし、『踊り子を狙うことが不可能もしくは難しくなるようにして欲しい』というものでいいな?」

「は、はい。お願いします!」


 こうして、シャステーレさんは依頼を受けることが決まった。

 何だか依頼の内容が不穏だったので多少変えさせてもらったが、それによって、(いや、よらなくても)僕は道連れだ。


 ………僕の依頼料って出るのかな。

 そういえば依頼をした男の子、じゃなくて女の子の名前はリューファというらしい。

 僕はリューファに何か頼もうか考えつつ、シャステーレさんの後を追った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ