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新生天使は救えない  作者: yosu
第二章 そこに住む人々
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21:我が財力(搾取)に際限無し


 第一王子に頼まれたことは第二王子を殺す依頼を出した人間を探すこと。

 第二王子を殺したのはビレーヴィだが、その依頼をした人間を彼女は知らない。

 それを知る人物は彼女の仕事仲間であるフォーシックという男性。仕事は情報を集めて売ること。

 僕の財力(他人の金)を持ってすれば何とでもなるだろう。


 そういう考えでフォーシックの居るという場所に向かったのだが、肝心のフォーシックが居ない。

 いや、人の居る気配はするので多分フォーシックはこの辺りにいるのだが、こちらを警戒しているのか姿を現さないのだ。


「フォーシック、仕事をしてもらいたい」


 反応はない。


「私は今からここに金を置いていく、それが私の依頼料だ。貴様が現れればその時点で置いてある金はくれてやる」


 ここには居ないであろうシャステーレさんの真似。僕の口調だと緊張感とか威圧感がない。あまり明るい仕事をしている相手でもないだろうし、舐められたりしてちゃんと仕事をしてもらえないと困るから真似させてもらった。

 ジャラジャラとお金を出していく、それが所持金の三分の一くらいになったときに彼は姿を現した。


「あんた狂ってるな」

「それほどでもない」


 開口一番の憎まれ口とともに。




「それで、何を知りたい?」

「第二王子を殺す依頼を出した人間だ」

「何だ、そんなことか」

「金は既に出しているが、まだ足りないか?」

「………あんたからはまだ金を取れる気がするが、その後が怖いな。気に入ったのなら次回の来店を期待するよ」

「どういう意味だ?」

「金は十分だ、教えやるって意味だよ」


 そうして彼は第二王子を殺す依頼をした人物のことを話し出した。

 性別、名前、年齢、どんなところに住んでいるか、何が趣味で休日はどこにいるか。

 聞いてもいない情報がボロボロと出てきた。恐らく自分の情報収集能力を見せて、自己の有用性を示しているのだろう。


「流石だな」

「一応情報を売ってる人間なんでね」

「そうか。……もう一つ聞きたい事がある、金は出そう」

「ああ、何だい。金を山ほど持ってるみたいだからな。あんたが相手なら大歓迎だ」

「……娘が学校に行きたいと言っていてね、ここはこんなだろう?どこかいい場所を知らないか?付け加えると、この国である必要は特にない」

「うん?何だそんなことか。別に金は要らないよ、面白くもない。ここにある学校に行かないのは正解だ。この国のなんて行かない方がいいからな、王様に仕えることのありがたみを教えてるだけだ。他の国のことはそこまで詳しくもない、期待はしないでもらいたい」

「それでも聞いておこう」

「……そうだな、今学校に行きたいならスティービルの方がいいだろうな、あっちの国はもう殆ど病気もないって話だ。まぁあの国が出した病気なんだから当然だが。……アライエアの方が学校で学べることは多いだろうが、今は入学を受け付けているか怪しいな」

「そうか、ありがとう」

「………いや、これ以上金は要らないって言ったんだがな」


 僕は懐から幾らか出すとその場を去った。


 アライエア、スティービル、どちらも国の名前だ。ちなみに今居る国はデレーティ。


 スティービルという国に行くのがいいらしいが、どうにも不穏な単語が聞こえたのでそこに行くか迷う。

 スティービルやアライエアのどの学校がいいかについては現地で調べるのがいいだろう。これ以上彼に聞いても分からなさそうだったし。


 僕はその後、王城へと忍び込んだ。そして、第一王子の部屋にいた護衛の人に見つかった。


「あんた、なにもんだ?」

「えっと、王子に頼まれたことがあって」


 いや、これは言わない方がよかったかも。

 彼が僕と後もう一人にしか伝えていなかったことのはずだ。


「頼まれてたこと?なんだよそれ」


 目の前の人は王城で働いてるとは思えないくらい言葉遣いが雑だ。王子の部屋にいるから護衛の人かと思ったけど違うのかもしれない。


「いやー、ほら、最近嫌な事件があったじゃない?」

「んー、あー、まぁあの人ならやりかねないことではあるな」

「えーっと、王子に会いたいんだけど」

「まあちょっと待っててくれ、そのうち来る」


 しばらくお互いにお互いの動向を気にしつつ黙っていた。


「おお!テンシ、よく来た!」

「……知り合いか」


 そうして、王子が来るまで彼は警戒を解かずに僕のことを見ていたのだった。

 護衛らしき彼は、王子と僕が話し始めると出入り口の方に向かい、そのまま出ていくのかと思ったが、どうやら出入り口付近でこちらの様子を伺い続けるようだった。


「彼は?」

「サールキだ、私の護衛を任せている」

「やっぱり護衛だったんだ」

「そうは見えないだろう?」

「うん、何なら忍び込んだ不審者かと思ったよ」

「はは、不審者か。サールキはもう少しシャキッとした方がいいかもしれんな!」

「いやー、もうお互いに不審者だと思って目が離せなかったよ」

「くはははっ、それは災難だったな!」

「ほんとにね」

「テンシ、この前の酒はどうだった?」

「あー、何か勿体無くてまだ飲んでないや」

「ははは、そうか。サールキ、客に土産を渡したい。あの無駄に高い酒を持ってきてくれ」

「………かしこまりましたっと。次からはちゃんと伝えておいて下さいよー」

「あぁ、すまん!」


 サールキは一度頭を下げてから、退出した。


「いや、隠し事はできんなぁ」

「向いてないんじゃない?……んで、王子、頼まれてた事だけど」

「もう分かったのか?」

「そう。それでね………」


 僕が第二王子を殺す依頼をした相手について話すと王子は「やはりか」とだけ呟いて話を変えた。


「王子、お持ちしましたよ」

「おお、早かったな」


 そして、僕は無駄に高いらしい酒を土産として2本もらって、王城から離れた。


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