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早朝に

作者: noki

二作目です


彼には変わった趣味がある。

それは、誰よりも早く登校し教室の掃除をすることだ。


私は、そんな変わった彼のことが気になっていた。


ーーーー


「彼って変わっているよねー いつも掃除しているし、趣味なのかな?」

クラスメイトが話しているのを聞いた。


僕には、朝早くに学校に来て掃除するなんて趣味はない。

そんなめんどくさいこと趣味にするはずがないじゃないか。


僕はただ部活動の朝練で朝早く学校に来る彼女のことが好きなだけだった。


ーーーー


彼と初めて話したのは二年生になった初日。彼が私の隣の席だったのがきっかけだった。

「初めましてだよね?一年間よろしくね」

「こちらこそ」

会話がなくて何か話さなくちゃと思い私から話しかけた。

そんな感じだった気がする。

たわいもない普通の会話。それがとても楽しかった。


それから、辛かった朝練も楽しくなった。

彼の変な趣味のおかげで毎朝お話をすることができるようになったからだ。


ーーーー


僕はどうしたら彼女と話すことができるか考えた。

授業中は無理だし、かといって休み時間に話しかける勇気など僕にはない。

そんな時、彼女が言ってた部活動のことを思い出す。

(朝練か...)

朝早くに行けば彼女と話せるのでは?

そんのことを思い行動を起こす。

次の日から朝早くに学校へ行き掃除をするという日課ができた。


僕と彼女の二人だけの秘密の時間は中学三年生になる時まで続いた。


ーーーー


あれから時間が経ち、肌寒い季節になった。

「あのね、引っ越すことになるのよ」

「え、引っ越し?」

私は母からの言葉に戸惑いを隠せない。

「急に言われても...」

「お父さんの仕事の関係でね... 4月からは向こうの学校に通うことになるの。 本当にごめんね」

母からの言葉に目の前が真っ白になる。

この家を出ていかないといけない。友達と別れないといけない。何より朝のあの時間がなくなってしまう。

「そっか... わかった」

母からの言葉にそう答えるしかなかった。


彼にも言わないといけない。

そんのことを思いながらも言い出せずに時間だけが過ぎていった。


ーーーー


「今日で二年生も終わりだね」

「そうだね」

いつものどうでもいいような会話が僕はとても好きで、とても心地よかった。

「あのね、引っ越すことになった」

「えっ...」

「前から分かってたんだけど言い出せなくて、ごめんね」

「そっか、そうなんだ」

そんなことしか言えなかった。

「この時間も今日で最後だよ。 なんだか寂しいね」と、どこか悲しげに微笑む。

「うん... 向こうに行くときは呼んでよ、見送るからさ」

「うん。よろしくね」


時間が過ぎ、賑わう教室。 

それとは裏腹に僕の心はとても静かだった。


ーーーー


引っ越し当日、本当に彼は来てくれた。

「やぁ」

彼のいつもの挨拶だ。

「来てくれたんだ」

本当に来てくれた。私は本当に嬉しかった。

「当たり前だよ」

今となってはこの時の会話はほとんど覚えていない。

本当にいつものようなくだらないことを話したんだと思う。


「そろそろいくよー」

「わかったー」

いつもの時間は終わりを告げる。


「じゃあ、またね」私はさよならを告げる

「あのさ...」彼の言葉。

「ん?」


「早くきなさーい!」と、母が叫ぶ。


「やっぱ、なんでもない。またね」

「えー、気になるなー」

「早く行かないと怒られちゃうよ」

「うー」と唸りながら私は走って向かう。

車に乗り込むと大きな声で「またね!」と私は叫んだ。

彼は手を振るだけだった。けれど、それが彼らしくてとてもなんだか笑えた。


ーーーー


彼と別れてから何回も季節は廻ったけど結局、彼とは会えていない。

何しろお互いに連絡先を知らなかったから。

だから、あのとき彼が言いかけていた言葉を聞けていないのだ。

自惚れかもしれないけど告白だったのかもしれない。

本当に聞けないのが残念だ。


けれど、あの年の幸せだった時間は私の大切な宝物になっているのは確かなのだ。

あの早朝の幸せな時間。それをこれからも大切にしていくと強く誓った。









最後の方、彼の視点をあえて書かなかったのですが書き方的にどうなのでしょうか。

アドバイスお願いします。


ーー

誤字の報告ありがとうございます。修正しました。

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