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ヴィーゼとプレリエの錬金冒険譚  作者: 鯉々
第3章:海にも及ぶ異変
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第23話:いざ、海へ!

 準備を終えた私達は一夜を明け、荷物を持って部屋を出た。台車に錬金釜を乗せ、港へと向かった。

 港に辿り着くと、昨日と同じ様にシップジャーニーと呼ばれている船の団体が停泊していた。


「やっぱおっきいね~」

「うん。これで行くんだね。何だかちょっと、今更だけれど悪い気がしてきちゃったな……」

「しかしこれで行くのが一番だろう? ルーカスさんが用意してくれたんだ」

「そうですね。行きましょう」


 私達は台車を引きながら一番大きな船へと向かった。入り口への渡し木の前にはこの前と同じ様にリオンさんが立っていた。


「リオンさん!」

「お待ちしておりました皆さん。ルーカスから話は聞いています。どうぞこちらへ」


 そう言うとリオンさんは私達を船へと招き入れた。

 やっぱり……何度見てもお母さんにそっくりだ。他人の空似にしてもよく似てる。まるでお母さんの顔をそのまま生き写しにしたみたい……髪色は違うけれど、本当にお母さんそのもの……。


 船内に入った私達は廊下の様な場所を歩いていた。廊下の片側には扉がいくつも並んでおり、いくつもの部屋がある事が考えられた。これだけ大きな船なら何もおかしな事は無いが……。

 やがて私達は廊下を抜け、大きな広間へと出た。そこはかつてここに来た時に訪れた場所だった。床には絨毯が敷かれており、そこにはヴォーゲさんとレレイさんが居た。


「来ましたか」

「そろそろだと思ってたわ」


 二人共私達が来るであろうタイミングが分かっていたらしく、出迎えてくれた。


「すみません、我が儘言って……」

「別に構いませんよ。ルーカスさんからお話は伺ってますから」

「何か大変な事が起きてるみたいね。あなた達のお父さんが調べてる事とはまた別の……」


 どうやらルーカスさんは交渉する時にそこまで話している様だ。


「えっと……どこまで知ってるんですか?」

「水の精霊の力を借りたいのよね?」

「そこまで知ってるんですね」

「ルーカスさんが話してたのよ。ほとんどの人は知らないんだろうし、現に私も教えてもらうまで何も知らなかった。でも、私は何とかするべきだと思う。人間が犯した罪なら、私達人間が何とかしないとって」


 ヴォーゲさんが申し訳なさそうな顔をする。


「本来は我々がどうにかするべきなのでしょうが……」

「い、いえいえ! ヴォーゲさんのせいじゃ……」

「いえ、我々は古来より海で暮らしてきた民なんですよ。誰よりも水と共に生き、その恩恵を授かってきた種族です。それだと言うのに、この世界に迫っている危機に気付けなかった」

「別にあなたのせいではない。私達も知らない様な昔の人間がやった事だ。だが、そのせいで私達が被害を被るというのなら、黙っている訳にもいかない。そうだろう?」

「……ええ。ええ、そうですね。私達がやらばければ、他の者にまで被害が及ぶ……」

「そうね。知ってる者が何とかすべきね」

「それで、どちらに向かうんです?」


 プーちゃんは鞄に入れていた本を取り出し、最初に見たページを開く。


「ここ! ここに連れてって欲しいんだ!」

「何でも無人島らしいんですけれど、遺跡があって、そこに錬金術に使う道具があったらしんです」


 それを見たヴォーゲさんは少し動揺している様だった。


「あの、どうかしたんですか?」

「ここは以前、私の仲間が漂流した場所なんです。あの時は助けるのに必死で気付かなかったが、まさかあそこが……」

「まだそこが水の精霊の言う罪かは分からない。だが可能性はある」

「……分かりました。交易もしなければならないのであまり長くは調べられないと思いますが、数日だけなら大丈夫です」


 私は頭を下げる。


「あ、ありがとうございます!」

「いいのよ、気にしなくて。……リオン!」


 レレイさんの呼び掛けにリオンさんは即座に反応する。


「はい! 何でしょう!」

「皆さんを部屋に案内して。ヴァッサさんと同じ部屋にね?」

「はい! お任せを!」


 元気な返事をしたリオンさんは私達を連れて再び廊下へと歩き出した。そんな中、私はふと疑問に思った事を尋ねる。


「あの、質問いいですか?」

「ええ。どうぞ」

「えっと……レレイさんとヴォーゲさんってどういうご関係なんでしょうか? 苗字が同じでしたよね?」

「ああ、その事ですか。あの二人は血縁関係にあるのです。ヴォーゲのお母様はレレイのお婆様に当たります」

「それじゃあリオンさんも血縁なんですか?」

「いえ、私は違います。私は元々レレイの部下として働いていたのです。あっ、今もそうかもしれませんが」


 そっか、あの二人は元々血が繋がってたんだ。でも今のリオンさんの言い方だと、レレイさんは元々ここには居なかったみたいな感じだったよね。ちょっと気になるけれど、そこはあんまり聞かない方がいいかな。

 しばらく歩いていると、やがて他の扉よりも大きな扉の前に辿り着いた。


「さあ、こちらです」

「他の部屋は違うの?」

「他の部屋も確かに客用の船室ではあるのですが、ここが一番大きいので」

「あの、何なら私達だけでも小さい部屋で……」

「いえ、ですがそちらの……釜ですか? それが入る部屋となるとここしか……」

「ヴィーゼ、ここは甘えさせてもらおう。プレリエも父親と一緒がいいだろう?」

「えっ? あ、うんまあ……そだね、うん。情報の共有的な意味でね、うん」

「あの、もし他のお部屋が宜しいのでしたら、レレイやヴォーゲに言ってきますが……」


 リオンさんは私の反応が予想外だったらしく、慌てている様に見えた。その様子は今まで見せていたしっかりとした面とは違い、どこか子供の様な融通の利かない印象を受けた。


「あ、いえいえ! ここで大丈夫ですよ!」

「そ、そうですか? それなら良いのですが……。で、では戻りますね?」


 リオンさんは困惑しながら背を向け、元来た道を戻っていった。私達は扉をノックし、扉を開ける。中はかなりの広さをしており、机や椅子、棚などが置かれており、窓際に置かれている椅子にお父さんが座っていた。


「お父さん!」


 プーちゃんは台車を引くのを忘れてお父さんの方へと駆け出して行った。お父さんは特に驚いている様な様子は無かったが、困ったような顔をしていた。


「やっぱり諦めてくれなかったか……」

「当たり前じゃん! あたしはやると言ったらやる女だよ!」

「はぁ……まあ、しょうがないか……」


 お父さんは諦めたかの様に溜息をつく。

 シーシャさんはプーちゃんの代わりに隣に来て台車を引いた。私とシーシャさんは台車を部屋の端に寄せる。


「ヴィーゼ、プレリエ、助けようと思って来てくれたのは嬉しいけど、あまり危険な事はしないでくれよ?」

「あ、えっとねお父さん、私達が来た理由なんだけど、それだけが理由じゃないんだ」


 私はここに来るまでに水の精霊の遺跡で起こった事、そこで水の精霊から聞いた事を全て話した。お父さんは真剣な顔で最後まで黙って話を聞いていた。


「……なるほど。そんな事が……」

「うん。……ねぇお父さん、錬金術って危険なものなのかな?」

「それは……」

「中には危険な道具とかもあるし、調合を間違えたら爆発する事があるのは知ってたよ? でも……そんな世界を滅ぼしてしまう様なものだなんて思わなかった」

「……ヴィーゼ、こっちに来なさい」


 お父さんは私を側に招くと、プーちゃんと一緒に抱き締めた。


「いいかい? 物も技術も、使う人次第なんだ。悪い人が使えばどんな物でも危険なものになってしまうんだよ」

「お母さんは……正しく使ってたのかな?」

「ああ。彼女はどこまでも優しい人だった。それはヴィーゼにもプレリエにも分かるだろう? お母さんが酷い事した時なんてあった?」


 私は昔を思い返す。

 お母さんは確かに優しい人だった。私達どっちかだけを甘やかしたりはせずに、両方に優しくしてくれた。勉強が苦手ですぐに投げ出してしまっていたプーちゃんにも根気強く教えていた。それに何でもかんでも時間を掛けて細かくやってしまう私をじっと待ってくれた。同じ位の年の子達が私を急かしたりしても、お母さんだけはずっと私のペースを待ってくれていた。


「んーん、お母さんいっつも優しかったよね。ちょっとお人好し過ぎるとこはあったけど」

「そうだね。ずっとずっと優しかった……」

「だろう? お母さんは知識や技術を正しく使える人だ。錬金術の危険性をちゃんと分かって使ってたんだよ」


 確かにお母さんが残してくれたレシピ集にも危ない物にはバツ印が付けられてた。私達が迂闊に危ない物を作らない様にしてくれていた。


「ねーお父さん、何で他の人は錬金術を危ない事に使ったのかな? お母さんはちゃんと出来てたのに」

「そうだね。皆が正しく生きられればいいんだけど、なかなか難しいんだよ」

「そんなに難しい事かな? 皆で親切にしあって生きるだけだよ?」

「プレリエ、人間は思っている以上に複雑な生き物なんだよ」

「ふぅーん……」


 プーちゃんはその答えに納得が出来ない様だった。地頭のいい彼女にとっては、お互いにいがみ合ったりする人間が理解出来ないらしかった。

 お父さんは私とプーちゃんを放すと話を変えた。


「それで、その遺跡っていうのはどこにあるのかな?」

「えっとね……ここだよ!」


 プーちゃんはお父さんに本を見せ始める。私は説明をプーちゃんに任せ、釜の近くに立っていたシーシャさんの所に行く。


「ごめんなさいシーシャさん、お恥ずかしいところをお見せして……」

「ふっ、別にいいさ。まだ甘えてもいい年頃だ」

「うっ……えっと、それじゃあ釜を下ろしたいんですけれど、手伝ってもらってもいいですか?」

「ああ。手伝おう」

「手袋無くてもいいですか?」

「ああ」


 私とシーシャさんは息を合わせて釜を持ち上げると、ゆっくりと移動し、邪魔にならない空いている場所に設置した。


「やはり重いな……」

「す、すみません」

「いや謝らなくていい。さて、私は少しヴォーゲさん達の所に行ってくる」

「え、はい」


 理由は不明だったがシーシャさんは部屋を出て行った。私はお父さんの所に戻る。丁度プーちゃんが説明を終えたところだったらしく、お父さんはルーカスさんがくれた本を読んでいた。


「あっ、ヴィーゼ。説明終わったよ」

「ありがとう。お父さん、どう思う?」

「……うん。この写真を見た感じだと間違いないかな。ここは誰かに使われてた」

「でも、何のために?」

「そこまでは分からないな……実際に現地で調べてみない事には……」


 どうやら見ただけじゃお父さんにも分からないみたいだ。でも、お父さんが居てくれるなら安心は出来るかな。私達だけじゃ調べようが無いだろうし……。


「とにかくここに着くまで待とう。未知の生物の事もあるし、ついで調べるよ」

「うん。ありがとう」

「おっしゃ! じゃあヴィーゼ、今の内に遺跡壊す用の道具作っとこうよ!」

「うん。まずはレシピで調べてからだけれどね」


 私達は遺跡を破壊出来る道具を作るためにレシピ集へと目を通し始めた。

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