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ヴィーゼとプレリエの錬金冒険譚  作者: 鯉々
第14章:怨み募りて仇を成す
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第118話:既視感とブレスレット

 槍が持つ特殊な力について教わった私達はひとまずどこに問題の槍が置かれているのかを調べるために島へと上陸してみる事にした。港では既にお父さんが待っており、そこで合流すると街中へと歩みを進めた。

 島は外から見た限りだとそれなりに栄えている様に見えたが、いざ街の中を歩いてみると人の数はあまり多くない様に見えた。正確には外を出歩いている人が少ないという意味で、ほとんどが建物の中に居るか、あるいはそもそも建物自体が空き家になっているかのどちらかに思えた。


「何か、少ないね」

「うん……あいつが言ってた槍の事、ここの皆も知ってるのかも」

「槍? あの像が持ってるやつかい?」

「うん。錬金術で作られた槍があって、それがすっごい危険なやつなんだって」


 街中を歩き回り、途中で出会った島民の人に話を聞いてみると槍の歴史が見えてきた。

 その槍は百年以上前にこの島へとやって来たのだという。その槍を持っていたのは後のこの島の統治者となったシュペーア一族だった。圧倒的な武力を持っていた一族は槍を使ってこの島を守り繁栄させた。外敵が侵攻して来ても槍の力を使い全て追い返したそうだ。しかし、彼らがこの島の統治者となってから毎年島で死者が出る様になったのだ。

 話を聞くにその槍はシュペーア一族の屋敷に保管されているのだろう。そんな危険な物を他の場所に置くとは思いにくく、もしそんな事をすれば島民からの顰蹙ひんしゅくを買い、下手をすれば反乱を起こされる可能性もある。そう考えれば自分達の手元から遠ざけるとは思えない。


「お父さん、あそこだよね? そのシュペーア一族って人達の家……」

「そうだろうね……これ以上近寄るのはまずいかもしれない」


 街から離れた所にある山に大きな屋敷が建っていた。相当な金額が掛けられていそうな見た目であり、恐らく数々の戦いで得たもので作り上げたのだろう。ここの歴史に詳しい訳ではないが、もしかしたら外部へ戦争を仕掛けたりといった事もあったのかもしれない。

 これ以上の接近は諦め、一旦港の方へと戻った私達は槍への道具を作るためにレシピを考える事にした。リチェランテさんの話が事実ならあの槍には『持っている人間に未来予知をさせ、殺した人間の血を吸って呪力を増す』という力がある。迂闊に適用範囲内へと入ってしまえば私達にもその呪いの影響が出てしまうかもしれないのだ。つまり、ある程度距離を取った状態で槍を破壊するか無力化をしなければならない。


「どうしよう……今年分の残りの人数が分からないと……」

「だよね。言い出しっぺはあたしだけど、どうしよっか……」

「数値弄れる物があればいいのかな……でもそれが作れてもどこにあるのか分からないとコントロール出来ないかもだし……」


 リチェランテさんは私達とは別の方法を思い浮かんだと言っていたが、もしかするとそちらの方が良い方法なのだろうか。私達のやり方では槍を直接視認出来なければ数値を弄る事すら出来ない。もっと言えば、そもそもその道具をどうやれば作れるのかも思い浮かんでこない。考え方自体は何も間違っていないという確信はあるのだが、どうすればそれを実現出来るのかという方法が何一つ見えてこない。

 一度落ち着ける環境で考えをまとめようと考え部屋へと戻り、プーちゃんと共にお母さんのレシピを見ながら自分達の求めている道具の作り方をまとめる事にした。


「ねぇヴィーゼ、この間作ったあの羽根を使えば一気に中に入ったりは出来るよね。あれで道具だけ送るみたいなのは出来ないかな?」

「あれは多分使ってる人の意識が必要になる道具なんだと思うんだ。だから道具だけ送るにしても一度私達が直接行かなきゃいけなくなっちゃう。そうなったら……」

「そっか……槍の呪いを受けちゃうかもだよね。ん~……その呪いっていうのが厄介だよねー……せめてそれがどうにかなればさぁ……」

「呪いの影響を受けない方法かぁ……」


 お母さんが残してくれたレシピ集をペラペラと捲り、何かヒントになりそうなものはないかと探す。レシピ集の中には以前にも見つけた様なバツ印が入っている道具が記載されており、何に使うものなのかは分からないがいずれにしてもかなり危険な道具である事に変わりはなさそうだった。そんな数ある道具の中に、一つ気になるものがあった。ブレスレットの様な道具が描かれており、その図の上から大きくバツで消されていた。そしてそれを見ていると私の中に奇妙な既視感が生まれてきた。


「ねぇプーちゃん……」

「もしかしてヴィーゼも? 何かさ、これ……」

「うん。どこかで……これ……」


 不思議な感覚だった。こんなブレスレットの様な道具は今までに作った事も使った事も無かった筈である。もちろん見た事もない。それにも関わらず、まるでどこかで一度見た事があるかの様な感覚がしたのだ。それはプーちゃんも同じだったらしく、私と同じく怪訝そうな顔をしていた。


「ねぇお父さん、これ」

「どうしたんだい?」

「これ、見た事ないかな?」

「……いや、無いけど……これが?」

「何だろう、何て言えばいいのか分からないんだけれど、このブレスレットどこかで見た事ある気がして……」

「あたしも。お父さんも見た事ないって事は、じゃあこれって……」

「昔の私達……?」


 お母さんの手によって私達姉妹は『新人類』の因果から解き放たれた。それには今私達が付けている指輪が関わっているらしい。その影響でか過去に何をしていたのかの記憶が全て失われている。今までの情報が事実だとするのであれば私とプーちゃんは一番最後に作られた『新人類』であり、私達にしか分からない道具を作っていた可能性がある。そしてもし、このレシピ集に関わっているのがお母さんだけではなく私達もだとすれば、この奇妙な既視感にも納得がいく様な気がする。以前の私達が作っていた道具を危険視したお母さんがこれに記していたのかもしれない。そうであれば、このブレスレットは私達姉妹が一度考案した物という事になる。


「ねぇ……プーちゃん」

「……作ってみる?」

「そうだね。これを考えたのがお母さんなのか私達なのかは分からないけれど、何か……何かを感じるんだ……」

「分かったよヴィーゼ。あたしも上手く言えないけど、これ何か見た事ある気がするもん。言い出しっぺのあたしが言うのもあれだけど、数値を弄る方法が浮かばないし……」


 リチェランテさん相手に見栄を切っていた手前プーちゃんは悔しそうだったが、実際他に方法が浮かばないため仕方なく自分達の中に浮かんだ既視感を信じてこのブレスレットを作ってみる事にした。賭けではあったがこの既視感はただの気のせいだとは思えなかったのだ。心のどこかで引っ掛かっているこの何かが私とプーちゃんを動かしていた。

 レシピ集に書かれていた素材を見ると、ブレスレットに必要なのは意外な事にただ金属だけだった。恐らく書かれていないだけで血は必要になるのだろうが、それ以外の素材については何一つ書かれていなかった。道具の名前はおろか、どんな効果のある道具なのかについても一切書かれていない。他の道具に関しては名前や効果などが多少は書かれているのだが、これだけがまるで例外の様に詳細な記載がされていなかったのだ。


「金属……ほんとにこれだけでいいのかな?」

「これにはそう書いてあるけれど……でも何でこれだけ細かく書いてないんだろう? 金属だけって……」

「専門外の僕が言うのもおかしいかもしれないけど、金属は加工が難しい。もしかしたらそこに何か意味があるのかもしれないね」

「意味、意味かぁ……うーん……」

「プーちゃん、まずは先に金属を見つけようよ。どんな効果があるかは分からないけれど、もしかしたら槍にも使えるかもしれないし」

「そ、そうだね! でも金属って……いいのあるかな?」

「うーん……この船って大砲積んでたよね? あれに使う砲弾を一つ貸してもらえれば……」

「そっか! リオン姉に頼めば一個くらい貸してもらえるかもだね!」

「僕の方で何かしておける事はある?」

「お父さんはヘルメスさんに一応あの槍の事話しといて!」

「ああ、分かったよ」


 こうして何となく本能任せの打開策が見えてきた私達は、レシピ集に残されていた謎のブレスレットを作るために行動を開始した。

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