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ヴィーゼとプレリエの錬金冒険譚  作者: 鯉々
第13章:人としての資格
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第116話:建国への羽ばたき

 転送道具が作れる見込みが見えてきた私とプーちゃんは洞窟内に戻り、002番さんに座標計算が出来るかどうかを尋ねてみた。すると、彼女だけでなくここに居るかつて機械人形オートマタだったメンバー全員がそういった計算を出来るとの事だった。以前はお互いの細かい位置まで正確に分かる程の力があったらしいが、人へと変わる事でそこまでは出来なくなってしまったそうだ。

 それを聞いた私達は要望を叶えるための道具を作る目途が立ち、その道具を正確に使うには彼女達が持っているその計算能力が重要になってくる事を伝えた。


「では、お願い出来るのでしょうか」

「はい。多分大丈夫だと思います」

「あたし達に任せて! すぐ作ってくるからさ!」

「はい。お待ちしております」


 洞窟から出てお父さん達の所へと戻ると、丁度シップジャーニーの船が何隻か島へと到着し、そこから小舟に乗ってトワイライト王国の国民を連れたレーメイ女王とオーレリアさんが戻って来た。そこにはリオナさんとリオラさんの姿もあり、国民全員がこの島へと集まって来ていた。

 道具が作っても問題ない事が判明したため、王国民と入れ替わりになる様に船へと戻っていった。部屋へと戻るとヘルメスさんが紙にレシピを書いてくれた。それは彼女がよく使っている体を転送する事が出来る羽根だった。


「こ、これで作れる筈、です、はい」

「必要なのは羽根と……血だけ?」

「は、はい。羽根は『自由に飛ぶ』という意味付けのための素材なんです……じ、実際は他の物でも作る事は出来ると思います、はい。で、でもこれが一番安定すると思うんです」

「羽根だったら、シーシャさんが持ってるかな……プーちゃん、行ってみよう?」

「うん。行ってみよう」


 素材となる羽根を手に入れるためにシーシャさんの部屋へと向かうと弓の調整をしている彼女の姿があった。事情を説明すると普段矢を作るために使っている羽根を何本か渡してくれた。


「何か手伝った方がいいか?」

「いえ、後はこれを作るだけなので大丈夫です。貸してくれてありがとうございます!」

「気にするな。また何かあったら言って欲しい」


 シーシャさんに礼を告げると自分達の部屋へと戻り、調合を開始した。どうやら今度の道具は素材が少なくてもいい代わりに『創成樹の鉢植え』の様に正確な攪拌かくはんが重要になるらしい。使用者の計算能力も基に転移能力を作動させる都合で、そういった正確な調合が重要になってくるらしい。もしミスをしてしまえば、予想外の動作をする道具が出来上がってしまうらしい。


「ヴィーゼ、お願い出来る?」

「ま、また私!? い、いいけれど……プーちゃんも見ててね……?」

「わ、私も見てるので大丈夫です、はい! な、何かあったらすぐに言いますから……!」

「僕は……まあ、本当に見てるだけしか出来ないかな」


 再び責任重大な仕事を任されてしまった私は緊張を抑えながら調合を開始した。まず最初に釜を加熱し、ある程度煮立ってきた辺りでシーシャさんから貰った羽根を一枚入れた。他にも予備として何枚か貰ってはいるが、あくまで予備であるため一気には使わない様にした。


「ヴィーゼ、血はあたしが代わりにやるよ」

「いいの? 無理しないでね」

「大丈夫大丈夫。ちょっと入れるだけでしょ?」


 そう言うとプーちゃんは鞄に入れていたナイフを取り出すと指先を小さく傷つけた。レシピによるとあまり大量に入れすぎると逆に失敗してしまうらしく、繊細な調整が必要らしかった。本来であればこういった細かい調整は私の方が得意ではあるが、天才肌であるプーちゃんであれば直感的に正確な量を入れられるだろう。計算を間違える時はあるが、感覚はそれを上回れる。私はそう直感していた。

 指先に出来た小さな傷口から血がポタポタと垂れ、数滴釜の中へと落ちていった。ある程度落としたプーちゃんはそれ以上落ちない様にスッと手を引っ込め、後を私に任せた。


「ヴィ、ヴィーゼちゃん……! こ、ここからが重要です、はい! き、気をつけてください……!」

「わ、分かってます。じゃあ……やりますよ……!」


 掻き混ぜ棒を手に取りゆっくりと混ぜ始める。あまり急いで混ぜると羽根に『新人類』としての力がきちんと混ざらないらしい。シンプルな素材で強力な道具を作るには、それ相応の手間が掛かるのだろう。

 強張った様子のヘルメスさんの視線を受けながら慎重に調合を進め、一時間近く経ってようやく作業が終了した。釜の中に手を突っ込み完成した羽根を取り出してみると、見た目は釜に入れる前と特に変わってはいなかった。


「ヴィーゼ、出来たのかい?」

「た、多分……。あの、ヘルメスさん。これでどうですか?」

「ちょ、ちょっと使ってみるので待ってくださいね……」


 私から羽根を受け取ったヘルメスさんがそれを掲げてみると、発光してその場から姿を消した。そのすぐ後、部屋の扉が開かれてヘルメスさんが入って来た。どうやら廊下の座標を計算してそこへと移動したらしい。


「だ、大丈夫だと思います、はい……!」

「やったねヴィーゼ!」

「うん! これなら大丈夫かも!」


 早速完成した道具を002番さん達に渡すためにお父さんとヘルメスさんを連れて4人で再び島へと渡る事にした。一度自分で使って使い方を確認してみたいという考えもあったが、辺りが海であるため下手に間違った場合落水してしまう可能性があるためやめておく事にした。レシピの作成者であるヘルメスさん本人が大丈夫と言っていた判断を信じるしかない。

 小舟を使って島へと戻ると国民達が様々な資材を運んだり取り出したりして新たな生活を送るための準備をしていた。リオラさんは片足が不自由という事もあってか作業には参加せず、指示を出すという役割に徹していた。


「や~二人共~。ほんとありがとね~」

「リオラさん、今までごめんなさい」

「うん~? 何のハナシ?」

「あの時、トワイライト王国が壊れたのは私達の判断ミスです……」

「別に関係ないってハナシ。あのデッカイのを仕込んだのが誰なのか分からないケド、君達が居なかったら危なかったってハナシ、でしょ?」

「……」

「おっとっと。まだお仕事あるからごめんね。ほら、何かやるべき事があるってハナシでしょ?」

「……ありがとうございます」


 リオラさんはいつもの調子を崩す事なく杖を突きながらその場から離れて指示を出し始めた。離れた所ではリオナさんが運搬を手伝っており、黙々と作業を進めていた。そんな中を進んで洞窟内へと入っていくと、運び込まれた資材が並ぶ中に002番さんの姿があった。


「お待たせしました!」

「お早いのですね。完成したのですか?」

「はい。これです」


 完成した羽根を手渡すとヘルメスさんが代わりに使い方を説明してくれた。それを聞いた002番さんは問題なく使用出来るか実践するために羽根を掲げた。するとその場から姿を消し、少しすると再び先程立っていた位置に光と共に戻って来た。思っていた以上に正確な座標計算が出来るらしく、あくまで目視した上での感想であるが、寸分の狂いも無く元通りの位置へと戻った様に見えた。


「なるほど。これならば問題無いかと」

「だ、大丈夫みたいですね……」

「他にはもう大丈夫そうですか?」

「はい。トワイライト王国の皆様と話し合い、進めていこうと思います」

「食料に関しては船が造れればひとまずは困らないだろうね。ただ、やっぱりここは海に囲まれてるから野菜類は育ちにくいかもしれないよ。あくまで生物学者としての意見だけど……」

「それに関しては現段階では仕方がありません。船が完成すれば他国との貿易も可能となるでしょう。その折には野菜等の輸入も考えております」


 恐らく作ろうと思えばあの『鉢植え』の様な道具も作れるのだろう。しかしこれ以上生物に関する道具を作るのは良くない気がする。ただでさえ『あらゆる樹木を接ぎ木出来る道具』を使っているのだ。更に環境に大きな影響を及ぼす様な道具をここで使えば、見過ごせない影響が出てしまう可能性が出てくる。水の精霊との間に交わした約束を守るためにも、危険な可能性を孕んでいる道具を作る訳にはいかない。


「じゃあ、もう大丈夫そう?」

「はい。我々を代表して礼を述べさせて頂きます。ありがとうございました」


 そう言って頭を下げた002番さんと別れて洞窟から出ると、砂浜では王国の人々とレーメイ女王、リオナさんリオラさん、そしてオーレリアさんが待っていた。


「皆様……この度はありがとうございました」

「女王様……」

「皆様のお力が無ければ私達は国を失うところでした。国を代表して感謝致します」


 女王がそう告げるとオーレリアさんが『黎明』の宝玉を持ってこちらに近寄って来た。


「え、これって……」

「ええ。我が国に伝わる最後の宝玉です」

「あの、いいんですか? これって大事な物なんじゃ……」

「良いのです。今まで私達はこれの力に頼り過ぎていた様です。そのせいで私は判断を誤り、結果的にあの怪物を目覚めさせてしまいました。これは人の手に余る力です」


 私が受け取るのを躊躇していると、代わりにヘルメスさんが受け取った。


「わ、私が預かります……女王様の仰る通り、これは存在してはならない物です、はい……」

「ありがとうございます、ヘルメス様。元機械人形オートマタを代表して、わたくしからお願いがあります」

「な、何ですか?」

「もしもマスターと再会出来ましたら、お伝えください。『貴方に作られて幸せでした』と」

「……分かりました。つ、伝えておきます」


 オーレリアさんが女王の下へと戻ると再び彼女が口を開く。


「ヴァッサさん。貴方にはお手数をおかけしました」

「いえ、滅相もございません。僕の方こそ良い結果をもたらせず、ご迷惑を……」

「良いのです……あれは誰にも予測出来なかったのですから」


 別れの挨拶を終えた私達は小舟に乗って巨大船へと帰る事になった。しかし小舟に乗ろうとしたところで、リオナさんから声を掛けられた。彼女は他の皆には聞こえない様に私とプーちゃんに顔を近付けると、こう耳打ちした。


「あの子に……ごめんって言っておいて」


 ただそれだけだった。どこまでも素直になれない彼女の妹を思う言葉だった。


「伝えて、おきます……」

「リオナ姉は……来ないんだよね?」


 プーちゃんの言葉に返事は無かった。ただ小さく頭を横に振り、どこか悲しさと優しさを感じさせる笑顔を見せて女王の下へと戻っていった。


「二人共、戻ろう」

「そうだね、お父さん」


 新たな王国となる島を後にした私達は、最早もう一つの家と言ってもいいシップジャーニーの巨大船へと戻った。あの島でやるべき事は全て終わった事を船長であるヴォーゲさんへと告げ、次に向かって欲しい場所を伝えると、近場の島での交易の際に寄ると約束してくれた。

 船が動き出した中、お父さんとヘルメスさんと一旦分かれた私とプーちゃんは船内を巡り、リオンさんを探し出した。姉であるリオラさんからの言葉を代わりに告げると、リオンさんは目を瞑り深呼吸をして口を開いた。


「……あの人は、臆病者です。昔からそう……そうやって何もかも隠して……」

「リオナさんは……ずっと心配してたんだと思います。だから……」

「ねぇリオン姉。いい加減許してあげてよ……」

「すみませんが、その提案は受け入れかねます。私は……姉さんを許す訳にはいきません。レレイが一度チャンスを与えたというのに、あの人はそれを拒否しました。それはつまり、悪人としての道を生きるという事です」

「それはでも……」

「許せません……ですが、理解はしようと思います」

「え……?」

「私本人としては許せません。ですが、個人的思想を抜きにして理解をしようと務める事は出来るかもしれません」


 リオンさんは小さく一礼すると自分の作業へと戻っていった。それを見届けた私達は自室へと戻り少し眠る事にした。女王から受け渡された『黎明』をどうするかをヘルメスさんと話し合わなければならなかったが、今日は色々と作業をして疲れていたため少しだけ眠る事にした。

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