10話〜国に(隊長が)口出ししてみた!〜
「出ろ!」
私達二人は手を拘束されつつ牢屋を出た。
今更気づいたが、この牢獄には多くの罪人が収容されていた。
その中には私達に「お気の毒にな」と言った者もいたが、それにオスカーが「黙れ、犯罪者が!」と謎の反論をしていた。
二日か、三日ぶりに地上の土を踏んだ。
だが、その事を喜んでいる暇もなく、目の前にある十字架に架けられた。
十字架の手首を拘束する金属の枷は錆びていて、力を緩めるたびに痛みがはしった。
「それでは国家反逆罪の罪人の処罰を執り行う」
その声と同時に私達の十字架が起き上がった。
すると民衆がザワザワと騒いでいた。
もちろんその中にはこの街で出会った人達も見えた。
そんな中、執行官の一人が声をかけた。
「おい!罪人!何か言い残すことはあるか!」
この問いはオスカーに向けられたものだった。
「あ?そんなもんあるに決まってんだろ」
その態度に執行官は舌打ちをした。
執行官は「静粛に!」と大きな声を上げると一瞬で静かになった。
そして、彼は言い出した。
「おい!民よ!いや他国に怯えて怖気付いているガキ共!いつまでもいもってないで、たかが一歩を踏み出し他国を潰して取り返したくはないのか?ああ?」
彼の言葉に皆耳を傾けた。
が、故に多くの批判がとんできた。
「いいわけねぇだろうが!」
「国民じゃねぇ奴が何を知ったような口してやがる!」などなど。
聞こえた声は人それぞれだった。
だけど、また彼は言い出した。
「そう思っているのなら動けばいい!だが実際お前らは動いていない。それってつまりお前らは完全に敗者じゃねぇかよ!」
彼の最後の一言でまた静まりかえった。
それを見かねて兵士が口を出す。
「おい!もうそれ以上喋るな!」
「はいはい、わかったよ」
執行官は咳払いを一回した。
「では、この者達の十字架刑を執行する!」
私の足下でこの時を待っていた兵士が火のついた棒で私を燃やそうとしていた。
だが、その時だった。
「待て!」
城の方角からとても大きな声が聞こえた。
「その罪人の罪状の変更を命ずる」
すると兵士達や国民が跪きはじめた。
そしてその声の主は十人の護衛をつけて堂々と正面から歩いてきた。
「このバードリー王国第五十二代国王、リプス・クロ・バードリーが!」
こんにちは深沼バルキです。
遂に王様が登場しました。
次回くらいからこの世界の本番です。
ここまで読んでくださりありがとうございます。