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26 安らぎの湯気にて



  ***




 ダンジョン迷宮の遺跡を見回し、エレノアは銀色のツインテールを揺らしていた。

 何か、目当てがあるような顔であった。



「――? 何やってるんだ、エレノア」

「しっ。なのじゃ」


 真剣な瞳で、口元に人差し指を立てる。

 見つめるは迷宮の通路――その〝奥地〟である。


 ――《魔物》との戦闘を終えて、少し。

 その迷宮内を歩いて行く僕らは、比較的楽に進めていた。

 というのも、ほとんど魔物がいない。

 あの迷宮内を巡回する〝イナゴ〟のような魔物・《骸骨剣士スケルトン》たちが消えてから、その他に魔物が顔を現わすことはなかった。まるで彼らに蹂躙されるのを恐れたように姿を隠し、進んでいく僕らは、がらんとした迷宮の通路を進んだ。


 前には『扉の守り』として、案内するエレノアの背中があった。

 彼女は、地図を見ている。

 冒険者にとって〝地図〟とは必須というべきもので、魔物の森などや、始まりの平原に限らず――それは多くの場所で〝現在の位置〟を把握したり、魔物の出現場所を予測したりするものであった。場所によっては、冒険必須ともなる。

 ただし、この《クルハ・ブル》では少し事情が異なっていた。《ダンジョン迷宮・内部》のものとなると、土地勘のある国の人間でないと、持っていてもほぼ無意味である。読めない地図などに意味はない。……迷宮は複雑である。


 そして、その探索するエレノアの背中についていくと、最初に反応したのは獣人のロドカルだった。『くん、くん』と鼻を動かして、なにかに反応した。


「……? 不思議な匂いがするのであります」

「ん? なにがだ」


「この匂いは……硫黄? まさか……」


 そうして、僕らの目の前が開ける。

 そこには、錆びついた迷宮の部屋に満ちた透明な〝お湯〟――。白い湯けむりが充満し、神聖な湯の輝きに、《魔物》たちは近づかない。


 そう。

 ―――ここは、


 全員で顔を合わせる。


「「「―――温泉?」」」






 ***




「――わああっ」


 と、そこに湧き出る透明な液体を見て、獣人ロドカルが両手を広げていた。


 ―――そこは、迷宮の温泉。

 もともと冒険エリアの森や、ダンジョン迷宮には一定割合で〝湧き出る〟とされている、温かい熱を含んだお湯である。ここ、《クルハ・ブル》では地熱が高く、地下にはこういった水脈が巡らされているのもおかしくなかったが、それにしても、迷宮内部に……とは。


 僕らは呆然とそれを眺めていた。

 その温泉の効能は冒険者の〝疲労回復〟だけでなく、生命の輝きにより《魔物》たちを寄せ付けない。魔除けの効果がある。

 ――だけではなく、湯の中に含まれる〝マナ〟の輝きは、あの生命樹――大陸の母なる《熾火の生命樹フレア・ユグドラシル》の恩恵にとても似ているという。資質が似ているからか、精霊がその温泉に入ると〝生命力〟――彼女たちを構成する、体の根本的な〝マナ〟を回復するため、力を取り戻すという。


 以上が――僕らや、《精霊》がこのお湯を好む理由。


 一つに精霊の〝魔力マナ補充〟し、二つ目に神聖な力で魔物たちは寄ってこない。


 というわけで、


「入っていいでありますかっ!?」

「――もちろんじゃ。たんと入ってよいぞ」


 その部屋に満ちた湯の輝きに、両手を広げているロドカルにエレノアが頷いた。

 迷宮の通路から逸れての空間だった。先ほどから、『地図』を見てエレノアが目指していたのはここだろう。

 室内の構造が〝床が割れたり〟〝通路が壊れていたり〟と窪んだ床もあるため――老朽化して使い物にならないものもあったが、それでも疲労回復に使えそうな〝湯だまり〟は多かった。その中で、気に入ったものを使えばいいだろう。



「温泉なんて、久しぶりね。私の故郷の《リューゲン騎士領》には、そういう施設も場所もなかったから」

「ワクワクしますっ」


 見回して確認するメメアに、両手を握りしめて飛び跳ねるミスズ。

 ……と、いうか、ここでおあつらえ向きに『数部屋』に温泉が湧いていてよかった。広い意味では『一つのフロア』にはなるのだろうが、これで〝男湯〟、〝女湯〟なんてものに分けられなかったら、それこそ順番争いを考えるだけでも悩みのタネである。


 ……ミスズや、メメア。エレノアたちは向こうのお湯。

 そして、僕や隊長オランさん、それにロドカルなんかは、手前の風呂でいいだろう。アイビーはクマ(?)なので、どちらでもよかったが、まあ、性別的に男湯だろう。……ここなら《魔物》も近づかない。よって、《主従》が一緒に行動する必要もないさそうだ。



「じゃあ、別れて入るってことで」

「賛成じゃ」


「――ぬ! うぐ。しまった! 俺としたことが!」


 そして隊長オランさんが、僕とエレノアの会話の後、頭を抱え、地面に膝をつく。

 何ごとだろうか? まるで『魔物から痛恨の一撃を受けた!』という姿勢だったが、僕がその深刻な顔の理由を聞くと、


「――俺としたことが、『お風呂セット』を忘れてきた!! アレがなくては、俺の鉄の国の入浴作法が語れぬというのに!」

「「「………」」」


 そして、全員の白い目が突き刺さる。

 エレノアは慣れているのか、『――さ、わらわたちは、向こうで入るのじゃ』と革サンダルの足を踏みしめ、さっさと向かっていってしまう。残された僕らは、がっくりと鎧姿でうなだれる隊長に、何か聞かなければいけない空気を感じた。


「……あの。風呂セットは、この際はどうでも……」

「よくはない! 《冒険者》! ここ、《クルハ・ブル》は火山の熱と、地熱の大地でもあるのだ。温泉が湧き出る国でもあるのだ――! ナメてもらっては困る! そこには深き歴史と、文化というものがある。『風呂入り三原則』から始まる、この国の風習を知らないのか!」


「…………すみません。知らないです」


「むう。とっさのことで、色々準備をしてきていないとは……俺としたことが大いに不覚! ……鉄の国にはな、〝風呂入り音頭おんど〟という歌があってな。俺の父親や、さらにその爺さん――エレノアのお嬢の祖父とも、しきりと躍ったものだ。……クソ、タオルが欠かせぬというのに」


「…………はぁ」


 それを。

 ――『ものすごく、どいうでもいい』という顔で見る、ロドカルや、精霊のクマのアイビーなど、一同の視線が目に入らないのだろうか。地面に両手をつく隊長オランさんは、無精髭の生えた顔を揺らし、地面を殴りつけながら、


「まずは、男どもで謳う! ああっ、舞いながら謳うのだ。それを戦場に望む魂を鼓舞するようにな! そして湯桶で互いに激しくお湯を掛け合い、ぶつけ合う! バーンと、躍動する筋肉にな。それがこの《クルハ・ブル》――鉄の国に古来より伝わる、正統な『湯入りの儀』というものだ!」


「でも、何もないですよ。道具。冒険のセットの〝布〟くらいは、ありますけど」


「…………そうなのだ」


 がっくりと、うなだれ。

 それからようやく僕らは自分たちに与えられた風呂の区画へと足を踏み入れると、肩まで湯に浸って束の間の休息を与えられる。こう言ってはなんだが、お風呂はずいぶんと気持ちがよかった。やはり鉄の国のお湯は、特別製なのだろうか?


 僕がそんなことを考え、『……いいか、浸かるのは五百だぞ。五百秒は浸からないと、健康にいい鉄の国の入浴とは言えん!』とまだ小言を言っている隊長オランさんの横でお湯を堪能してから、


「……そういえば、隊長オランさん? さっき、エレノアの祖父、って言ってましたね」

「ん? ああ。言ったぞ」


「ということは、それって先代の《里長》なんでしょうか? というか、ずっと隊長は里長の護衛だったんですか?」

「む。いや――必ずしも、そうではない」


 と。

 湯船の中。冒険の布一枚となった隊長オランさんが、筋肉の隆々とした体をお温に浸しながら腕を組んでいた。答えを探している。


「俺が仕えていたのは、お嬢の祖父様――先代の里長さとおさだった人だ。残念ながら、今は亡くなっているが。この国の里には代々、迷宮を監視する《里長》という人がいることになっていてな、世襲制だ。

 その祖父様は、立派な人でな。一言目には里のため。二言目にも里のため。『お爺ちゃんっ子』だったお嬢は、その人の口調が移ってしまっているのだよ。俺は――ずっとその人の下で〝採掘師さいくつし〟として働いていた」

「……採掘師?」


「ああ。炭坑に潜り、ときには《魔物》と戦い――命がけで、この国の宝である〝鉄資源〟を取って返るのだ。――そして、鉄はやがて〝剣〟などになり、国外へと取引もされる」


 隊長オランさんは、言った。

 ――それは、はるか昔からこの大陸に存在する職業の一つなのだという。《クルハ・ブル》のような鉄と鉱石の豊富に取れる国では、《採掘師》とい職業は欠かせないものになってくる。山の〝炭坑〟に入り、ツルハシを片手に、資源を掘削して運び出し。そして、邪魔をしてくる低レベル帯の《魔物》なら、仲間と集まって、撃退したりもするのだ。


 その延長で生まれたのが――《採掘師ギルド》。

 ちょうど、僕らが里を出発する前に見た、武装した青年たちがそれに当たる。この《クルハ・ブル》に危機が迫り、それで彼らも『里を守るため』に戦っているのだという。


 ツルハシの扱いから、剣の腕前まで熟達していた。


「……へえ、そんな人たちが」

「僕も聞いたことがありますよ。クレイトさん。

 鍛冶師かじしや、鉱石でペンダントなどを作る装飾師そうしょくし――この国にも名工は多いですが、それらを支える原動力は鉄が豊富に取れる《クルハ・ブル》の採掘師だそうです。そして、資源を運ぶ――《採掘師ギルド》というのが、重要になってくる。昔から、鉄の国――って聞いたら、刀剣の名産地としても有名でしたしね」


 さすが物知り精霊。

 僕が素直に感心していると、湯船の中で頭に小さなタオルを乗せたクマは、丸っこい手を上げて説明をしてくるのであった。


「昔は、この大陸にも〝戦乱〟と呼べる時代がありました。そして、《クルハ・ブル》は良質な鉄と刀の生産地。―――一時期は、〝30.000名〟を超える人々が、この国の需要爆発で、〝採掘師ギルド〟に所属していたそうです」

「えええっ!? ま、マジかよ。そんなにいたのか!」


「……まあ、といっても。昔の話だけどな」


 僕が驚くと。

 その湯けむりの中で、元・採掘師だったという隊長オランさんが、複雑そうに肩をすくめる。


「――まあ、それも過去の栄誉。今では、せいぜい数百人が所属するくらいのちっぽけなギルドになっちまっている。でも、それが一番だと俺は思っている。《武器》がいらないってことは、それだけ平和ってことだろ? 幸い、この大陸の《魔物》を相手にする〝剣〟は――《剣島都市サルヴァス》の冒険者さんたちが受け持ってくれているし。な」

「…………な、なるほど」


「―――〝戦争〟の時が、おかしかったんだ。俺はそう思う。もう、あんな時代が来ちゃいけない。大陸中が熱に浮かされた、暗黒の時代だな。

 その時代を呼ぶとしたら――俺の爺さんなんかは、〝戦争の病〟とか言っていたな」


 隊長オランさんは、湯船で息をついていた。

 世界中が〝魔物〟と戦い始めたばかりの頃の時代。

 誰もが〝強い剣〟を探していたし。それで鉄鉱脈や、良質な武器を求めて資源を奪い合う〝争い〟が始まり。それはやがて、王族たちの〝領地争い〟にまで発展した。


 魔物と戦うため。大切な人を守るため――〝強さ〟を求めたはずなのに。

 それが、いつしか〝争いのための火種〟になってしまった……というのは、何と皮肉なことなのか。……いつの間にか、力を持っている人が〝最強〟ということになってしまっていた。


「…………皮肉なものですね、すごく」

「《剣島都市サルヴァス》でも、同じ現象が起きている気がしますよ。クレイトさん」


 湯船で、僕の相づちをクマの精霊が打った。

 そして視線の先、隊長オランさんは、


「ああ。だから――俺は今の、数百人しかいない《採掘師ギルド》がちょうどいいと思っている。鉄の国の里もな。気に入っている。すごく居心地がいいんだ。『お嬢』も、いい人だし。里の皆も、そんなお嬢を慕ってくれている。俺にとっちゃ――まだ乳呑み子の頃から知ってる、〝娘〟みたいなもんだな」


 ……だから、その〝平和〟を乱す輩は、許してはおけない。

 そう、湯船の中で隊長のオランは言うのだった。


 許せないものには、立ち向かう必要がある。

 ――立ち向かうには、〝力〟がいる。

 その――隊長オランさんも含めた、〝最強〟の二文字に、何を追い求めるかは、人によって違っていた。その心が求める心象風景も。何を守るか。どんな理想を求めるのか。なぜ力を求めるか。


 《冒険者》にも―――〝採掘師〟や〝兵士〟などにとっても、それぞれに価値はあるだろう。なにせ、それこそが、彼らが守るべき〝真価〟に他ならないのだから。


「だから、任せるぜ。―――《冒険》をな。今の時代の〝強さ〟とは、あんたたち《剣島都市サルヴァス》の冒険者だと思っている。《魔物》を討伐できるのも、あんたたちしかいない。……この国を、助けてほしいと思っている」

「……。はい」


 僕は頷いた。

 『負けられない』理由が――また一つ増えた気がした。それは、僕がこの迷宮内に潜ることになった最初よりも多くの事情が絡んで、強く、より前に進む決意になった。


 ――僕の剣で、この国の〝危機〟を払うためにも。

 そのためにも。迷宮内の〝魔物の王〟を討伐しなければならない。


「ただ、《冒険者》さん。……俺の中で不可解というか……。正直、ずっと納得がいかないことがあったんだ。それは、きっとお嬢も同じことを考えていたと思う」

「? 何がですか?」


「魔物の動きが……おかしいんだ。特に、〝この夜〟は」


 隊長オランさんは、そう懸念の色を浮かべて、湯船で話していた。

 その言葉に、『――あ、はい。であります。ボクも感じていたことがあるであります』と獣の手を上げたのは、同じく風呂に入っていた、《短剣》の聖剣使いのロドカルであった。


 獣人は、耳が濡れるのを嫌っているように頭にタオルを巻いた顔で、


「さっきから――《魔物》たちの動きが、ボクが知っている知識と違っているのであります」

「……? どういうことだ?」


「……ボクは、あの。あんまり偉そうなことが言えない〝Fランク〟の冒険者でありますが。――それでも、実力のある姉の冒険者に追いつくために、昼夜問わず、日々《神樹図書館》に入っては――〝魔物の生態系〟についてノートを取っていたであります! でも、今回の魔物の動きは、予想外であります! 全然違うのであります!」


「……?」

「まず。魔物の《骸骨剣士スケルトン》は、こんなに地上近くには、出現しないはずであります!」


 それを、獣人ロドカルは湯船で拳を握りしめながら言った。

 ―――《骸骨剣士スケルトン》は、迷宮の〝災厄〟。


 群れで動き、イナゴのように冒険者や魔物などを襲いながら移動する〝悪霊〟であったが……しかし、その元となっているのは〝冒険者や、古い戦士たちの遺体〟なのである。


 腕のある冒険者や、戦士たちが、迷宮深くの《魔物》たちや《冒険エリア》に挑んだ結果、命を落としたり、罠にかかったりして、死んでしまう。―――結果、悪霊化する。そのサイクルのはずだ。こんな現象は、魔物の濃い瘴気のうずまく〝迷宮内〟でしか起こりえない。


 ……だから、周辺王国では、この地下深くに広がる《ダンジョン迷宮》という名前が、魔物の巣として恐れられる――ので、あるが。


「…………でも、それって〝変〟じゃないでありますか? おかしくないでありますか?」

「? 何がだ」

「――こんな『低層』で、命を落とす冒険者たちが――〝こんなに〟、いるのでありますか?」

「…………あ」


 僕は、そこで目を見開いた。

 意表を突かれた気分だった。予想外の一撃だ。


「ボクの、思い過ごしか分からないでありますが……こんな、迷宮に入ったばかりの〝入口近く〟で、《骸骨剣士スケルトン》たちに襲われるなんて、あり得ないと思うのであります。だって、悪霊化した魔物たちには、その〝元〟となった体が必要なのでありますから」


 ……そうだ。

 確かに。


 僕は衝撃を受けて、深く考え込んでしまっていた。


 ――それが、こんな数がいるなんて。

 〝数百〟、いや、〝千〟近くの数はいた。あの武装白骨たちの〝白い波〟――《骸骨剣士スケルトン》たちの大群は、迷宮の脅威でもあった。


 しかし、それは確かに深い階層に挑む冒険者や、旅人を襲ってくるもののはずである。…………こんな、浅い階層で、僕らを狙わない。


「……そう。俺も、お嬢も引っかかっているのは――まさに、その辺だ」


 隊長オランさんは、腕を組み、静まった湯船の中で頷いていた。


「ずっと迷宮遺跡を管理してきた〝扉の守り〟の一族だからこそ分かるが――たとえば、この地下・第一層で、本当なら苦戦するような魔物が出てくるはずじゃなかった。あの《ラガー・ドラム》のような猛獣もそうだが、なにより――《骸骨剣士スケルトン》の大群は、俺やお嬢でも、今まで見たことがない。…………なんで、表にいるんだ?」


 その疑問に、深く首をかしげる。

 不測の事態が起こることは《冒険》の名物ともいえることだったが、それにしたって、迷宮内の魔物の分布図が動いているような事態は初めてかもしれなかった。


 例えば、最初の冒険エリアである『始まりの草原』で初心者冒険者が歩いていると、いきなり推奨レベル〝90〟近くの竜―――ドラゴンの種族が、飛び出してきたようなものだ。その平原の草むらの中では違和感しかなかったし、そんな魔物に初心者の冒険者が襲われるような事態になったら――島の《剣島都市サルヴァス》の運営たちも、さすがに『分布図』が異常事態であると認めるだろう。


 今、僕らが直面している冒険も、それに近い。


 ……とにかく、不気味で。

 その変化が、どう運ぶのか全くの予想が出来ない。この迷宮そのものが、なにか奇妙な歯車を掛け違っているような違和感を与えてくるのである。ダンジョン迷宮エリアでの『あり得ない』ことが、当たり前のように起きている。《魔物》たちの動きが、おかしい。


「……とにかく。前進するしかない。そう俺は思う。《冒険者》さん」

「…………ええ。そうですね」


 まずは、何を確かめるにしても、この《扉の迷宮》を抜けなければ。

 村に戻る道のりが、ますます、遠くに感じてしまう。――このまま、順調に冒険が進めばいいが。どうなるのか。





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