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01 新たな幕開け



 それから、数週間が経過した。

 僕らの生活は、相変わらずの調子で続いていた。



 先日の戦闘は《グリム・ベアー騒動》として《剣島都市サルヴァス》の語り草となっていた――。というのは、当事者でもあり一番苦労したであろう本人の僕の談であり。実際は、それほど噂話にもされていない。


 というか、一瞬のことで終わった。なんでタイムリーな話題って冷めるのも早いんだろう。もっと騒いで! もっと注目して! と泣き叫びたい僕(だって大変だったんだもの)だけで、周りはわりと『どうでもいい話題』の反応だった。


 まあ、それだけ《剣島都市サルヴァス》という都市が話題性に事欠かない都市ということもあるが。上級生たちは、毎日グリム・ベアークラスの大物を狩っていたりするし、本当に凄い話題となると、《トップランカー》と呼ばれる『第一位』~『第十位』までの上級生たちのきら星のごとく輝く〝噂話〟でもちきりになってしまうのだ。



 ―――いわく、〝砂漠の大国家の要請で、遠征して《竜》を討伐した〟とか、

 ―――いわく、〝王国の偵察隊で、密林で遭難した部隊があり。上級生が、たった一人で救出して生還した〟など。


 快挙、偉業を上げたらキリがないくらい〝凄すぎる先輩たち〟が、《剣島都市サルヴァス》に向けてその注目記事を発して止まないのである。


 対して、僕らというと。



(………どうなってるんだろう)


 僕は自分の学生プレートを開いて、その数値を確認した。



 ―――契約の御子・ミスズ(クラス『F』)

 分類:剣/予備効果なし


 ステータス《契約属性:なし》

 レベル:1

 生命力:5

 持久力:4

 敏捷:11

 技量:5

 耐久力:3

 運:1



 …………戻っている。

 僕は疑いようのない事実に、一人でこっそり部屋の片隅の机に座って《プレート》を見つめるのである。深いため息がでた。


 手の中の財宝が、逃げた気分だった。


 目下もっか、この現象の正体はつかめていない。友人ガフに相談していたが、彼も『そんな怪奇現象、見たことも聞いたこともない』とお手上げの仕草をして、その後二人で《剣島都市サルヴァス》の中央図書館に足を運んだ。(精霊のミスズは図書館に同行してきたものの、『文字が読めません』という理由で入館を拒否していたが)

 ……だが、その行動の甲斐もなく、結果『何も分からない《スキル》』ということだけが分かった。


 どうなっているんだろう。

 不思議なことばかりが起こる気がした。


 僕はそれから、相も変わらず同じような『Fランク』の日々を送り、それから、






 ***



「―――えっと、こんにちは。依頼を受けた《クレイト・シュタイナー》ですけど…………ええと、猫探し………ですか?」


 《剣島都市サルヴァス》の中でも最底辺。

 鈍色の学生証を首からさげた『Fランク』は、この都市でも《金持ち区画》と呼ばれる一部の《上級生》や《その家族》、都市で働く上層部の《家族》などが住まう中央区に足を踏み入れ、その水の都をモチーフにした王国世界の建築様式の、美しいレンガの積み上がった『邸宅』を訪れていた。


 そう。依頼である。



 僕らの生活に『変化がなかった』わけではない。


 ―――依頼。

 それは、《剣島都市サルヴァス》の生徒に与えられる特権である。


 外の王国から流れ込んでくる頼みを《依頼状クエスト》といい、個人を名指しして《冒険》で何かをしてほしいときや、解決してほしいことを頼む。もちろん、お金を〝成功報酬〟として支払ってもらえるのである。

 これが、非常に稼ぎが良いのである。


 一回の冒険に〝1.000センズ~100.000センズ(およそ銀貨十枚から、金貨五枚)〟という途方もない値段がつくことがざらで、学院の生徒たちが血眼になって受けようとする。いわば僕らの収入源でもある。


 ……じゃあ、なんで最初から僕たちは受けなかったのかというと。受けられなかったのである。


 僕らだって、《剣島都市サルヴァス》での収入源でもあるこの〝依頼状クエスト〟を受けたかった。だが、『外の世界の依頼人』たちが、〝誰にでも頼む〟わけではないのである。



 それこそ、見合った実力の学徒―――〝Cランク〟相当の難しいものだったら、それを任せられる学徒を探したり。反対に、〝Eランクでもいいや〟という依頼には、安いお金がかけられたりする。

 《依頼状クエスト》で頼まれる内容というのは、一般的に、



 ―――取ってきて欲しい魔物のドロップ品(たとえば研究用の朱雀鳥の赤羽根など)》の獲得。

 ―――調査してきてほしい地形の調査隊(主に火山地帯や、雪山、未開の密林など)としての派遣。(……主に《魔物モンスター》が強く、近寄れないような場所の領主などが頼むらしい)。

 ―――他の王国世界への連絡用の書簡の伝達。(同じく危険地帯や、紛争地帯などで《一騎当千の剣使い》が必要になる場合)

 ―――貴人を護衛する任務。


 …………などなど。それに当たる。

(ただし、《紛争》や《戦争》などの介入は《剣島都市サルヴァス》側が許していない。あくまでも、この島は王国世界の中での《中立》を保っている)



 すべて、僕らにはほど遠かった《依頼》。


 僕が個人的にやる気を出しても、向こうの依頼する側が『Fランクかぁ』と、おいそれと相手になんかしない。―――だが、先日の《グリム・ベアー騒動》から、少し風向きが変わってきたのである。


 ある意味、好奇心が僕に寄せられた。

 ――『先日の一件は、本当だろうか?』 というものから、『一度は顔を見ておきたい』。というものまで。要は、ボクの名前が売れてきたのだ。僕個人に依頼が少しずつ舞い込むようになってきた。


 一歩、前進である。


 しかし、それでサルヴァスの暮らしが激変するほど、この島は甘くはなかった。



「…………は、はあ。お宅の猫ちゃん……ですか?」


「そうよぉ」


 僕の目の前には、いかにも裕福そうな小太りのマダムが、貴金属類をジャラジャラさせながら話していた。

 場所は、《剣島都市サルヴァス》の区画である。《依頼主》の話を聞いていた。玄関からは上げて貰えない。


「うちの猫ちゃんねぇ、そりゃあもう気品があるからぁ、一目で分かっちゃうのぉ。真っ白のふわふわした毛並みは、上等の綿を浮かべた雲のようでぇ」


「……は、はあ」


「『王国世界』のその辺りの猫なんかと比べて貰っちゃぁ困るのよぉ。うちの猫ちゃんねぇ、なんと! 魔物の混血種なんて珍しい種類なんだからぁ!」


 …………などと。

 指に点けた宝石をジャラジャラと鳴らしながら話すのは、 依頼主のマダムであった。


 う、うーん……。

 猫だとか珍しい品種とか知らないけど、僕個人の意見としては……冒険をさせてほしかった。胸躍るような冒険が。



「頼んだわよぉ」


「…………………………は、はぁ」



 そうして、僕らは玄関を後にして、サルヴァスの昼間の街へと繰り出すのであった。


 歩くのはサルヴァスの〝居住区画〟である。

 この島の表側には《旅立ちの道具屋》や、《聖火の鍛冶師区画》などがあるが―――働いている人たちが住まう街も近かった。

 王都にあるような外灯の下で、僕らは昼間の〝湖の都市〟であるサルヴァスの水路を眺めながら歩いている。



「………マスター。猫さんって、そう簡単に見つかるのでしょうか?」


「うーん。分からない。僕だって猫を飼ったことなんてないんだし」



 声をかけてくるのは、冒険のお供としていつも一緒にいる精霊のミスズだった。

 先ほども、マダムとの会話を後ろから眺めていた。


「……けど、とりあえず探してみるしかないんじゃないかな。一応は、大好物の『魔獣肉ミックス瓶』っていうものを預かってきたけど」



 …………猫のくせに、僕らよりいいものを食べていやがる。


 僕は昼間の街中で、その青空のよく映る瓶を傾けながら思った。


 ミスズの装いは、先日の冒険から変わっている。少し長くなった金色の髪を束ねて、編み込んだ『冒険で邪魔にならないよう』と工夫した姿になっている。少しずつ、ではあるが、僕と一緒に冒険を工夫するようになってきた。

 街歩きにしても、『いざという時』に動けるよう、軽めの冒険の鎧防具を身につけている。その様子は、前回の戦いから、いくらか雰囲気も落ち着いてきた。


 この変化に、友人のガフは『――へぇ。大人びたね』と驚嘆していたようだが、僕にとっては普段から近くにいるのでよく分からなかった。精霊って成長するものなのかな? ミスズの意識が変わってきたのかもしれない。

 寮母さんは、よく『アンタの影響かもよ~』なんて言ってくるが。僕なんかは関係なく、ミスズだって日々頑張っているのだろう。



(………けど、そんなミスズにも、普段から美味しいものとか食べさせてあげたいなぁ。せっかく、前回の冒険で頑張ってくれたんだし)


 と。僕は歩きながら空を仰ぐ。

 最近は《依頼状クエスト》も増えてきたが、どれも街角のゴミ拾いみたいな雑用が多かった。

 依頼につべこべ言うつもりはないんだけど、せめて……冒険くらいはさせてほしい。



 ―――《聖剣の腕》をウリにしている《剣島都市サルヴァス》の生徒には、さまざまな形で依頼が舞い込む。


 だけど、そのすべてが心躍るような〝大冒険〟というわけではなく、剣士からしたら、なんじゃこりゃ、と思うような内容の依頼がある。



 ……まあ、仕事を選んでいられないわけだし。報酬も割がいいんだから、こちらから頭を下げなくちゃいけないような仕事なんだけど。

 《依頼状クエスト》がぼちぼち増えてきたことで、僕らの生活も少しずつ安定はしてきているものの。まだまだ、一人前の冒険者として扱って貰えるような《生活》にはならなかった。――結局、《バイト》、《バイト》だった生活が《依頼状クエスト》に変わっただけの僕の日常である。


 まあ、それでも。《街のバイト》を減らせたことが僕にとっては大きかったのだが。寮母さんへの酒代……もとい、修行代を稼ぐためにはこれが一番の方法でもあったし。これで外の冒険に時間を割くこともできるようになった。



(…………これで、あと『鎧防具』なんてものの、上等クラスのものが買えれば言うことないんだけど) 


 猫を探しながら、《黄竜の季節》の街中で見つける。

 《剣島都市サルヴァス》の道具売り―――(通称・交易通り)の店先には、、西国の砂漠超大国から運び込まれた《交易隊商キャラバン・サライ》の緑鉄装備の梱包された箱や、《剣島都市サルヴァス》内部で鍛冶屋が精製した冒険者御用達アイテムが売られていた。


 青空に映える色とりどりの瓶は、『回復剤ポーション』や『瞬時快癒薬エリクサー』など。栓がついた色とりどりのガラス容器ばかり。これだけでも、冒険はかなり楽になる。


 その他にも、


 ―――赤銅色の魔物ワイバーンの革を使った腰巻き装備。

 ―――長距離馬車にも使われる、ゲルム鉱山で採れた《純製鉄》の胸当て。

 ―――剣を帯びる魔牛革のベルト。

 などなど。実に雑多な賑わいをみせる街角。商人通りがあった。

 冒険者であれば思わず興味津々に手を取ってしまう品々であった。これ一個でも衝動買いできたら、どんなに楽しいことだろう。



(………うぐぐ。か、稼ぎがもっとあればなあ……!)



 僕は座り込んで、泣く泣くその商品を見つめる。

 物欲は人並みにあった。そりゃそうだ、冒険者なのだから。もっと〝お金〟があればな―――と、その島の中。偉大なりし《熾火の生命樹フレア・ユグドラシル》の遠い巨木を背景に、思う。



 冒険がしたい。

 とにかく、胸躍るような冒険が。

 新しい『迷宮』『洞窟』に入りたい。そこで未知の強敵たち《魔人族オーク》《骸骨亡霊スケルトン》と戦って、手に汗握る戦いで『聖剣』を振るいたい。全身の血が熱く沸騰し、自分でも知らないうちに体を軽くして、並みいる強敵をこの手で倒したい。『経験値』『ドロップ』を手に入れたい。――まさに、男子の憧れではないか。


 先日の《グリム・ベアー》との戦いは〝死〟を覚悟した死闘だった。もう二度とはやりたくない。それは思っていた。……けど、終わってみれば、あれはあれで貴重な冒険だったような気がするのだ。

 もう、何週間も前の話だ。《剣島都市サルヴァス》での月日は、王国世界で感じているよりもずっと早い。何週間も前、というだけで、すぐに時間が経っている気がした。



 僕とミスズは、夕方になってようやく《依頼状クエスト》にあった〝白い猫〟を、都市の川辺で発見することができた。それから逃げる猫と追いかける僕らの壮絶な(――あの猫、やっぱり混血種の魔物上がりだった、素早い!)追いかけっこが始まった。


 …………普通は、《ステータス》が高ければ、すぐに追いつけるんだろうけど。


 日が暮れる頃には水で濡れまくり、最終的に『川辺に追い詰め』ることで、依頼の白猫を捕まえることが出来た。



「………へ、ヘックシュ!! この猫めっ……!」


 助けられたのにも関わらず、水辺でまだジタバタ暴れまくる飼い猫を睨みつける。ミスズが慌てて追いかけてきて、その手に持った《好物の餌の瓶》を見せてから、大人しく捕獲することが出来た。


 ―――これでまた、一つ《依頼状クエスト》達成である。


 今月に入ってから十二件。着実にこなしてはいるものの、まだ―――サルヴァスの上級ランクの剣士には、ほど遠かった。


 今日の報酬は、いつもより割がよかった。




 《500センズ》―――およそ銅貨五十枚だ。













***




「お帰りっ! お酒とおつまみは!?」

「…………………………あんた、本当にアレな人だなぁ」



 寮に戻ると、一番に寮母さんが出迎えてくれた。

 …………というか、なんか《食べ物》を待っていた、という感じだが。


 あまり代わり映えのしない学生寮のロビーに、灯りが一つ。その下に、いつものだらしない―――酒瓶一つを大事そうに抱える修道服姿の女性。マザー・クロイチェフが、僕らの帰りを待っていた。めざとく、僕らの『お土産』を見て飛びついてくる。



「…………ああっ! やったあ! ちょっとお高いお酒の《ハニー・バーボン》だ」


 琥珀色の容器をかかげて、そのランプに映るカットガラスの細工に負けないくらい『キラキラ』とした瞳で見上げている。

 ……まあ、なんというか。

 幸せな人だよ、アンタは。


 僕の背中には、水棲の魔物『鎧亀エタル・タートル』でもこんな甲羅は背負わんぞ、というくらい大荷物が担がれている。これも修行の一巻、といった気持ちで背負っているが、これも最近の僕らの『食糧事情』によるものである。


 主に『アタシも一緒に食べる』と勝手に上がり込んでくる三十路手前、生活スキルゼロの寮母さんが夕飯に加わりだしたことで、みるみる食材が減っていくのである。

 ………まあ、それもしょうがなくて。

 それほど僕らは日頃からこの寮母さんにお世話になっているし、この人の昔の冒険話は参考になることが多かった。(………もともと、《剣島都市サルヴァス》の外にいた冒険者だったのだろうか? あまり『昔』の話をしたがらないが)


 目の前では、がさごそと『里に下りたタヌキ』のように店の紙袋をあさっていた寮母さんが、《酒瓶》を見つけて、少女のような素敵スマイルを浮かべていた。……幸せな人だ。本当に。



「アリガトウ。アリガトウ。クレイト。愛してる」

「…………はいはい。うっとうしい笑顔ですね」


 後ろから頬ずりするな、この《酒中毒者グラス・ホッパー》。

 誰かに喜んでもらえるのが好きなミスズが、嬉しそうに寮母さんを見つめている。こら、そんなに甘やかすんじゃない。精霊だろうがなんだろうが、ヒモにする人なんだから。この人は。

 僕たちが部屋に帰ろうと歩き出したが、ふと、もう用事はなくなったはずなのに寮母さんが僕の服の裾をつかまえているのに気づいた。



「……?」

「もぐもきゅもふの(用事があるの)」

「…………しゃべるか食べるか、呑むか。どうにかできんのですか、アンタは」



 僕らはしばらく欲望のままに『飲食』していた寮母さんを待っていた。小動物のようにほほを膨らませて咀嚼していた寮母さんは、それから一気にゴクリと飲み下してから、


「呼び止めたのには、言いたいことがあったからの」

「んなことは、分かってます」


 僕は返しつつ、寮母さんの次の言葉を待った。修行では『鬼』のような強さを発揮するくせに、私生活ともなると三才児以下の知識しかない。こんな人から、僕は普段から『そんなんじゃ、ダメだよ』『武術の基礎が分かっていないわね』とか苦言をされていたのか。なんか妙に腹立たしい。



「クレイトに、急な来客があってさ。私ってば、昼間ずっと寮にいてお留守番をしているじゃない? だから、クレイトは今いません……って話して、また改めて来てもらうように話していたんだけど」

「……? 来客ですか?」

「うんっ。すっごい美人だったよ。見てみるとクレイトもびっくりしちゃうんじゃないかな」

「………?」



 ………来客? 客人? だれだろう。


 僕は気になった。

 心当たりがない客人というのも、なかなか怖いものだ。

 この《剣島都市サルヴァス》での知り合いは他にいないし……。尋ねてきたとしたら、たぶんこの都市の関係者だよな。だとしたら、誰だろう。寮母さんが言うには、一人で尋ねてきたらしい。

 雰囲気も違い、妙に印象に残ったらしいが。



(…………まぁ、お相手も『精霊』なんだけどね)

「?」


 僕が思わず目を向けると、夕暮れで暗くなっていく学生寮の玄関に、人影が立った。上品な軽い音で、寮の扉をノックする。


「……?」

「おっ。噂をすれば、来たみたいね」


 寮母さんが明るい顔をして出迎えると、そこには街角を背景に立つ不思議な『女性』がいた。


 …………不思議な雰囲気の子だ。

 僕は見る。その子は、冒険者の間では見慣れない〝黒〟の服装と、漆黒のヴェールの上に丸い帽子。どことなく〝お人形さん〟のような雰囲気を醸している。瞳は大きく、コバルトブルー。それが、観察するようにこちらに向いている。


 なんだろう。

 そう思ってみていると。


「こんにちは。クレイト・シュタイナー様。わたしは、〝オリヴァ〟と申します。サルヴァスの精霊。以後、お見知りおきを」


「……オリ、ヴァ……」


 驚いたことに、精霊だった。


 片側にスカートの裾を開き、そちら側に足をクロス。

 半身だけで〝貴族の一礼〟のような動きをする―――この〝サルヴァス〟の正式な一礼をしてきた。かなり所作が美しい。



「わたしは、ある施設―――。サルヴァスの『依頼状斡旋所ワーク・セントラル』にて受付をしております。その精霊の一人です」


「……!」


 と、その子は。僕が今まであまり関わってこなかった、ある冒険者の施設についての名前を出してきた。




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