4
「カナツ、大きくなりましたね……」
フローディアの声が、カナツの耳を揺さぶる。
ああ、どうして自分は人間の身体で生まれてこなかったのだろう。カナツは、そんなことを思った。
もしも自分が人間だったら、自分を抱きしめてくれるこの少女を同じように抱きしめてやれるのに。狼の身体では、抱きしめることさえもできない。
「カナツ……」
伝えたかった。氷のようなこの少女に、自分は温もりを教えてもらったと。隣に誰かがいることの心強さも、隣に誰もいないことの寂しさも、教えてくれたのはフローディアだと。
しかし、どうすれば伝わるだろう。言葉は通じない。抱きしめもできない。そんな自分に、何ができるのだろうか。
カナツは、ずっと見てきた。だから、知っていた。フローディアが独りきりで、窓辺に座っては町を見下ろしていることも。それは、誰か客人を待つ期待の表れだということも。それなのに、それを無理矢理諦めてしまっていることも。涙を流すことさえも、彼女が忘れていることも。
あの日、自分に手を差し伸べてくれた少女は、孤独の中に自分を閉じ込めてしまった。
カナツはただ、気が付いてほしかった。人形のようだと自分を評するこの少女に、自分が教えてもらったことを。
「カナツは、あたたかいのですね」
カナツは? 違う。フローディア、あなただって充分にあたたかいです。気が付いて。あなたは、誰よりも優しい人。あの日、助けてくれたこと、忘れてしまったの? あなたはあんなに、陽だまりのようにあたたかく優しい笑顔の持ち主だったのに。
そう伝えたかった。しかし、フローディアにはカナツの言葉はわからない。伝わらないことが、伝えられないことが、カナツにはもどかしかった。




