【番外編4】双子のヒロイン観察日記(双子会計)
双子視点の、二年生時。
ヒロインの攻略っぷりを隣で見てたら、というお話。
少しばかり、生徒会役員らのその後の事が書かれています。
僕は、恵比寿叶夢。恵比寿叶望とは双子で、生徒会で会計なんかしてる者だ。
あれはそう、二年生の春の頃だったかな。
その時僕らは、とにかく暇だった。婚約者達も、海外の花嫁学校に留学中だったので、週末のデートの約束もなかったしね。
そんな時に、ちょうどいい感じで、暇の潰せそうな、面白そうな人材を見つけたんだよねぇ。
すっごい、悪目立ちしてる女の子が。
うちの学園の、寄るな触るなの御法度を破って、生徒会のメンツの側でうろちょろしてさ、幾ら怒られてもめげなくて、面白いの。
その子は優秀な奨学生だそうだ。
そしてとても優しい、気配りのある、頑張り屋さん、だと。
ある人は言う。
「……その……自分の、話を、聞いて、くれて。パティシエは、男の人が多いから、お菓子作り……おかしく、ない。今度、教えてくれ、って」
それから二人は、時折生徒会のお茶菓子を作る間柄になったという。
「……彼女は、お菓子みたいに、笑うんだ。黙ってそばに、いても、気まずくならなく、て。とても……居心地が、いいんだ」
ある人は言う。
「俺の顔じゃなくて、俺の親でもなくって。俺の写真が、好きなんだって。どんだけ誘惑してもなびかないで、平気な顔でどんどん要求を言うんだよ。写真の事だけに真剣でさ、手加減なしで挑んでくるの。凄くない? 何か珍しさについつい構っちゃうんだよねぇ」
ある人は言う。
「あれは本当によく笑う。くるくると忙しく顔色を変えて、いじり甲斐がある女だ。その上、何があっても俺を立てる。全く、あの腹立たしい女に垢を煎じて飲ませたい程によく出来た女がいたものだ」
……人間、いろんな面があるのは当たり前。
だとしても、これって全部、同じ人間を表してるにしては、キャラ違い過ぎない?
「面白い人材がいたねぇ」
「本当、すっごい女優さんだよー」
それにしても、彼女は凄い。
あっという間に生徒会の役員達の好みを把握して、彼らの出没しやすい場所もリサーチし、それぞれの「運命の女」 を演じたんだから。
(ただし、釣られなかった副会長は除く)
僕らはそれから、その女優さん……棚橋星愛を注目する事にした。
え? 厄介な人物と分かっていながら何で注意しなかったのって?
いやあ、あそこまでどっぷり浸かっちゃったら、無理だって。
ちょっと怪しいんじゃない? って指摘したら、みんな不機嫌になるし。わざわざ、長年の連れたちとの雰囲気悪くするのもやだしさぁ。あ、そうそう。役員て大体いつも同じようなメンツが揃うのもあって、それこそ僕らは会長とかと、何年も一緒に活動してるんだよね。
それでも多少は頑張ったの。自身で気づかせる為……と、主には僕の娯楽の為……に、デート現場をバッティングさせたり、正反対の演技をしてる二人の前で演じるようし向けたりもしたんだけどさぁ。
何故か、おかしなぐらいにこれがうまく行かないの。同じ百貨店に行っても、美術館に行っても、これがまあ。出会わないんだよね……。
何だろうねぇ? おかしいねぇって、偶然にしても強運すぎる子だねなんて言ってたら。
とうとう僕らの番が、やってきた。
「ねえ叶夢君、これ、お願いしてもいいかな?」
「そうだね叶望君。あたしもそれ、面白いと思うよ」
彼女は足繁く僕らの前に来て、僕と叶望の僅かな嗜好の差異も見分けてくれた。とても、自然に。
一応まあ、ここは流れに乗って……。
みんなに負けてられないし、ここは恋してるふりするのがやっぱりセオリーってもんだよね? って、僕らは目で合図して。
「凄いよ、星ちゃん。何で僕らの見分けがつくのー?」
「凄いね、星ちゃん。すっごく嬉しいな!!」
二人して棚橋星愛……星ちゃんの周りを、大げさにぐるぐる回ってみたりして、喜ぶふりをするよ。
大女優である星ちゃんの、僕ら向けの演技が生で見られるし、他の生徒会メンツとも、恋愛バトルとか出来るかもだし!!
うわー、これは楽しくてたまらないね!!
「ところで、実際どう思う?」
「別にねぇ。未来のお嫁さん達だってだいたい、僕らのこと食べ物の好みとかで見分けるしー。お遊びで入れ替わってるとわざと食べられないの持ってきていじめてくるから、あんま多用出来ないしー」
確かにまあ、二人まとめて雑に扱われてた時期もあるし、幼少時は何もかもお揃いで与えられるのがイヤでイヤで仕方なかったよ?
子供って、そういうとこあるじゃない。自分だけ特別が欲しいみたいな。
でもさあ……。
「高校生になってまで、引きずらないよねぇ」
「身近にもっとすごいトラウマ持ちいるしぃ、僕らなんて可愛いもんだよねー」
中学の間ぐらいまではたまぁーに、親が送ってくるクチュールのペアルックとか、同じデザインの鞄とかさぁ、困るからやめてよねぇ、的な不満はあった。
変に高級品だから捨てられないのよ、これが。無駄にセンスもいいから使いたくなるし。
でも結局のところ、そう。それぐらいなんだよね。
愛されてるのも分かってるし、別に育児放棄されてる訳でもないし。親がただ、双子ちゃんっていう存在をかわいがってるってだけ。セットなのが当然って思ってるだけ。
……それもまた、おかしな事なんだろうけど。
でも、身近ですんごい苦労してる人を知ってたりするのもあって、そうそう悲観出来ないっていうか、悲劇ぶってるのもなあ、と醒める瞬間があるんだよね。
不幸に酔ってても正気に戻る瞬間がさ。
で、別にいいかぁって開き直ったのが、今の僕らだ。
むしろ双子芸も、からかいのネタになって面白いって方が強い。あと、話が合う相手が身近にいるのって最高じゃない。僕の最高の相方だよ、叶望は。
まあ、星ちゃんについては、そのリサーチ力には頭が下がるなぁって思うけど。
「それ以前にねぇ。多数の男を渡り歩いてるって知ってて、好きになる程僕ら異常じゃないしー。未来のお嫁さんもいるしー」
「まあ、うちのタレントにスカウトはしたいかなぁって思うぐらいかなあ」
なんて、寮の部屋で話し合ったりね。あ。言い忘れてたけど、僕んちは大手タレント事務所でね。だからついつい、光るものを見ると反応しちゃうんだよね。
「あんな面白い人材、なかなかいないよねぇ」
「うんうん。でも、やっぱ生徒会メンツ一気に集めてカオスを見てみたい気もするけどねー」
「でもさぁ、最近じょじょに地に戻してない? そのうち、演じ分けの差異が消えたりして」
「あはは。もしそれが計算なら、本気でスカウトしなきゃねぇ」
「たぶん天然だろうけどねぇ。たまぁーに、化けの皮、いや猫が禿げてる時があるじゃない」
「あー。あの、一人でいる時ねぇ。すごいよねー、獲物を狙ってる目!!」
思い出した僕らは思わず笑う。
「星ちゃんって凄いよねぇほんと。飽きないよ!」
「まあ、何か知らないけど姫ちゃん敵視しすぎてて、そこめんどいけど」
「あれなんだろうねぇ?」
僕らは首を傾げ、その時は流してしまったけど。
後になって、その時の気づきを放り出したツケがとんでもないものを連れてくる事を、知る事になる。
そして、一年後の僕らは。
結局、きちんと反省しているか、今後の行動をみるという形で、僕らは冷清院家から監視を受ける形になったのだけれど。あとまぁ、色々とね、出ることになったよ、お金とか人員とか諸々が。僕らの代は借金漬けかもしんない。
それよりも問題だったのは……学内での騒動、姫ちゃんの吊し上げ会が意外な所まで聞こえちゃったってことで。
どう始末をつけたものか、冷清院も、痛くない腹を探られるのをいやがったのかな……星ちゃんの狂言関連についてのどーしよーもないぐらいのヤバい部分は削られていて。
僕ら生徒会メンツが、あのハロウィンパーティの裏でやらかした事だけが、噂として広がったみたいだ。
それでも十分不味いけど。
まあ、そんな訳で。僕らは、令嬢一人を複数で吊し上げるような、紳士の風上にも置けない人間です。
冷清院と喧嘩してる奴らと見られてます。
と、なれば、今後のおつきあいだって考える人たちも、出てくる訳で……。
「……はあ。まさか、制裁の影響が僕らの未来に響くとは」
「お友達が大変な目に遭ってるの知ってて、問題放置するとかありえないし! って、あの子からメールが来たと思ったら、連絡つかなくなったよ」
「ああ、あの子、正義感強かったもんねぇ。こっちも事務的に、家の名に瑕疵が付くのはいやですから、考え直させて貰いますってさ」
「ああ、そっちの子は、お家大事なお嬢さんだもんねぇ」
「甘く見てたのは確かだけどさぁ。あの盲目状態をどうやって解いたらよかったのさ……」
「はあ本当、遊んでる場合じゃなかったね。僕たちのばか……」
そうして僕らは。
まさかのW婚約破棄に、涙に暮れる事になったのでした。
「「僕の、未来のお嫁さん~!」」




