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興味をひかれるもの

作者: 海沼偲

 私は小さな王国の王様だ。私の言うことは全ての人間が聞いてくれる。飯を作れといえば、文句を言わずに作ってくれる。体を洗えと言ったら、文句を言わずに体を洗ってくれる。抱かれろと言ったら、文句も言わずに抱かれてくれる。そう、ここはまさに俺の願いをかなえる夢のような世界なのだ。

 私には今欲しいものが存在しない。なんでもすぐに手に入ってしまうせいか、この世のすべてのものが私の手元にある。だから、別に欲しいものはないのだ。だから、私は命令をする。私の興味をひくものを開発しろと。

 当然彼らは私のためにそれの開発に取り掛かる。唯一の私の楽しみと言えばそれの完成を待つことだ。

 一日待った。まだできない。

 二日待った。まだできない。

 三日待った。まだできない。

 四日待った。まだできない。

 五日待った。まだできない。

 六日待った。まだできない。

 七日待った。まだできない。

 八日目に私は開発チームのもとへと急行し、進捗状況を聞いてみた。少し声を荒げてしまったかもしれない。

「おお、これはこれは失礼しました。入念にテストをしていましたものですから。これで大丈夫です。きっと、あなたの興味を引くこと間違いなしですよ」

「そうかそうか。では早速使ってみよう。で、どうやって使うのかね?」

「ただ見ていればいいのです」

「それだけか?」

「はい、そうです」

 私は彼の言うとおり、じっとその装置のようなものを見ている。なにやら、コポコポと液体が泡を立てているし、複雑な配管がむき出しになっている。何かのメーターが左右へ揺れている。一体、この装置はどんな素晴らしい機能を備えているのだろう。私の欲求はどんどん高くなる。早く見せてほしい。どんな機能があるのだ。何を起こすのだ。天使でも生み出すのか。それとも悪魔なのか。この世に存在しない美しい生き物なのだろうか。いや、それとも、私に考えも及ばないような驚きの現象を引き起こすのかもしれない。タイムマシンかもしれない。

 私はそれが何を引き起こすのか気になって仕方がなかった。食事をしている間にその機能を使用していたら、また待っていなくてはならないから、食事もとらないで装置の前に座っていた。

一日待った。まだでない。

 二日待った。まだでない。

 三日待った。まだでない。

 四日待った。まだでない。

 五日待った。まだでない。

 六日待った。まだでない。

 七日待った。まだでない。

 八日目には、私は死んだ。



「どうでしたか? 非常に興味をひかれたでしょう?」


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