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酒呑童子



翌日、ちょうど祝日で学校がなかったため、千璃は昼頃から鬼界へと来ていた。

来た瞬間に、「川の中に落ちたじゃないかそしてチップチャプス返せええええ」と言って蒼をブッ飛ばし、更にぽむに言って散々齧らせたことは言うまでもない。

「ここら辺から貴族の屋敷の集合している場所に入るな。昨日会った伊吹の屋敷もこの一帯にある。お前が知ってそうな鬼だと茨木童子とか、絵本に出てくるような赤鬼青鬼の屋敷がある」

「へー、なんか見ただけで雅な雰囲気漂ってますね」

「みんな金持ちだからな・・・俺もお屋敷ほしい、あんな小屋嫌だ・・・」

「ドンマイです。ていうか赤鬼と青鬼は実在したんですか。絵本の中の事だと思ってましたけど」

「普通に存在するぞ。絵本みたいな厳つい奴らじゃなくて、実際は青い髪と瞳、赤い髪と瞳を持つイケメンだけどな。超仲良く過ごしてるぜ」

「何それ超見たい!」

蒼は「今度案内してやるよ」、といいつつ他になにかあったかと思い浮かべて、「あそこなら案内するのにもうってつけかもな」と呟き、歩く方向を変える。

「あとは・・・酒呑童子、っているだろ?」

「あー、酒呑童子って恐ろしいイメージあるけど・・・殺されたんじゃなかったけ?」

「いや、殺されたのは実は全然違うやつなんだ。人間が勝手に勘違いしたから本物は今でも無事に生きてる。こいつも伊吹と同じで俺と親友やってる」

「へえ・・・蒼って意外とすごかったんですね」

「以外は余計だ。ほ・・・ここ、酒呑童子の屋敷だ」

蒼は歩いている横の壁を親指でクイっと指差す。

「へえ・・・ここが・・・」

千璃は首を傾げ、蒼に「ちょっと待っててください」と言って置いていき、タタッと駆け出し、ドンドン前に進むが、かなり走っても入口は見つからず、曲がり角まで来てしまい、さらに首をかしげる。そんな千璃を蒼は遠目に見て、「まあ、最初に見ればそうなるよな」と呟いて、曲がり角を曲がって行った千璃を見て、言った。


「どれぐらいかかるかな」


と。




・・・約二〇分後。

「ハーッハーッゲホッ、も、無理、ゲホッ」

息も絶え絶えになった千璃が戻ってきた。

「四五分か・・・意外と早かったな」

蒼は待ちくたびれたといわんばかりに大きなあくびをしながら、どこへ隠し持っていたのかストップウォッチのボタンを押して、表示された時間を見て感心した。

「ちょっと・・・こ、この屋敷、入口・・・見つからないんだけど・・・」

「やっぱり見つからなかったか」

蒼は疲れてへたり込んでしまった千璃に、自分が初めて酒吞の屋敷を訪ねた時のことを話し始めた。



数百年前。【午後の一時から屋敷に来ないか?】という文が酒呑童子から俺の小屋に届いたのは前日の夜だった。前々から素晴らしい、綺麗だ、と評判を聞いてはいたが、行ったことはなかったので、思わず、

「よっしゃあ!酒呑の屋敷の中が見れる!」

とガッツポーズをして喜んだ。そして、翌日を楽しみにしながら布団に入った。

が、楽しみ過ぎて結局あまり寝れなかったのはまだガキだったんだな、と思う。


翌日目を覚まし、一応早めに屋敷につくようにしておいたほうがいいだろうと、俺は一二時に小屋を出た。

戯京の外れの小屋から商店街を抜け、約三〇分程で規則の屋敷の集合帯に着いた。

酒吞の屋敷は一帯に入ってからすぐ横だといわれていたので、恐らく横の壁の中が屋敷なのだろうと思い腕時計を見ると、約束の時間まであと二〇分もあるとわかり、

「流石に早すぎたかな・・・」

と呟くが、まあ、着いてしまったものは仕方がないと、酒吞の屋敷の入り口を探すが、ずっと白い壁が続くだけで、入口らしきものは見当たらない。

もしかしたら違う側面にあるのかもしれない。

そう思った俺は、駆け足で曲がり角まで走り、南側の側面に入口がないかを見る。が、やはり見つからない。

おかしい。なんでだ、なんで見つからないんだ。こことは違う側面にあるのか?

俺は再び走り出し、一キロメートル余りの南側の壁の横を走り抜け、次に西側の壁を確認する。が、やはり入口らしきものは見つからない。

「なんでだよっ」

再び一キロメートル余りはある西側の壁の横を走り抜け、北側の壁を確認する。が、やはり見つからない。

「だからなんでだよくそっ」

俺はやけになって再び走り出した。

「無いなんてことがあってたまるか!」

と。が、

「はああああ!?」

俺は最初に立っていた場所に戻ってきていた。入口を求めて走り回っているうちに屋敷の周りをぐるりと一周してしまっていたのだ。

「ど、どうなって・・・」

東、南、西、北・・・と、合計八キロ余り走らされ、体力がかなり削られ、息は荒く、思わずその場にしゃがみ込む。

「なんで入口が・・・ねえんだよ・・・」

時刻を見れば一時ジャスト。このままでは酒吞を待たせてしまう。

そのまま座って休みたい所だったが、待たせては申し訳ないのでゆっくりと立ち上がった。と同時に、すぐ横の、真っ白だった壁の一部がいきなり立派な門に変化し、先ほどまではいなかった門鬼も現れ、扉が開くと酒吞が出てきた。

「あ、蒼、来たか」

「酒吞!?」

「蒼・・・なんでそんなに汗だくなんだ?」

「こっちが聞きたいわ!なんで入口がないと思ったらこんなところにいきなり現れるんだよ!一周しちまったじゃねえか!」

「ああ・・・」

酒吞は申し訳なさそうに蒼を見、

「俺はこの通りの美貌だろう?地位も高いし、侵入しようとする輩が絶えないからね。普段は門を術で隠しているんだ。だから、普通に見ても門は絶対に見つからないんだよ」

「あのな・・・それ、先に言えよ!!」

ブチ切れて酒吞を殴ってしまったが、今でも俺は悪くないと信じている。





「というわけなんだ。いやー、本当あの時はマジで怒ったわ。あ、今は術を解除するための鍵的なもの貰ってるか大丈夫だけど」

蒼は話し終えるとそう言ってへらへらと笑う。

「おい・・・」

「え?」

「それを先に言えよっ!」

「ぐふうっ」

話を聞いた千璃に殴られたのはまあ当然だろう。

「全く・・・真相がわかってたのに引き止めもしないで走らせるとか、信じられない」

「いや、あの本当悪かったです・・・」

千璃のパンチが見事に鳩尾に決まり、蒼は地面に倒れただひたすら謝る。

「好奇心だったんです・・・どれぐらいかかるかなーって、あの、本当すみませんでした」

「絶対に許さない」

「すみません・・・」

その時だった。壁の一部がぐにゃりと歪むと、門と二匹の門鬼が突然現れ、そこから一人の男鬼が顔を出した。それを見て、地面にふせっていた蒼は体を起こして立ち上がる。

「やあ、蒼じゃないか!久しぶりだね」

「よー酒吞、相変わらずうざいくらいに背景に花しょってるな消せ」

「はは、ひどいな。でも残念、出そうとして出しているわけじゃないんだ。全ては俺の美貌のせい・・・だからね」

「あ、そういうのいいんで」

「だから蒼、ひどくはないかい?・・・まあ、それはそうとして、お前の隣にいるかわいこちゃんは一体誰だ?見たところ人間のようだけど」

無駄に色気が溢れていて背景に花を背負うイケメンでは表せないほどの美貌を持つ鬼―酒吞童子は、蒼と軽く会話を交わした後、その隣にいる千璃の存在に気づき、クスリと笑いかけ、千璃は思わず赤面する。

蒼はそれを面白くなさそうに見てから、

「こいつは芦沢千璃、見ての通り人間だ・・・まあ、ちょっとしたことが原因で俺と縁を持ってしまって・・・原因は聞かないでくれ」

「へえ・・・」

蒼が千璃を紹介し終わると、酒呑童子はしばらくの間彼女を見、

「君、本当に可愛いね。何で蒼と一緒にいるのかな?そうだ、俺の屋敷にこないか?丁重にもてなさせてもらうけど、どう?千璃ちゃん」

ナンパをし始めた。

あまりの美貌に呆然として見入っていた千璃も突然のことに一瞬自分の耳を疑い、赤面して困惑していた顔は真顔になった。蒼はまたか、と死んだ目で酒呑童子がキラキラオーラを出して千璃に話しかけているのを見る。

千璃は数秒間頭の働きを止めた後に、

「あ、そういうのいいです」

と、先ほどの蒼と同じようにきっぱりと言う。

酒呑童子は驚いたように少しだけ目を見開いて、

「へえ・・・俺が話かけてなびかない人、久しぶりに見たよ。基本話しかけた人は男でも魅了しちゃうっていうのが俺の自慢なんだけど・・・ははっ、自信なくすな」

「おい、そいつそんなことまっっったく思ってねえから」

「言われなくてもチャラい雰囲気からわかる」

「蒼達地味にひどくないかい」

どうやら今度は本当に少しだけ傷付いたようであるが、自分からナンパをして正論を言われて勝手に傷付いたのだからと二人は黙って放っておいた。

酒呑童子は少し呆れたようで、困ったような、寂しさが混ざったようななんとも複雑すぎてむしろ単純なのではないかという位複雑な顔で二人を見てから、

「ま、まあ、二人共見たところ鬼界を歩いて回っているんだろう?屋敷に寄って行かないかい?伊吹と紫月があと十分くらいで遊びに来るんだ。というか蒼にも今日の誘いの手紙は送ったのにまた見ずに捨てたんだろ」

「あ、そうなのか?ごめん捨ててたわー。ていうか伊吹来るのか?遊ぼうっていうとなかなか来ないじゃないか。真面目だから」

「それはあれだ、例の手を使ったんだ。最近の鬼界について議論しようって言って誘った。何回もこの手使ってるのにあいつまだ引っかかるんだ」

「納得。・・・なんであいつ気が付かないんだか・・・あーまあ、そうだな。この頃寝まくってあんまりお前らと遊んでなかったからな、おい、千璃、コイツの屋敷超綺麗だし、俺遊びに行きたいし行ってみないか?酒吞は軽いけど女襲うようなクズではないから大丈夫だ多分」

「あ、そうなの?そんなに綺麗な所なら行ってみたいな」

「ちょっと待って、蒼、多分って何だい」

「そのまんまの意味だよ」

「いや、さすがに俺でも何百歳も年の離れた女子高生を襲う趣味はないよ」

「そんな事言ったらお前の屋敷で働いてる人間の女全員お前より数百歳年下だろ。しかも人妻の奴もいるじゃねえか。やーいロリコン兼人妻好き。変態〜いつも女はべらせやがって爆発しろ〜」

「蒼、前半は納得できるけど後半は個人的な妬みになってるよ」

「千里ちゃんお願いだから納得しないでくれないかな、ロリコンでも人妻趣味でもないからさ、というか人間と鬼なんだから仕方がないんだよ?・・・もういいや、屋敷行こう」

酒呑童子は蒼と千里がもはや言い訳など耳も貸さずにロリコンだの人妻趣味だの言いたい放題を言って収集がつかなくなり、諦めの境地に入ったようだ。

「ああ、そうだな、さすがにお前をいじるのも飽きてきたし」

「やっぱりお前確信犯か」

「え?いじってたんだ」

「千里ちゃんは天然Sなの?ねえそうなの?」

あ、ちょっと!と酒呑童子が引き止めているのに蒼と千里はそれを無視して勝手にもんを開けて屋敷の中へ入っていってしまった。

酒呑童子は、会ってからただひたすらいじり倒されていた一部始終を気の毒そうな顔で見ていた門鬼を睨みつけ、ニッコリ笑ってから「お前たち、減給」と宣告し、扉を開けるように命じ、二人のあとを追った。

門鬼達は泣いていた。理不尽に減給されたのだからそれは泣くだろう。まあ、ドンマイ。





「うわあああ、すごく綺麗!なにこれ、金箔?障子に金箔貼ってあるなんて生で初めて見た!」

「お前騒ぎ過ぎだぞ」

酒呑童子の屋敷は豪華すぎてむしろなぜこんなに豪華にしたお金の無駄にしかならなくないかというレベルで豪華で、よくわからないきらびやかな置物などがたくさん置いてある。

二人は無駄に広い屋敷を歩かされ、広い和室に通された。

そして二人を屋敷に招いた酒呑童子はというと。

「もう、酒吞様意地悪う~」

「ははっ、それは君が可愛いから、だよ」

「やめてくださいよお~」

女の人に囲まれて酒を飲み始めていた。

「・・・なんですかアレ。リア充じゃない私にあてつけてるんですかね」

「通常運転だ。あきらめろ」

「チッ、女と遊び過ぎて早く年老いてしまえばいい」

「同感だ」

「二人とも聞こえてるんだけど」

「「聞こえるように言ってるから」」

▽酒呑童子 は ツッコミ を 放棄した!

二人が酒呑童子がツッコミを放棄したのをいいことにブツブツと恨みと妬みを混ぜた言葉を吐き出していると、それに新たな声が加わった。

「そうよね、あんなに女の子と遊んでるんだし、飽きてきたでしょうから去勢して女の子にしてあげてもいいと思うのよ」

「げ、紫月」

「蒼、久しぶりね」

「・・・誰?」

千璃が後ろを振り向くと、いつのまに来ていたのか忍者のような恰好をしたまた美人な女鬼がいた。

「なんだろう、鬼って綺麗な容姿の人しかいないのかな」

「あら、蒼、この女の子どうしたの?嬉しいこと言ってくれるじゃない。ねえ、貴方、私の屋敷で働くきない?優遇するわよ?」

「は、はいっ!?」

顎をクイっと上に向けられ、妖艶な笑顔で笑いかけられ、千璃は本日二回目の赤面。だが、蒼の次の言葉で面白いほど真っ青になった。

「あ、そいつの屋敷で働き始めると調教されて雌豚に成り下がる事になるぞ」

「あら、ひどい。ちょっと鞭でたたいたり、亀甲縛りで数時間のあいだぶら下がってもらうだけよ?」

「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「うるっせえ。ていうか、それを調教というんだろうが」

「違うってば、なんなら蒼も縛ってあげるわよ?」

「いやいやいやいやいやいやいやすみません結構です勘弁して」

ドSの笑みを浮かべる紫月に蒼は真っ青になってどこかへと駈け出して行ってしまった。紫月さんはそれを追いかけて行って、少し経ってから断末魔が響いた。

千璃は顔をひきつらせながら合掌し、私の代わりに餌食になってくれてありがとうと心の底から感じた。

合掌し終わってから顔を上げると、目の前でものすごく困っている様子の女中さんがいて、横には少し前から来ていたのであろう伊吹と風助がいた。

「さっきぶりだな。千璃さん。紫月は毎回ああだから気にしないでいい」

「蒼くっそ、あの逃げっぷりヘタレファーーーーーーははははははっははっはいでででででで千璃ちゃんなにすんのおおお頬つねんないでえええ」

「伊吹さんこんにちは。風助さん、つねられたくなければ静かにしてくださいあと伊吹さん、聞きたいんですけど」

「なんだ?」

「あの蒼の異様な怖がりようは何ですか」

「ああ・・・」

ちょうど伊吹がやってきたので、千璃は風助の頬をギリギリとひねりながらそう尋ねる。すると、伊吹はとても言いにくそうに眼をそらすと、

「蒼は、最初に紫月と会ったときに気に入られて屋敷に連れ込まれて、調教されかけたんだ・・・。何をされたのかは知らないが、話を聞いたら、「一瞬でも危ないものに目覚めかけた俺を殺してくれえええええええええええええええ」と言っていた・・・」

「・・・うわあ」

何に目覚めかけたのかはあえて考えないようにしておこう、と千璃は思った。

「ねえ千璃ちゃん、それより手を放してくれない?君も大概ひどいから!誰か助けて頬がちぎれるうううううううう」

「いつも三人で集まるときの数倍もカオスになってるな・・・」

酒呑童子はもはやその光景のせいで女をはべらす気も酒を飲む気も失せ、はべらせていた女に酒を持って行くように命じながら遠い目をしてそう呟いた。




数分後。紫月と蒼が戻ってきて、千璃が風助の笑いを止め、全員が用意された座布団の上に座り、ようやく落ち着いたところで、酒吞童子の側近である女鬼の木南がなにやら箱を持って部屋に入ってきた。

箱を下に置いた時の音からして、中身は結構重そうである。

「じゃあ、始めようか」

酒呑童子がそう言って、皆に配り出したのは・・・、

「なんですかこの札束」

千璃は目の前に置かれた千円札で構成された札束を前に絶句する。

「ああ、そうか。千璃ちゃんは今回が初参加だったね。じゃあ、ルールを説明しなけらばならないね・・・木南、説明を任せる」

「わかりました。このゲームには酒吞様、蒼様、紫月様、そしてその時々によって変わるのですが、数名の側近が加わります。今この場では風助様、私ですね。

このゲームでは、さまざまなジャンルの遊びをしますが、その際には各自十万円支給され、負けたら五千円他の全員に配り、勝ったら逆に五千円全員から貰えます。

まあ、早い話がギャンブルをしてもらいます。最終的に自分の手元にあるお金は持ち帰っていただいて結構です」

「え?持ち帰っていいんですか?」

「はい!ただし、ゲーム中にスカンピンになってお金が勝者に払えない場合は自分の財布からお金を出してもらいます」

「えええええええ」

「では、ゲームを開始させていただきます!」

千璃が慌てる間もなく、ゲームの火ぶたが切って落とされた。




結論から言うと。

▽蒼・・・五万円  ▽千璃・・・プラス十四万円  ▽酒呑童子・・・十二万円

▽紫月・・・二十五万円  ▽伊吹・・・七万円  ▽木南・・・八万円

▽風助・・・マイナス一万円


「うわああああああ赤字だあああああ」

「紫月さん心の中でも読めるんですかババ抜きとかポーカーらへんでサトリかと疑いましたよ!?」

「やだ、そんなことないわよ~」

風助は一人だけマイナスになってしまい、普段の笑い上戸は影をひそめ、大叫喚して最終的に地面に倒れていた。

ゲームはババ抜き→神経衰弱→ポーカー→人生ゲーム→花札→麻雀→その他etc・・・の順番で行ったのだが、最初のほうの心理戦のゲームでは紫月が圧倒してどのゲームも一番で上がった。本当に心を読んでいたのかもしれない。

人生ゲームでは酒呑童子がまさかの最下位、蒼が優勝、という結果になった。

が、そのことで蒼が、

「うえーい、俺一番金持ち!大金持ち!ん?悔しいかね庶民の諸君?」

と調子に盛りすぎて、ブチ切れた千璃と紫月、酒呑童子によって足を縛られ、少し休憩にしようといって皆がお菓子を食べながらお茶をすすり、が小さい口で頑張ってお菓子を食べているのをみて和んでいる横で泣きながら吊るされることになった。

休憩終了後、地面に卸された蒼は頭に血が上って死にかけていたが、自業自得なので誰も心配はしなかった。




時刻は夕方五時。

「いやー遊んだ遊んだ」

「疲れた・・・ああ、俺のお金が、財布に埃しか残ってない・・・」

「これだけあれば今までそろえられなかった本のシリーズとブルーレイがそろう、ふふふふ」

「千璃気持ち悪いぞ」

「あら、蒼、女の子にそんなこと言うと・・・もぐわよ?」

「いやああああああああああああああっていって、毛玉鼻を齧るな!」

「・・・そろそろ屋敷の者たちが夕食を用意し始めているころだ。すまないが帰らせてもらう。風助、血なんて吐いていないで帰るぞ」

「俺の・・・一万円・・・」

「あ、私もそろそろ家で可愛い雌b・・・女中ちゃん達が待ってるから帰るわね」

「絶対に私はツッコんだりしない(私もそろそろ家帰らないと・・・)」

「千里様、本心と言葉が逆になってます」

ゲームが終わってみればすでに日が暮れ始めており、全員がぞろぞろと帰りだす。

「じゃあきょうはこれでお開きとしよう。また遊びに来てくれ」

酒呑童子がそう言い、その日はそれで解散となった。


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