立ち止まる
掲載日:2026/08/22
空はすでに暗くなってしまった。
鞄に荷物を入れ、いつもの帰路に着く。
線路沿いにある、高台の脇道。
あたりは閑散としていて、落ち着かない。
でも、この道を使わないと。
脇道の途中にある公園。
その入口に、公衆電話ボックスがある。
人工的な光が、ガラス張りの仕切りを冷たく照らす。
使われる様子もなく、ただのオブジェと化していた。
コン、
通り過ぎる時に、いつも音がする。
でも、誰もいない。
音がするのは、いつも、一度だけ。
気になりつつも、通り過ぎる。
毎回、同じ音がする。
いつしか気にならなくなっていた。
湿度の高い、雨の夜。
傘をさしながら、今日も帰っていた。
コン、
まただ。
目を向ける。
公衆電話のガラス扉。
雨粒の、向こう。
人工的な光の中、
わずかに曇ったガラスに、
手形が、ついていた。
つい、立ち止まる。
ギィ、
公衆電話ボックスの扉が、開く。
目が、
合って、
しまった。




