第四話
次の日。
膝丈ほどの草が風に揺れ、さらさらと音を立てる。
空は高く、雲は薄い。視界を遮るものもなく、遠くまで地形が見渡せた。
その中に、ぽつぽつと動く影。
近くにいる一角兎に視線を向ける。
二体、これくらいなら大丈夫そうかな。
少し距離を空けて、草の間を跳ねている。
普段は大人しいが、一定距離に入れば一気に詰めてくるタイプのモンスター。
「こんなもんかな」
試すには悪くない。
一歩踏み込む。
草を踏み分けた音に反応して、二体が同時にこちらを向いた。
次の瞬間、地面を蹴る。
一直線の突進。
距離を一気に詰めてくる。
「……速いな」
一体目の軌道を見て、横に体を流す。
すぐ横をかすめていく。
もう一体は、少しタイミングがズレた。
肩に軽く当たる。
衝撃は軽いが、HPがわずかに減る。
「このくらいなら――ヒール」
淡い光が体を包む。
減ったHPが即座に戻る。
「回復量は十分。クールタイムも短い」
詠唱はほぼなし。
連続使用も可能。
多少の被弾は問題にならないね。
「さすが大人気VRMMORPG」
思ったより自由に動ける。
後ろへ下がる。
だが、すぐに距離を詰められる。
草をかき分けて跳ねる動きが速い。
「逃げるのは無理だな」
逃げるより、合わせる。
次の突進。
地面を蹴る瞬間に合わせて、横へ。
回避成功。
「見てからでもいけるじゃん」
そのまま一体に近づき、戦杖を振るう。
軽い手応え。
ダメージは大きくないが、確実に削れる。
もう一体が背後から飛び込む。
「ここでヒール」
被弾と同時に回復。
HPの減少はほぼゼロに抑えられる。
「……いいな、これ」
回る。
戦闘がちゃんと成立している。
そのまま一体を削り切る。
兎が崩れるように倒れる。
一体、撃破。
残り一体。
「一対一なら余裕だな」
もう一体も難なく撃破
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小さく息を吐く。
風が頬を撫でる。
動きを見る。
タイミングを合わせる。
回復を差し込む。
少し意識するだけで、安定感が変わる。
「……これなら、もっといけそうだな」
視線を広げる。
周囲にはまだまだ兎がいる。
少し距離を取って、三体をまとめて捉える。
「次は、三体」
自分から範囲に入る。
三方向からの突進。
草が一斉に揺れる。
「……さすがに多いな」
一歩下がる。
だが、避けきれない。
一発、二発。
衝撃が連続で入る。
HPが一気に削れる。
「――ヒール、リジェネ」
回復。
だが、すぐに次が来る。
足元の草が踏み荒らされ、視界がわずかにブレる。
「……やばいな、これ」
さっきとは違う圧。
でも――
「……いいな」
ギリギリのライン。
判断を間違えれば崩れる。
でも、読み切ればいける。
「……落ち着け」
視線を固定する。
三体の動き。
跳ぶタイミング。
微妙にズレがある。
「一体ずつ相手してやんよ」
ターゲットを絞る。
一体に集中。
攻撃は最小限。
残りは回避。
ヒールは――
「ここ」
被弾直後。
回復量を最大限活かす。
「……いいじゃん次はお前な」
徐々に削る。
一体、撃破。
圧が一気に軽くなる。
「なんだ、結構いけるじゃん」
残り二体。
同じ要領で処理。
草の揺れも、相手の動きも、さっきより鮮明に見える。
数十分後。
周辺にいた一角兎の最後の一体を倒し切る。
草原に、風の音だけが戻る。
「……」
視界の端に、小さく光が走った。
ウィンドウが開く。
【スキルを習得しました】
「……ん?」
表示された内容に目を向ける。
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【クイックステップ】
回避行動に補正がかかる。
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大きく息を吐く。
周囲には、踏み荒らされた草と、消えていく兎の残滓。
戦闘の痕跡だけが残る。
「さ〜て〜スキルスキル〜♪」
さて、今回の戦闘でスキルだけじゃなく結構な経験値も手に入れた。
【ステータス】
プレイヤー名:nayuta
種族:竜人
ジョブ:神官
レベル:8
HP:100
MP:120
STR:15
VIT:10
DEX:10
AGI:10
INT:10
MND:16
LUCK:10
【装備】
武器:初心者用戦杖
頭:なし
胴:初心者用ローブ
腕:なし
脚:初心者用ズボン
足:初心者用ブーツ
装飾:なし
【スキル】
・ヒール Lv2
・リジェネ Lv1
・クイックステップLv1




