第三話
草原を歩く。
風に揺れる草をかき分けながら、足元に視線を落と
す。
「……これか」
周囲の草より、わずかに色が薄い。
しゃがんで触れると、ウィンドウが開いた。
【薬草】
HPを微量回復する基礎素材。調合素材として使用されるほか、初期クエストの納品対象にもなっている。
【薬草を入手しました】
「なるほどね」
見た目で判別できるタイプか。
初心者向けとしては、かなり分かりやすい部類だろう。
このゲームは全体的に自由度が高いと聞いていたけど、こういう基本部分はしっかりしているらしい。
もう一つ、近くの薬草を回収する。
歩いて、見つけて、取る。
単純な作業だが、テンポは悪くない。
視線を少し上げる。
少し前を歩く暁月が、ついでのように一角兎を処理していた。
複数体をまとめて引いて、無駄なく処理していく。
慣れてるな、と素直に思う。
……まあ、オープンベータからやってるなら当然か。
「そういえばさ」
薬草を回収しながら、何となく口を開く。
「ん?」
「このゲーム、配信しないの?」
暁月は少しだけ振り返る。
「あー、するよ」
「今は?」
「もうちょい先。いい感じの場所あるんだよ。そこで先輩と合流して、そのまま配信って感じ」
「なるほど」
配信映えするポイント、というやつだろう。
確かに、ただの草原よりは見栄えがいい場所の方がいいのかも。
「最初はソロじゃなくて、コラボ寄りでいく感じか」
「まあね。その方が見てる側も入りやすいし」
納得ではある。
あいつは昔からそういうところ、ちゃんと考えている。
ただのノリでやっているように見えて、意外と計算しているタイプだ。
……昔から、というか。
そもそも彼は配信自体、かなり長くやっている。
高校一年の頃からだったはずだ。
最初は個人で、完全に趣味。
そこから少しずつ視聴者が増えていって、大学に入る頃にはそれなりの規模になっていた。
そして入学してすぐ、スカウト。
今はネクサスという企業に所属して活動している。
たまに自分が映ることもありなゆたニキと呼ばれるようになってしまっている。
向こうも分かっていてカメラに入れているし、今さら隠すような関係でもない。
「……あ、そうだ」
暁月が思い出したように言う。
「明日さ、ログインできないわ」
「なんで?」
「ちょっと仕事でね」
「じゃあ明日はソロか」
「そうなるね」
「まあいいけど。……ソロでどこまでやれるか、試すのも楽しそうだしね」
このゲームは、基本的にソロでも進められる設計になっている。
むしろ、その自由度の高さが売りの一つだ。
「じゃあ先に進んどくわ」
「いいよ。どうせ追いつくし」
「言うね」
「事実でしょ」
軽く笑う声。
そのまま暁月は前に出て、また一角兎に向かっていく。
明日はソロかあ思ったより楽しみかもしれない。




