表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/18

8 ログイン


 その後。やってきた電車に乗り、ヒナとジュウゴは他愛のない会話をして、ともに同じ駅で降りる。帰路は途中まで一緒だったのでそこまで歩いて、それから別れてヒナは自宅へと帰りついていた。


(……夢みたい……)


 家族がお帰りと言ってくるのも上の空の様子で受け答えて、彼女は自室へと入っていく。トートバッグをベッドの上に置くと、さっそく机の上に置いていたパソコンのスイッチを入れて『ユートピア』を起動した。

 少しのロード時間を経て、見慣れたゲーム画面が表示される。ヒナはコントローラーパッドを握ると、自身のキャラを操作していく。


(みんな来てるかな? もう帰ってるころだと思うけど……)


 帰ったらログインすると言っていたので、もしかしたらすでにログインしているかもしれない。そう思いながらヒナはパーティーのチャット画面を開く。


(あ、ツカサさん……ホーマさんがログインしてる)


 ヒナはうれしくなって、すぐにチャットで話しかけた。


『ヒーナです。いま帰りました。ホーマさんこんばんは!』

『こんばんはー! ニーユとカーンはまだみたいねー。ニーユはともかく、カーンは居眠りしてそーだけど』

『あはは』

『いまギルド? 合流しよっか』

『街の宿屋です。それじゃあギルドの前で待ち合わせしましょうか』

『おっけー』


 チャット画面を端に移動させてから、ヒーナは宿屋を出てギルドへと向かっていく。現実での時刻は夜だが、ゲーム内には数え切れないくらいのプレイヤーが街を行き交っていた。

 『ユートピア』ではプレイヤーの視点を一人称と三人称で切り替えることができる。一人称視点ではFPSのような臨場感の伴うゲームプレイを体験でき、三人称視点では従来のRPGのように俯瞰的に周囲の状況を把握することができる。


 この二種類の視点を随時切り替えることによって、より充実したゲーム体験を実現させていた。また先日、開発元のユニバース社から『より画期的で刺激的なゲームシステムを開発中です』との告知があった。

 その告知に対して、多くの人々が関心を寄せており、様々な推測がネット上に飛び交っていた。いわく、より高難易度のやりこみコンテンツの実装、いまなお発展し続けているVR技術やAI技術の導入、はたまた現実へとなにかしらのフィードバックをおこなえるようになる……などなどである。


 実際にどのようなサービスが提供されるのかはまだ分からない。しかしどのようなものだとしても、ヒナも含めて多くのプレイヤーがそれを待ち望んでいた。

 一人称視点のヒーナがギルド前に到着すると、ホーマがすでにいて口に手を当ててあくびをしていた。このゲームではキャラの動作を自由にメイキングすることができ、パソコンのキーボードやコントローラーパッドのボタンにその動作を割り当てることができるのである。


『お待たせしました。眠いんですか?』

『ちょっと飲み過ぎちゃったかもねー。カーンに言ったら、やっぱ酔ってたんじゃねーかってドヤされるかもー』

『あはは。カーンさんとニーユさんはまだみたいですね。ニーユさんはさっき別れたから、もう帰ってるころだと思うんですけど……』

『お、リアルご近所さん? 羨ましいねー。あんな子とご近所さんとか』

『え、あ、その……』


 焦りのマークを出していたわけではないが、ホーマはヒーナの様子に気づいたようだった。


『あ、ごめんね、ゲーム内では個人を特定できそうなリアルの話はご法度だったね。いまの質問は答えなくていいからね』

『す、すみません』

『謝んなくていいって。悪いのはこっちだから。って、二人も来たみたい』


 ヒナがチャット画面に目を向ける。ちなみにいまのヒーナとホーマの会話は、キャラが表示されているメイン画面上での会話である。ヒナは画面下部にテキストとして表示するように設定しているが、それぞれのキャラのそばに漫画の台詞のように表示することも可能となっている。

 カーンとニーユはヒーナとホーマのチャット会話に気づいたらしく、二人もギルド前にすぐに来るとのことだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ