11 ヴォルカニックドラゴン
そうこうしているうちに、やがて山頂が見えてくる。カーンが言った。
『いよいよボスエリアに到着だ。回復は済ませたな?』
『もち』『俺も大丈夫です』『わたしも大丈夫です』
『よし。じゃあ行くぞ』
四人がボスエリアへと足を踏み入れる。火口が噴火する演出とともに真紅のドラゴン……ヴォルカニックドラゴンが現れて、雄々しい咆哮を上げた。
『いつも討伐してるからって油断すんじゃねえぞ! 気を引き締めろよヤロウども!』
『そっくりそのまま返すよデカブツ! いっつもあんたがダメージを一番受けてんだから!』
『お前が避けきれてねえから庇ってんだろうが! あとデカブツって言うな!』
『よし行くよ!』
『誤魔化すな!』
そんなことを言い合いながらもホーマとカーンが強力な攻撃準備を始めて、その時間を稼ぐためにバトルマスターのニーユと剣士のヒーナがドラゴンへと向かっていく。
…………。しばらくして、ぎりぎりまで疲弊したニーユ達に代わって、ヒーナがドラゴンへとトドメの一撃を放った。戦闘が始まってから時間にしておよそ十分ほど、ドラゴンが最期の咆哮を上げて地面に倒れていく。戦闘中降り続けていた火山岩の隕石群も停止する。
戦闘終了を告げるBGMとともに、レベルアップのSEが鳴り響く。
『やったー、レベルアップー。最近覚えたスキルなんか、面白いくらいめちゃくちゃ上がってくよー』
『浮かれんなって。ボスがいなくなったあとはザコが湧くんだから、油断禁物だ』
『分かってるってー』
ホーマとカーンがそんな会話を交わす。ニーユがヒーナに近寄って聞いた。
『今日のレアドロップはどうでした?』
『うーん、いつもと同じみたい。火山竜の竜鱗に翼に牙に爪に……あとは肉くらいかな』
『もうそれらで作れる装備やアイテムはあらかた作りましたからね。じゃあ、いつも通り高値で売れるようにちょっと加工してから、売却して資金に変換ですね』
『うん、そうだね』
ここ最近はずっとドロップ品を売却しているせいか、資金が貯まりに貯まっていた。なにかに使おうにも、店で買える装備はいまよりも強くなく、アイテムも大量に買い込んでいたので、使う当てがなく貯まり続けているのだった。
ヒーナがリザルト画面を閉じて、ニーユとともに二人の元へと向かおうとしたとき、視界の端の岩陰でなにかが動く気配がした。さっそくザコ敵がポップアップしたのかと思ったとき。
『⁉ 危ねえ!』
『わっ⁉』
カーンがそばにいたホーマを突き飛ばした。ホーマが地面に倒れ、ヒーナとニーユが驚くなか……カーンの胸元に一本の魔法の矢が刺さっていた。
上級魔法の闇魔法の矢だった。ドラゴンとの戦いで消耗していたカーンの体力が、その一撃によってゼロになる。
カーンの周囲に淡い光が現れる。死亡時のエフェクトだった。
『ぐ……まずったぜ……』
水晶が粉々に砕けるように、カーンの身体が散っていく。周囲の地面にカーンの装備や所持アイテムが散らばっていった。
『ヒャッハー! 仕留めたぜー!』
岩陰から現れたプレイヤーが狂喜の声を上げた。




