10 居心地の良い雰囲気
ボス敵までの道を歩きながらホーマが愚痴をこぼす。
『ボスまで一気に転移できたら楽なんだけどねー』
『それは仕方ねーだろ。さすがに便利になりすぎたらゲームバランス崩れちまうだろうし。いまでさえレアドロップの独占にならないように、パーティー間で取り決めてるとこもあるみてえだし』
『ま、それに関してはここのボスのレアドロップをほぼ独占してる僕達が言うことじゃないけどねー』
『倒せるのが俺達だけ、いや、ヒーナだけなんだから、それも仕方ない』
ホーマがヒーナに向いて言う。
『他の人達が倒すの手伝ってって言ってきたら、ヒーナはやっぱり協力しちゃう? 僕達がしてるように、経験値稼ぎを手伝って、トドメの報酬はあげるからって言われたら』
『あ、その……』
ヒーナは返答に困ってしまった。その条件だけ見れば、ホーマ達も他のプレイヤーも変わらないからだ。
だから、返答次第では三人の気持ちを傷つけてしまうかもしれないと思ってしまう。
しかしヒーナがなにか答える前に、ニーユが口を挟んだ。
『俺はべつに構いませんよ。その条件だけなら、ヒーナさんにとっては俺達とやるのと変わりませんし。俺達に止める権利はありません』
『『『…………』』』
三人がニーユを見る。カーンが言った。
『そりゃそうだ。むしろヒーナを止めたりなんかしたら、俺達のほうこそ文句を言われちまう。ブーメラン刺さってるぞってな』
『そだねー。ま、そもそも実力的に止められる力なんてないんだけど。ヒーナにワンパンされちゃうー』
『お前が聞いたことなんだけどな』
『運営がもっと倒しやすくてレアドロップしやすい敵を出せばいいよねー』
『話を逸らすなコノヤロー』
『わはは』
一瞬シリアスになっていた雰囲気だが、和やかな感じになる。数時間前のオフ会で感じた楽しい感じ、居心地の良い雰囲気に、ヒーナは内心で安堵していた。
……この人達とパーティーを組んで良かった。ヒーナはそう思うのだった。
それからボス敵までの道のりで出てきたザコ敵を蹴散らしながら、四人はボスのいる山頂を目指す。そのザコもまたヒーナ以外の三人が経験値稼ぎとして主に戦い、厄介な敵や回復が間に合いそうにない状況のときにヒーナが前線に出て一瞬で片づけていた。




