4.目覚めからカオス!
でかい猫に怒ったかと思うと、赤く目を腫らした顔でこちらをジーっと見るので、力が入らないなりに敵対心はないとニコッと笑ってみる。確か子供を落ち着けるには笑顔がいいとか聞いたことがあるし。
「おお、動いておる…笑っておるぞ……ううぅっ!」
さらに泣き崩れる童女…こりゃダメだ。こうなったら近づいてどうにか慰めようと手に力を入れて立ち上がろうとするが、やはり思うように動かない。
「うごけって!ないてる子をほうっておけないだろ!」
更に力を入れようとすると、少しずつではあるが体が馴染むというか感覚が強くなっていき――どうにか腕立て伏せのような状態にはなれた。中途半端だけど動けるからよし!
「んぐぐぐぐ…」
足はどうやっても動く気配がないので、そのままハイハイの動きで近づいていく…なんで寝ている布団が中央に置かれてるんだ!ついでにやっぱり体縮んでるよね!?
『ほう、目覚めたばかりで巡りも最悪だってのに健気なもんだねぇ』
「そ、そういうならてつだって!」
『嫌だね。惚気に付き合う気はないよ』
おのれ気分屋のお猫様め!面倒そうな顔して首元を後ろ足でカキカキしおってからに…ブラッシングするぞ!この紅葉みたいな小さな手で持てるブラシ無さそうだけど!
『なんだか寒気がするね…全く、ほれ!いつまで泣いてんだい!』
「んぐっ…な、泣いてなどしておらん!」
『なら早く抑えに行くんだね。陣から出ちまうよ』
「何!?」
陣とは一体何だろうか、魔法陣とかかな?…あ、よく見たらこれ畳の縁じゃなくて何かで書いた模様だ。何度か超えてきちゃったけど……うへぇ手が真っ黒だ!?墨だこれ!
「いかん!ギンよ止まれ!ハウスじゃ!ストップ!」
そこまで言わなくても止まるって。というかハウスはペットに言う言葉なんでやめていただきたい。
「ギンってよぶってことは、ほんとうにキンちゃん?」
「そうじゃ!だからギンよ、もうちっと内側に戻っておくれ!」
本当に金ちゃんかぁ…随分と縮んでない?初めて会った時ぐらいになってる気がするけど……あ、ギンってのは僕のあだ名ね。どうも神門銀之助でございます――うちって古い家だからか名前も古風なんだよね。
「これ!何もない場所に頭を下げとる場合か!」
『あたしたち猫みたいに変なとこを眺めてたね』
あの何とも言えない虚空を眺めるポーズをしていたというのか。確かに僕は今四つん這いだし見えなくも…ないのかな……ただそれよりもだ。
「もどりたいはもどりたいんだけど…」
「けど?」
「げ、げんかいです」
勢いでここまで進んだけど腕しか動こかせないし、尚且つだるさも抜けない状態でハイハイしたもんだからここで体を保つことしかできなくてですね…手も小さいし支えるのがきついから、プルプルと生まれたての小鹿になるしかないんだ。
「なんと!すぐに戻してやるからの…ふぐぐぐ!」
すぐに金ちゃんが近づいて運ぼうとしてくれてるけど、流石にその小さい体で運ぶのは無理じゃないかな?
「こ、ここまで力が減っとるとは…だがずる事ぐらいは出来る!」
「キンちゃん、それぼくがすみまみれになるよ」
幾つか墨で書かれたらしいモノを越えてきたからね。多分この服の膝から下は真っ黒になってるとは思うけど…というか後ろに線が出来ちゃってるな。
「といっても、早う陣の中央にお主を戻して書き直さなくてはいかんのだ!まだ安定しておらんのだからな!」
「あんていしてない?もどってきたとかもいってたしいったいなんのこと?」
「……それは後で」
『せわしない奴らだねぇ…むぐ』
「うわぁ!」
「ギン!?んぐっ!」
のっそりと近づいてきた化け猫(仮称:火車さん)がグイッと僕の服の襟を咥えたことにより、足を引っ張ろうとしていた金ちゃんがスコンとひっくり返った。あれは痛そうだなぁ…
「何をするつもりじゃ!」
『何って、布団に運んでやるだけだよ』
そのままポテポテと墨の模様を踏まないように歩き、僕が目覚めた布団にポスッと口から放して置いてくれた…ちょっと上から見たけど、布団の中心に円だったり文字だったり文字が書かれていたし陣てコレかぁ。
「あ、ありがとうございました!」
『なぁに、あいつの面白い反応も見れたしその駄賃だよ。ついでに運ぶってのはあたしの仕事だからねぇ』
そう言ってニヤッと笑う化け猫さん…猫の顔でニヤッと笑われるとちょっと怖いな!
猫のブラシって嫌がる子は本当に嫌がる。
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