表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

大なり小なり

作者: アルチ

人には大なり小なり触れてほしくないものがある。


並ぶ自販機の向こうから歩いてきた上司の中川さんが


「おう、おつかれ」


と僕の肩をたたいた。あったかい。彼の平熱はきっと高いに違いない。


彼は恩人で、入社したてのころに僕の失敗を上司からかばってくれた過去がある。中川さんにとっても上司だったのに最後まで、大したことじゃない。これから何とでもなる。そういいながら僕の味方でいてくれたのだ。


その時、感じた人としての温もりは今でも忘れてはいないし、忘れない。


その時、その場にいた同僚の坂井は、今でもまだ会社の人間に、そのことを吹聴するのを日課のように立ち回っている。なんて器の小さな男なんだろう。彼がいつか、中川さんのような大きな人間に変貌することは、きっとこの先もないのだろう。


午後の休憩時間、並ぶ自販機の向こうのトイレに駆け込むと、水の流れる音と同時に個室から中川さんが現れた。


「おう、奇遇だな」


その言葉の使い方があってるのかどうかは、わからなかったけど僕は


「そうですね」


と返事をした。


彼はそのまま手も洗わず出ていった。


人には大なり小なり触れてほしくないものがある。忘れてはいけないし、忘れない。



とくに大。


         


            

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ