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81.収納魔法を練習する

 アガリと収納の魔法の練習をする。入れた物が混じるのは、まだ上手に魔力を練れていないからだと教えてもらった。


 本当は魚と一緒に海水が入ったらダメなの。それに中のお菓子が塩水で濡れるのも、間違っていた。別々に入れたら、別々に出てこないと。理屈を書いた本を読み、挿絵をしっかり眺める。イメージが大事と何度も言われた。


 空っぽの収納へ、液体の紅茶をしまう。カップから流し込んだ。その上に焼き菓子を放り込む。一度閉じて、取り出したら……濡れた焼き菓子が出てきた。しっとりと紅茶を吸い込んで、これはこれで美味しそうだけど?


「失敗です」


「うん、もう一回やる」


 何度も挑戦すれば、上手になれるんだよ。剣術も魔法も、今までそうやって練習してきた。ドラゴンになるのも、最近は尻尾か羽か耳のどれか一つ忘れるくらいになった。覚えたばかりの頃は、足と尻尾を全部忘れて倒れたこともあったのに。ちゃんと上達するから、頑張ろう。


「では焼き菓子を先にしてみましょうか」


 一度袋の中に溜まってる紅茶を捨てる。勿体ないけど、焼き菓子に染みて量が半分になってた。空になったのを確認して、焼き菓子を入れる。緊張しながら紅茶のカップを傾けた。


 塞いで開ける。ドキドキしながら手を入れて、焼き菓子を取り出すと乾いていた!


「やった、できた!」


「おめでとうございます。では紅茶をこちらへ」


 用意されたバケツに、紅茶を戻す……あれ? 出てこない。逆さに振っても入ってなくて、紅茶は行方不明になった。


「……穴でしょうか」


 また穴が開いたみたい? 覗いてみようと首を入れかけたら、慌てて引き戻された。生きている者は絶対に入れない。死んじゃう、と叱られた。僕の袋に僕が入ってもダメなのかな?


「ふふっ、疲れちゃったのよね。休憩したらどうかしら」


 フィルがおいでと呼んだ。笑って頷くアガリを見てから、走っていく。お膝にどうぞと誘われたけど、もう大人だから隣に座るよ。用意されたクッションに座り、机の上のお菓子を頬張る。


 甘くて、さくさくして、とっても美味しい。お母さんとフィルはとても仲良しになって、二人でお菓子を作るようになった。これも木の実が入っていて、僕が好きだと言ったお菓子だ。


「また焼いてくれたの?」


「ええ、ルンの好きなお菓子ですもの。アスモデウス様はお仕事だけれど、後で美味しかったと伝えてあげてね」


「うん」


 お母さんは僕が褒めると嬉しいみたいで、そんなお母さんを見ると僕も幸せになる。人の嫌なことはしたらダメよと教わった。だったら僕が嬉しかったことをしたら、皆も喜んでくれると思う。


 焼き菓子をいっぱい収納に入れて、皆に配って歩いた。お城に住んでいる人はいっぱいで、足りるか心配だったけど大丈夫。ちゃんと三枚残った。僕とお母さんとお父さんで食べるつもりだったけど、アガリとフィルとディーにあげる。


 僕は昼間に食べたし、お父さんは甘いのが得意じゃないの。お母さんは「つまみ食いしたのよ」と言ってた。作るときに食べると、もっと美味しい気がする。僕もつまみ食いにまぜてもらおう!

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