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80/90

80.ごめんなさい、お父さん

 背中がチクっとして、むっとした僕は飛んできた方角を睨んだ。小さな棘だけど、海に入るのを邪魔する。傷があるのに海へ入ると、すごく痛いんだよ。


 僕が睨んだ岩の裏に隠れてると思う。めっ! と叱るつもりだった。人に矢を刺したらいけないと教えようとしたのに。


 ゆったりと舞い降りる火竜、これはお父さんだ。ぶわっと炎を吐いて、さっきの岩を炙った。真っ黒に染まった岩が、熱でぱちんと割れる。こんな炎は、僕には無理だ。凄いなぁ。


「ルン、勝手に遠くへ来てはいけない。海は特に危ないと教えたはずだろう」


「ごめんなさい、お父さん。お魚を獲って帰ったら、喜んでくれると思ったの」


「……お母さんへの土産か?」


「うん」


 叱られちゃったけど、お父さんは何やら考え込む。それから大きく頷いた。


「わかった。手伝ってやろう。背中の傷を見せなさい」


 素直に背中を見せると、鱗の間を確認された。さっきはチクッとしたけど、もう痛くない。お父さんが爪でツンツンと押しても痛くなかった。それを伝えると、上から魔法を掛けてもらう。これで海に入ってもしみないって。


「沖の方へ行くぞ」


「わかった!」


 沖は海の奥の方で、大きな魚がいっぱい泳いでいる。僕は先に飛んだお父さんの後を追って、魔力の風を吹かせた。少しすると、上にあがる風を見つける。利用して魔力を使わず、上手に高いところへ上がれた。


 お父さんが狙いを定めて海へ突っ込む。僕も後ろから飛び込んだ。広がる海の青い色は、空とは違う色をしていた。目の前を横切った魚をぱくりと口に入れる。それから収納の魔法の口へ、ぺっと吐き出した。


 同じ方法で何匹か捕まえて、ぷかっと海に浮かぶ。息が苦しくなっちゃう。海の水はしみなくて、背中は痛くなかった。お父さんはまだ潜っていて、待っていると浮いてくる。


「お父さん、すごいね」


「これはコツがある。こうやって吸い込んでから潜るんだ」


 やり方を教えてもらったら、もう少し長く潜れるようになった。お父さんと僕で捕まえた魚は、いっぱい。それをお土産にして、お城へ帰った。


 お魚は喜んでくれたけど、一人で海へ行ったのは叱られた。あと、黙っててと頼むのを忘れたから、お父さんが話しちゃったの。人間に矢で襲われて、背中に刺さった話だよ。ディー達にも叱られて、お母さんの胸に飛び込む。


 ちゃんと人の形になってから。そうしないとお母さんを踏んじゃう。仕方ないわねと笑いながら、お母さんは僕をぎゅっと抱きしめた。背中をとんとんして貰う。


 お魚はお庭で焼いて食べた。お父さんよりディーの方が上手に焼いて、アガリが塩を振ってくれる。皆で何匹も食べて、最後に収納をひっくり返した。


 海の中で使ったからかな。まだお魚が残っていて、どうしてか水も出てきた。海の水だからしょぱいの。前に入れたお菓子も残ってたみたいで、濡れちゃった。乾かして食べるつもりでいたら、フィルに捨てられる。


「まだ食べられると思う」


「無理よ。新しいお菓子をあげるから、これは諦めて」


 うーんと迷ったけど、ダメなんだよね。これは諦めて、明日新しいお菓子をもらうことになった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] パパは強し( *´艸`)ルン、叱られたけど頑張りました(`・ω・´)ゞ明日は楽しいお菓子作りです(*≧ω≦)小人ドラゴンは猫作者さんを甘噛みして口に咥えたまま釣りしました。
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