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【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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67/90

67.十歳になった日の贈り物

 バラムと鍛錬して、アガリにドラゴンになる方法を教わる。読み書きのお勉強はディーと頑張って、魔法をフィルと覚えた。


 毎日が忙しくて夢中になって、こなす。気づいたら、片手より多くの時間を過ごしていた。僕のお洋服も小さくなって、新しい服を作ってもらう。靴も全部履けなくなっちゃった。


「ルンも大きくなったな」


「もう十歳だよ」


 両手を広げて、ほら、こんなに大きくなったと示す。にっこり笑うと、いつも皆が喜んだ。だから笑顔でいる時間が多い。


「今日の予定は?」


 尋ねるディーに、フィルの魔法の授業を伝えた。時間が余れば、鍛錬でバラムに打ち合いをお願いする予定なの。がんばれと頭を撫でられて、大きく頷いた。


「ルンはこっちですか?」


 飛び込んだアガリに驚く。普段はノックして開けるのに、今はいきなり扉を開いた。そのまま駆け込み、僕を見つけて表情を崩す。まるで泣き出しそう。


「どうしたの? アガリ」


「急いでください。あなたのご両親が目覚めそうです」


「……お父さんと、お母さん?」


 驚き過ぎて動けない僕を、ディーがさっと担いだ。昔みたいな抱っこじゃなくて、お腹を肩に乗せて運ばれる。急いでる時は、この運び方が増えた。理由を聞いたら、僕が大きくなったからだって。


 ゆっくりの時は肩に座らせてくれたり、おんぶだったりする。きょとんとする僕を運んだディーは、着地用のお庭で下ろした。靴を履いてないのに。そんなことが気になる。


 足の裏についた土を気にする僕は、さっきのアガリの言葉を思い出していた。お父さんとお母さんが、起きる……じゃあ、話しかけたら返事をしてくれる? 今までみたいに僕が一人で話すんじゃなくて、いっぱい話してくれるかな。


 もう声も忘れちゃった。きゅっと口を結んだ僕の前に、真っ赤なドラゴンが現れる。後ろから走ってくるアガリが、ディーの背中に僕を押し上げた。荷物を持ってきたアガリも一緒に跨る。


「急ぎましょう」


「おう!」


 声を伝えるディーが浮き上がり、珍しく羽をばさばさと動かした。あっという間に高い位置まで上がり、一気に前に進む。アガリが後ろに座って支えてなかったら、転がって落ちちゃったかも。


 僕は前のめりになり、しっかり鱗を掴んだ。今日は急いでいたから椅子も手綱もない。フィルに教えてもらった魔法で、風を避けた。ちゃんと使えるのは、教えるフィルが上手だからだ。


 ぐんぐん景色が後ろへ流れて、見覚えのある山が近づく。何度も通った道なのに、別の風景みたい。どきどきし過ぎて、なんだか苦しくなってきた。


 お父さんとお母さん、僕のこと覚えているかな。知らない子って言われたらどうしよう。もしかしたら、僕が分からないかも。大きくなった僕が、ルンだってわからなかったら。


 不安がいっぱいになる。怖くて、帰りたくなった。どうしよう。振り返ると、アガリが真剣な顔をしている。言い出せなくて呑み込んだ。


 ディーが下降を始める。覚悟を決めて、僕はしがみついた。怖いけど、お父さんとお母さんに抱きついてみよう。大丈夫、僕にはディーやアガリが付いているから。頑張れるよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ついにパパママが!!(´;ω;`)ドキドキ……!!小人ドラゴンは猫作者さんの肉球を連打してドキドキするきゅ!!
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