表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】過保護な竜王による未来の魔王の育て方  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/90

20.聞こえないお話

 僕は大変なことに気づいちゃった。くんくんと腕を匂って、ディーの袖を引っ張る。


「ディー、僕……臭いかも」


「どれ。いい匂いだぞ」


 くんくんと匂ったディーは、不思議そう。でもね、僕は昨日お風呂に入ってないの。今夜も入らないと二日も入んないんだよ。きっと臭うよ。こそこそと訴えたら、何でもないことのようにディーは「魔法を使ったぞ」と答える。


「魔法で綺麗にしたの?」


「ああ」


 そっか、よかった。お母さんが使ったのと同じ魔法を、ディーも使えるみたい。安心して毛布を被る。今日は木の登り方を教えてもらった。シエルの教え方はわかりやすくて、力の弱い僕でも登れたよ。でもすぐ疲れちゃう。


 体力をつけろと笑うシエルは、今、お嫁さんのいる枝にいた。僕達はシエルのお家でお留守番だよ。ごろんと寝転がった僕は、赤く染まった空を見上げた。


「きれぇだね」


 ディーは何も言わず、僕の頭を撫でた。どうしたんだろう、いつもなら「そうだな」とか「ああ」とか返すのに。大きくて温かい手に撫でられると、眠くなっちゃう。もうすぐシエルが帰ってくるから、そうしたら寝る時間だ。


 明日もお日様と一緒に起きる。ちゃんと起きられるかな。あふっと欠伸が出た。お昼寝もしたのに、まだ眠いんだ。ごしごしと目を擦ったら、濡らした布で拭いてくれた。


「明日は家に帰るぞ」


「うん。ディーは飛ぶから……はふっ、いっぱい、寝て」


 お話の途中なのに、もう起きていられないかも。床に敷いた平たいお布団に寝る僕は、音に気づいた。お部屋に誰か入ってきた? 目を開けようとするのに、どうしても無理。


 諦めて動かずにいたら、滑った毛布をお腹に掛け直された。ディーのお膝に頭を載せた僕は、くるんと体を丸める。横向きの顔に影がかかった。


「もう寝たのか?」


「ああ。朝早くて疲れたんだろう」


「あれだけ動けば、眠くもなるか」


 シエルが座る音と振動を感じながら、目はどうしても開かない。うとうとする意識は、僕の体の上にある感じがした。体から出ちゃったかも? そう思うくらい軽かった。ふわふわしている。


「ルンは、誰の子だ? これほど大きな器を持つ子は初めてみたぞ」


「……魔王と先代竜王の子だ」


 頭の上の会話をぼんやりと聞く。言葉は耳から入ってくるのに、意味がよくわからない。ただ音が鳴ってるだけ。


「預かったのか」


「いや……両親が殺されたので保護した」


「はっ? あの魔王が……それはない」


 否定するシエルに、ディーが何か言って、また返事がある。でも僕の耳はもう眠ったみたい。全然聞き取れなかった。僕は大きな木を登ったり降りたり、途中でお嫁さんのお部屋を覗いたり。忙しく動き回った。


 目が覚めて、夢だったのかな? と首を傾ける。すごく楽しい夢だった。あのくらい自由に動き回れたらいいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ