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1. それは婚約破棄から始まった

そっとひそやかに、まったりゆっくり更新です。


 

「クリスティーナ・ウォーレス嬢!貴女との婚約は破棄したいと考えている。この件は既に王である父にも許可を頂いている。貴女のような女性は当家にふさわしくない。近々、貴方の家にもその報告が行くだろう」


 華やかな会場が水を打ったような静けさになる。

 王太子ルパートに寄り添うのは男爵令嬢エイミー、このゲームの主人公である。

 そう、ここは恋愛シュミレーションゲームの世界なのだ。


 この断罪場面は主人公であるエイミーが王太子ルパートのルートに入り、8割方攻略していると出てくるシーンだ。

 だが、ゲームとして画面で見るのと、実際にその場にいるのでは臨場感がまるで違う。舞台の前方席で観劇している感覚に近いとライリーは思う。

 名前も顔も良く知っている俳優たちが演じているのを間近で拝見している。そんな気持ちで眺めているライリーとは異なり、周りのご令嬢やご令息は驚きつつも好奇の目で見つめている。

 そう、これは公爵令嬢クリスティーナの凋落を大勢の貴族の令息令嬢の前で見せつける、趣味の悪いイベントなのだ。


 気の毒に覆うがここで「彼女は悪くない!」なんて主張をすれば、皆がこちらに注目をするし、もし自分がそう言ったとしても周りは聞き入れる事はないだろうとライリーは思う。なにせ、モブである。ゲームの進行に影響を与えるとは思えないし、今まで気付いてきたライリーの平凡なモブ人生も終わりを遂げる。

 ここは静かに成り行きを見守るのが吉である。


 公爵令嬢クリスティーナは悪くはない。

周囲が彼女を立場と自分の立場を重んじて行った事である。

 だが、貴族として考えれば、そういった周囲の行動を管理するのもまた彼女くらいの立場であれば必要なのだ。

 冷静で常に淑女たる彼女ではあるが、婚約者の心変わりに焦り、見過ごしてしまっていたのだろう。


 ライリーがぼんやりと何度となく画面で見てきた光景を眺めていると、会場に凛とした声が響く。


「お考えはわかりました。父を通してお話を確認しましてから、ご連絡を致しますね。王太子殿下、幼き日より続いたご縁に感謝いたします。お2人の幸せを心より願っておりますわ」


 そう言って美しく凛々しく礼をして、会場をあとにする姿にどこからかため息が零れ聞こえる。「ルパート殿下」と名前で呼ばないことからもその決意がうかがえる。

 クリスティーナ・ウォーレスはどこまでも淑女らしく美しい令嬢である。礼節を弁え、上品な振る舞いは民の指示も集めるだろうとライリーは思う。

 そんな彼女と婚約破棄するのは王太子の愚かさを露呈していると思うのだが、ここはゲームの世界なのだから仕方がないのだろう。


 ゲームの中で何度となく見た光景。

 当然、モブである自分には関係のない事とライリーは思っていた。

 そう、このときまでは。






読んで頂き、ありがとうございました。


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