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世界の終わりは三度も来ない  作者: 矢坂楓
5話 来た道往く道(2022/8/1~)

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6話-(6)

2023/9/14 14:20 F市警察署内 射撃訓練室


「……という訳なんですよ課長。正直、何度か現れてる感じのインスタンスな悪魔憑きとか、木端が憑いただけなら私が乗り込むことも考えたんですが、喫茶店の窓を割って催涙弾とか閃光弾を投げ込んで千切っては投げの大立ち回りとか、自分が普通の人間ではありませんって言うようなものじゃないですか? ってわけで、時間は指定するんでレギオンの……そうだな、擲弾発射筒付きのライフル持ち1、制圧は5人もいれば多分何とかなると思います」

「その、早川某ちゃんの裏は取れてるのかい?」

「そりゃあまあ。身元に嘘はありませんでしたし、本人が真面目に仕事に取り組んでいたのは事実で、更に言えば『世紀末の儀式殺人』については起きた事実と地域までは調べたみたいですね。だから麗のことや、その他幾つかの情報を知っているとしたら後付けの知恵ということになります」

 武器とは、それを振り上げること、それで傷を与えることの是非を問わない。

 だが持ち手は、その武器の威力を理解していなければならない。

 だとすれば、意思を持つ武器は是非を問わぬまま、威力や傷の存在に酔ってしまいやしないか……要するに、私は武器でありつつ意思を持っているけど、血を吸った円月刀のように踊り狂うことはなく、飽くまで(判断)執行官の管轄署(持ち手)に委ねているというワケだ。

「で、面談を三日後にしたのはレギオンのスケジュールに捻じ込む為で」

「麗を向かわせるのは、あの子は軽率な暴力の使い方を知らないからですよ。だから私の指示通り、疑わずに動いてくれる」

「……危険手当は弾んであげなよ」

 課長の話を継ぐように結論を述べると、苦虫をかみつぶしたような顔の課長がいた。

 不倫調査の翌日、視線の主で一番下手だった早川某を尾行時の誘導から引っ掛けて縛り上げ、事務所に誰もいない時間帯を狙って尋問した訳だが、まあ割とマジで小動物みたいな人物だった。だったのだが、どこか棘というのか、話の中で何事か引き出そうとしているような油断ならなさを感じた。扱いを誤れば暴発する、不出来な火薬のような女だと思った。

 当然、他にも尾行している連中は居たし、堂々と振る舞ってる私の身分など少し調べればわかる筈だ。執行官であることはさておき、探偵が警察とつるんでいるのは別に珍しい話ではない。

 もっと深い情報、欲しい隙を……と考えて麗を狙う可能性は加味していた。悠さんは暫くリモートで仕事をしてもらうよう頼んだ。

 事務所には最低限以上のセキュリティは用意しているのだから、麗を狙うにしても私を狙うにしても――事務所の中に招き入れられた早川をどうにかして使おうと考えるのが筋だろう。

 そういう意味でも、残念ながら彼女は生餌だ。少なくとも、河浜の一件で押っ取り刀で調べ始めたようなアンテナの低いカストリ雑誌の新卒などがどうなろうと知ったことじゃない。それで、同じく嗅ぎ回ってた連中を大なり小なり縛り上げられるなら万々歳だ。少なくとも暴行未遂、早川の証言から暴行傷害にランクアップも十分あり得る。凶器準備集合罪と器物破損に……まあ沢山あるので、余罪含めてせいぜい「微罪の積み重ねで豚箱送り」という屈辱を味わってもらおうではないか。


 9/17 13:15


 不埒な男の顔面にめり込んだ固形物の行方を見守ることなく、麗は目を隠し耳を塞ぎ、口を大きく開けて構えた。

 カツンと床を叩いたあとに響いた衝撃と閃光は備えてなかった人間を無力化し、揃って蹲らせた。

 だが例外もいる。どぎついサングラスをかけていた数名はどうやら備えていたらしく、多少怯みつつ動き出し、麗と早川を拉致すべく駆け出していた。だがその動きも、余りに遅い。

「突入ー!」

「とっとと座ってろ、この半端者の悪魔憑き共が!」

「反応38! うち1名保護対象!」

 次の瞬間、割れた窓からゴム弾を打ち込まれた男はもんどりうって倒れ、次いで腹部に祓魔弾頭を打ち込まれ膝から崩れ落ちる。状況を呑み込めないままに抵抗しようとした者達もまた、『ハセガワ七式改』の電撃を叩き込まれ意識を断ち切られていく。

 閃光弾が炸裂してから5分とかからず、喫茶店の騒乱は熟練のレギオンによって鎮圧されるに至った。

「ご協力感謝します。窓の修理に関しては、予め手配しておりますので業者がすぐにでも。休業補償は、申請をお願いします」

「手が早くて助かるよ。もっと言うなら、そもそも起きてほしくないんだけどね」

「……不徳の致すところです」

 F市においてレギオンを統率している男、水野みずのひさし警部は店主に恭しく頭を下げる。遅れて臨場した護送車に犯人達と早川を連行すると、そのまま去っていく。

 残されたのは麗と店主。

「やってる、マスター? 私は窓とか気にしないからエスプレッソのダブルで。こいつには一番高い茶と菓子出してやってよ」

「アンタが来てから、本当に退屈しねえよ、織絵の探偵さん」

 そして何も気にしない風を装って現れた真琴だった。

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