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世界の終わりは三度も来ない  作者: 矢坂楓
5話 来た道往く道(2022/8/1~)

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5-(6)

8/4 16:20 織絵宅(-オンラインスクール終了後、リモート会談)


 何度目かのオンラインスクールの講義のなかで、ログアウトが意図的に遅い生徒が散見されることは薄々気付いていた。システム上の不具合か回線のアレコレなのかは判別しかねるので、念の為発注者に打診してみると、悩みとかあるのだろう、と漠然とした回答が返ってきた。悩み相談は契約外なんだが、追加で出ないモンだろうか……ともあれ、何人かの生徒をピックアップして話を聞いておくことにしたが、その大半は『探偵が専門講師になった』という物珍しさにひかれてのことだった。あとは家族の悩み。家庭がうまく行っていないのか、はたまた両親何れかの不貞か。どっちみち、私が手を出す場ではないか。そして、人生相談である。

「……成程。つまり君は悪魔憑きという在り方そのものについて、まあ割と引け目を感じていると。そういうわけだ」

「はい。僕は早い時期に憑かれたので法的にも登録されてますし、社会生活はクリアしている、と診断を受けているので誰にも後ろめたいところは有りません。無い筈なんですが、やはり未だに差別が強いと聞くと、どうしても不安で」

「そりゃあそうだ。いきなりポッと出で社会常識をぶち壊した存在の同類を、たかだか20年ちょっとで許してやろうなんて寛大になる人間の方が少ないよ」

 不安感を露骨に顔に出す生徒に、しかし私は身も蓋もない事実を投げつけた。彼は比較的優秀な方で、知恵も知識も足りている。私を肩書による色眼鏡ではなく、講師としての能力で見ている……ような気がする。ひとまず、と前置きをして話を続けた。

「今出来ることは、悪意のある悪魔憑きを少しずつでも確実に排除すること、自分が偏見を上回るくらいに才能やら実力やらがあるぞと証明することしか無いかな。世間様には隠せても、法に触れたり所属組織に対しては開示義務があるから『隠して生きていく』のは無理だ。そうだな……クリエイター周りの仕事とかなら、特に差別意識は薄いから思想を表に出さなければそれなり食っていけるだろうね。君の希望針路は?」

「対策課で、執行官として働きたいです」

「適性次第だけど、応援しておこう。執行官にならなくたって、対策課では悪魔憑きってだけで期待の星だよ」

 騙すつもりも、持ち上げるつもりもなかった。多分この少年ならうまくやっていけるだろう。笑みを深め、感謝の言葉とともにログアウトしたその姿に一応の安堵を覚える。

 彼に憑いている悪魔のことは知らないが、執行官を目指すということは『それなり』以上なのだろうか? 是非、道を誤らないことを祈るばかりだ。

 さて、こちらの仕事が終わったので次は対策課に出す顛末書その他諸々。非貫通麻酔弾マイナスまで使用した以上はよりしっかりとした反省文が必要になるし、美人局の手口云々についても(これから深堀りする必要はあれど)報告しておく必要がある。個人情報は伏せるとして、手口の巧妙化は探偵としても危惧するところだ。

 ……なにより懸念すべきは、事務所で使用されたピルケースの中身と大手を振って活動する違法組織が悪魔憑きを抱えていたこと。さきの少年の話ではないが、あたら偏見ばかりが増大する流れは避けたいものだ。

「そういえば、今のところの依頼人との調整とか大丈夫なの? 出張前に依頼は片付けてたのかしら?」

「それは問題ありませんよ、マリーさん。振り込み確認まで含めて全部終わらせてましたんで」

「となれば、あとはハルカへの事務所都合での休業手当とか、話を聞いた生徒の家庭問題に首突っ込むの?」

「んーまあ、悠さんへの手当ては算定済みですね。家庭問題については話が全く掴めないので。スクールに通わせてる時点で虐待の可能性は薄いですし、悪魔憑きなら親に殺される心配より逆が気になりますね。興信所は待ちの仕事なんで、こっちからどちら側とも知らない相手に『配偶者が浮気してますよ』って持ちかけるのは違うでしょう」

 書類のテンプレートを前にため息をついた私に、すかさずマリーさんが歩み寄る。食事は給餌機から出ているのでいいとして、悠さんの休業手当や麗の給与計算は大体計算通りに推移するだろう。反省文の提出と一緒に対策課から資料を預かり目ぼしいところを内見、内装関係は仮押さえしてあるので移行作業を行って再開……うむ、お盆を挟んでギリギリ今月中に全部終われば御の字だ。学生の家庭にまで首を突っ込んでいられない。

「今は反省文がチャラんなんないかなあって思ってますよ」

「無理ね。さっさと提出して弾薬受け取らないと縛りプレイが続くわよ」

「それはそれでキツい……」

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