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世界の終わりは三度も来ない  作者: 矢坂楓
4話 波の向こうで

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31/57

4ー(3)

15:10 M県I市内海岸沿い 海の家


 真琴……おじさんは、ジェルトルデさん達と遭ってほどなくして自分の荷物をまとめ、チェックインを済ませるとだけいって逃げるように立ち去った。実際、逃げたのだろう。海の家特有の、やけに焼き方だけ凝った市販ライクな焼きそばを口にしながら、アタシは正面に座る二人を見た。

「おじさん、血相変えて行っちゃったけど……迎えに来てくれるかなぁ」

「必要な時に連絡してあげればいいわ。あの男がちょっとやそっとショック受けた程度で身内を見捨てる性質タマじゃないもの」

「きっと、お父様とお母様の馴れ初めに感動して海どころじゃなくなったんですわ! 美しい友情を感じますの!」

 ジェルトルデさんとその娘である佳乃ちゃんの姿は、親子と言われてもいまいち実感が湧かないほどに若々しさを感じられた。そして母娘の年齢を考えると、おじさんが受け止めきれない事実がそこに横たわっていることも直感的に理解できた。で、追撃とばかりに佳乃ちゃんがおじさんに『なにか』を送信したのも見たので、多分それがクリティカルだったんだろうなとは分かる。……以上、佳乃ちゃん視点ではすべて『善意』だというのだから始末に負えない。聖徒っていう人種は皆がみんなこんな調子なのだろうか? と憂鬱な気分になったが、よく考えたらジェルトルデさんの態度はおじさんと再会してからずっと悪意しか感じないわ。っべーわこの血筋。

「ところで、あの調子だと倒れてからすぐ回復したのかしら? だとしたら相変わらずタフね。16年前なんて1か月半は意識がまばらだったのに、リハビリ終えたらすぐ残党狩りに乗り出してたらしいし……」

「そうですね、5日くらいずっとうなされてたので点滴と腕の拘束具が必須で、唐突に目覚めたと思ったら物凄い顔で周りを見て『生きてる』って一言呟いてから8時間、それは穏やかな顔で寝直しました。起きたらすぐに退院手続きを済ませて仕事に復帰してます」

「それは異常者っていうのよ。絶対意識途切れてる間に何かあった証拠じゃない……」

「真琴さんの話はお母様から聞いておりますが、やはり凄い方なのですね!」

 すごい、の一言で片づけていいのだろうか? 昏睡状態だった間の脳波も安定していなかったし、起きてからの行動もかなり変わったように思える。悪夢を見たというよりは、体験してきたかのような……わかっているのは、客観的数字ぐらいだ。

「少なくとも、悪魔憑きの対処件数は先月中は相当増えてますけどね。おじさんが倒れてたのを知ってか、他の連中が何か外に吹き込んだのかは知りませんけど問題起こす奴は増えてます」

「私も日本支部で色々と勉強させて貰っておりますけど、西日本や九州あたりで特に活発になっていると聞いていますわ! そういえば日本海側のナントカって地域では、その……悪魔憑きでも聖徒やその近親者でもない人が小規模の信望者団体を潰したとかの話を聞きましたが……」

 佳乃ちゃんが聖徒の業務に手を出しているのは驚くことでもないが、増加傾向なのは一部地域らしい。西側での増加が顕著なのが、F市での増加の端緒とは考えにくい、のだけど。佳乃ちゃんが話しかけて言いよどんだが、北陸地方は確かに西日本か。教科書で読んだ話だけど、中学生は知らない筈だ。

「それは確か10年以上前じゃなかった? おじさんより少し年嵩な人が『若気の至り』の一言で薬物流通と洗脳で増やしてた即席従魔インスタンス死魔ゾンビを数か月かけて探り当てたかと思ったら、教団本部に一人でカチコミ入れて壊滅させたっていう。その後消息不明だけど」

「アレは……まあ……なんていうか、真琴やあなたとはまた別モノな上に『日本特有』のタイプなのよ。多神教特有って言いたいけど、他の国ですら聞いたことが無い事例だから……っていうか本題はそこじゃないわ、話がズレてるわよ二人とも。真琴がこの短期間、しかも病み上がりでいきなり増えた事案に対処してるってことは、何か変化があったってことじゃないの? 昔だって頻発してた時期は消耗が激しかったのに、ピークを過ぎた今になって平気な顔してるのがおかしいのよ」

 ジェルトルデさんが『北陸の話』について慌てて切り上げ、探るようにこちらを覗きこんでくる。確かに、復帰直後のおじさんには明確な変化があった。対策課ともそれをきっかけに対応を変えた点があるとも言っていた。だが、その正体は聞かされていない。

「アタシには……思い当たりが無いわけじゃないですが本人から聞いてませんし、プライバシーとか守秘義務があるんで。それにコルラードさんを死なせたことは結構根に持ってますから……」

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