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第11話「逃避行 前」

「ヤバイって。これはヤバいヤツだって……」

 ケネスは家にこもっていた。



 

 木造の大きな家屋で、そのうちの一室を借りている。いわゆるアパートだ。月に帝国金貨3枚となっている。大きな部屋ではない。ベッドがあり、あとは人が1人座れるぐらいのスペースがあるだけだ。




 窓。




 二階からは、石畳のストリートが見える。大量の帝国魔術師と、帝国騎士が走り回っているのだ。




 帝国魔術師は純白のローブを羽織っている。帝国騎士は黒く染色されたクロスアーマーを着ている。どちらも規定のものだ。それが帝国に仕える者だと、すぐにわかる。




 しかも、さっきから風系基礎魔法の、《風の声(ウィンド・ボイス)》が発動されている。




『ケネス・カートルド。もしも声が聞こえているならば、姿を見せなさい』

 と名指しである。




 罪人をいぶりだす咎の声に違いない。

 呼ばれるたびに、ケネスはビクッとカラダを震わせていた。




「どうしよう。人を殺しちゃったんだ。逮捕されるに決まってるよ。いや。殺した相手は帝国12騎士だったんだ。もしかしたら処刑されるかも」




 田舎の両親にも迷惑がかかるかもしれない。

 泣きだしたい気分だ。




「いや、申し訳ない」




 ヴィルザはホントウに申し訳なさそうにしていた。風体が少女なので、怒る気にもなれない。 



「別に良いよ。魔法を発動したのはヴィルザだけど、魔法陣を展開したのはオレなんだし」




 しかし、トンデモナイことをしてしまった。

 殺人である。

 その罪悪感が、心臓をローストビーフのように縛りつけてくる。




「私も殺すつもりではなかったのだ。まぁ、人間の命の1粒や2粒。別に何とも思わんが、ケネスに迷惑をかけるつもりはなかった」




 魔神の心も罪悪感を感じるのか、「貴様」から「ケネス」に呼び名が変わっている。




「これから、どうしよう……やっぱり処刑されるのかな」




「処刑? ケネスを処刑などさせん。ケネスが死んだら、私はまた1人になるではないか。全人類を滅ぼしてでも守ってやるから、その点は安心しろ」




「……そう」

 物騒なことを言っているが、その言葉は頼もしい。




「とりあえず、帝都にいるのはマズかろう。旅の準備をせよ。《透明化透明化(トランスパレント)》の魔法をかけてやる」




「《透明化(トランスパレント)》なんて魔法があるのか?」




 ケネスは魔法の基礎を学んだぐらいだ。すべての魔法を知っているわけではない。




「風系最上位魔法だ」

「じゃあ、頼むよ」




 まとめる荷物なんて、あまりない。日頃、薬草摘みに使っているナイフ。あと、ありったけの帝国通貨。着替えのブリオー。それぐらいだ。ケネスはクロスアーマーすら鎧を持っていない。鎧を買うようなお金はない。




「よし。これぐらいかな」




「身軽なのは良いことだな。よし。魔法陣を展開せよ」




 言われた通りに、魔法陣を編み出した。たちまちケネスのカラダが透明になる。




「ヴィルザみたいに、存在が消えたりしてないよな?」




「そんなわけあるか。この存在を消す呪いはそんな簡単に発動できるものではない。数分もすれば効果は切れる」




「じゃあ、効果が切れる前に帝都から出なくちゃな」

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